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いつかきっと  作者: 原田楓香
35/53

35.  その言葉

 

 『花村ロス』という言葉があちこちで、聞かれる。

最終回の放送が終わった直後から、SNSでも

『もう明日からの楽しみがなくなってしまった~』、

『生きる楽しみが消えた・・・』

などなど、ドラマの終わりを惜しむ声が上がっている。

可愛くて、カッコよくて、お茶目で、

好き放題なことを言ってるのに憎めない、

そして、何より、幸せそうにピアノに向かう姿が、

見ている人を、幸せな気持ちにしたことは、確かだ。

ピアノ教室の入会者が、大人子ども問わず、一気に

増えたらしい。


実は、佳也子も、想太にピアノを習わせようと思って、

近所の教室に申し込みに行ったのだ。

そこで、教室の先生が言うには、

『ドラマの放送開始から、じわじわ増えていたけど、回を

追うごとに、どんどん増えて、今はどの教室も満杯状態

になっててね。指導者の確保に困ってる』のだとか。


テレビでは、今朝も、圭のインタビューが流れている。

――ついに、終わってしまいましたね。大評判でしたが。

どうですか。ご感想を。

――そうですね。このドラマを、たくさんの方々に好きだって

  言ってもらえて、とても嬉しいです。僕自身も、本当に

  いい勉強をさせてもらいました。

――ピアノ、相当練習されたんですよね。

――そうですね。天才役って言われて、はじめ、すごく緊張

  しましたよ。でも、そのうち、ピアノに向かうのが、楽しくて、

  嬉しくて、幸せな気分になって。

  全然、天才的な技はできないけど、好きって気持ちだけは

  伝わってたらいいな、と思います。

――伝わってるみたいですよ。

全国的に、ピアノ教室の入会希望者がすごく増えている

そうです。

――そうなんですか。ピアノの音ってすごく素敵ですもんね。

  僕たちのドラマが、何かを始めるきっかけになったのなら、

  とても嬉しいです。

――シリーズ第2作を早く、なんて声もありますが。

――それは、僕にもわかりません。でも、このドラマが、それだけ、

  たくさんの方々の心に響いたということですよね。

嬉しいです。

――花村ロス、なんて言葉も言われていますが。

  このドラマのヒットの理由って何だと思われますか。

――そうですね。このドラマの制作に関わったすべての人たち、

スタッフや出演者みんなの力によるものだと思います。

  出演者というのは、もちろん、演奏会シーンで、観客役

として、撮影に参加してくださった一般のお客さんたちも

含めてです。毎回の感動的なシーンは、観客の皆さんが、

心を込めて、盛り上げてくださったおかげで生まれたと

思っています。あらためて、お礼を言いたいです。

本当にありがとうございました。

――そうですか。視聴者にも、その思いが伝わっていたように

思います。ほんとに素敵なドラマでしたね。ところで、

妹尾さん、新しいドラマへのご出演の噂もありますが。

――そうですね。まだ、僕もわからないのですが、また何か、

機会をいただけるのでしたら、がんばりたいと思います。

――今日は、ありがとうございました。

――こちらこそ、ありがとうございました。


 バラエティー番組の顔とは違って、きまじめな顔で答える圭。

でも、終始とろけるような優しい笑顔で、インタビューをしている

アナウンサーまで、とろとろの笑顔になっている。


朝から、圭のこんな笑顔を見てしまうと、すごく嬉しいような、

困ったような気がしてしまう。

シャキッと仕事モードに切り替えるのが、難しくなる。


そこで、短いメールを送る。

『圭くん。反則。朝から、インタビュー、笑顔が素敵すぎて、困る』


返信が、すぐ返ってきた。

『へへ。この笑顔を励みにがんばりたまえ』


『とろけて、しゃきっとできへんよ~』


次の瞬間、

でっかい赤い唇のスタンプが届く。


「げっ」

佳也子は思わず声が出る。


続けて、圭からの返信が届く。

『朝から、特大のちゅ~送る。がんばれ~』


『あかんやん。もう~力ぬける~』


『へへへ』

圭からの返信画面の中で、

可愛い、白いお団子みたいなキャラクターが、

いっぱい、投げキスを飛ばしてくる。


佳也子も投げ返す。


『バカップルみたいじゃない?俺ら』

前に、そう言った圭の声を思い出す。


俺ら。

その言葉が、佳也子の力になる。

がんばろうね、お互い。

それぞれの場所で。

離れていても、『俺ら』だよね。




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