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いつかきっと  作者: 原田楓香
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9. もいっかい


 少し歩くと、周りに芝生の広がる、小さな丘に着いた。

ここは、国が史跡に指定している前方後円墳で、4世紀ごろに

造られたと言われているが、被葬者なども特定されていないし、

御陵として把握されないまま土地の開発が進んだりして、形状が

崩れたために、陵墓にも陵墓参考地にも、ならなかったらしいと

聞いたことがある。でも、そのおかげで、今、こうして、一般の人が、

一部の場所を除いて、自由に立ち入りできる珍しい古墳になっている。

丘に登ったり、丘の周りの芝生の上で遊んだり、この辺りの住民に

とって、絶好のお散歩スポットになっている。


 想太は、このゆるやかな緑の丘が好きだ。

とても小さな丘だけれど、ただ、平らな地面を歩くのとはちがう、

ワクワクする感じがあるせいだろうか。


「圭くん、走ってのぼろう」

「お。行く?」

2人は、手をつないだまま、駆け出そうとする。

「ちょっと待って、佳也ちゃんも?」

佳也子はあわててきく。

「もちろん!」

また二人の声がそろう。

(え~。走るの~。歩いてのんびり行こうよ~)

佳也子は、口の中でつぶやいたが、

もちろん二人とも聞いていない。


 笑いながら、ハイテンションで走る2人に、引きずられるように

して、佳也子も走る。

小さな丘なので、あっという間にてっぺんに到達する。


周りを見渡しながら、圭が言う。

「あちこち、けっこう桜の木があるね。惜しいな、もうちょっと

早かったら」

「ほんとに。桜の時期、めっちゃきれいなんですよ。でも、来月

くらいには、花しょうぶが咲きますよ」


 今年の春、想太と佳也子は、毎日のようにここへきた。

そして、風が吹き抜けるたびに、桜がその淡い色の花びらを

降らせる姿をあきることなく眺めた。

舞い散る花びらを、地面に落ちるまでに何個つかめるか、

という競争をしたり、地面に雪のように降り積もった花びらを

すくって遊んだりした。

花びらは、風に舞って、一生懸命つかもうとする手のひら

からは、見事にすりぬけていく。

それでも、ふと気づくと、まるで、こちらをからかうように、

頭の上にちょこんとのっかっていたりする。

ときには、音もなく降る雨のように、花びらがふりしきる

さまは、胸にしみるように、きれいだった。

圭にもその景色を見せてあげたかったな、と佳也子は思う。


 すぐ隣で、丘の周りを見渡している圭は、風に吹かれて

気持ちよさそうだ。

かぶっていた黒のキャップをぬいで、右手で髪をかきあげる。

口元に、ふわっとした笑顔が浮かぶ。

「いい風だね」

「うん」 想太が、自分の前髪をかきあげながら、答える。

「緑が気持ちいいね」

「うん。桜が咲いてるときね、ここで、かあちゃんと、花びら

すくったり、つかんだりして遊んだよ」

想太が言うと、

「いいなあ。桜、見たかったなあ」

「だいじょうぶ。らいねん、また見られるよ。すごくきれいやよ」

「そっか。来年、桜のとき、絶対来よう」

「ぜったい」

想太と圭が、指切りしている。


 下りは、のんびり、歩いて降りることにした。

3人並んで手をつないで歩く。想太が真ん中だ。

平らなところまで来ると、圭が言う。

「せ~の、で想ちゃん、持ち上げるよ」

「え?はい!」

「ほら、せ~の」

圭と佳也子に引き上げられて、想太は一瞬、宙に浮かぶ。

嬉しくて、想太が笑い声をあげる。

着地。

「もいっかい」想太が言う。

「せ~の」


「もいっかい」

「せ~のっ」


このままでは、永遠に続いてしまうのかも、佳也子が

ちょっぴり心配になったとき、

「あ!忘れた」

突然、想太が叫ぶ。

「ボール。ボール忘れた」

「あ、ほんまや。・・・まあ、いいやん。ボールなしで遊ぼう」

「何する?」と圭。

「だるまさんがころんだ、は?」

佳也子が提案する。


①オニは、他のメンバーに背中を向けて、

『だるまさんがころんだ』と大きい声で言う。

その間は、他のメンバーは自由に動ける。

②オニが言い終わって振り向いた時、動いている人が

いたら、その人はアウト。オニにつかまったことになり、

オニと手をつなぐ。

③オニが『だるまさんがころんだ』と言いながら、

 背中をむけている間に、他の人が、

 つかまった人のところまできて、オニとつないだ手に

 タッチしたら、つかまった人は自由になる。

④全員がオニにつかまったら、ゲーム終了。

 逆に、オニが誰もつかまえられないまま、タッチ

 されたらオニの負け。



「よし、やろうやろう」 圭が言う。

「オニ、だれがする?」 佳也子が言うと、

「じゃんけん!勝った人がオニ!」想太が答える。

「りょうかい!最初はぐー、じゃんけんホイ!」




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