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いつかきっと  作者: 原田楓香
24/53

24. 会えたら


 テレビの画面では、圭が、インタビューに答えている。


『天才ピアニスト役ということで、役作り上、どんなところが、

大変でしたか?』

インタビューをしているアナウンサーの女性が圭にきく。


『そうですね。ピアノの練習は、かなりやったんですけど。

なんといっても、天才役でしょ?正直、ちょっと、不安でした。 

それも、どちらかというと、“技術面での天才”ではなくて、

“その音色で、人の心を開く天才”という設定なんですよ。

それって、どんな音色だろう?って。いろいろ考えました』

圭が、いつもの柔らかな笑顔で答えている。

今は、少し低めの声で話している。


普通にしゃべっているときは、圭の声は、少し高めで、甘い。

でも、インタビューに答えるときや、少し真面目な場面で、

人と会話するときは、低めの落ち着いた声で話す。

演じる役やシーンによっても、彼の声はいろいろに変わる。


今は、穏やかに笑いながら、真面目に答えている感じがする。

圭が、唇の両端を少し上げて優しく、ふっとほほ笑んだので、

インタビュアーの女性が、すかさず、

『それです~!そのほほ笑み!それもこのドラマの見どころだ

って、ハマる人続出って言われてますよね』

『え、そうなんですか。いや、ちょっと、照れちゃいます。いやあ、

ありがとうございます。でも、見どころと言えば、

演奏会のシーンで使わせていただいているコンサートホールも、

けっこう注目してほしいところなんです。

小さくても、音響効果の素晴らしい会場が多いんです。

会場の音響のすばらしさプラス、ピアノの音色の良さ。

どの会場でも、調律師の方が、とても素晴らしいお仕事を

してくださって、そのおかげで、演奏シーンが、何倍にも

素敵になってると思います』

『演奏会のシーン、ピアノの音色が素晴らしいって、それに、

妹尾さんのピアノに向かう表情が、ほんとに美しいって、

とっても評判ですよね」

インタビュアーが熱心に言う。


(なんか、インタビュアー個人の感想もかなり入ってるような

気がするのは、気のせいかなあ?)

佳也子は思う。


『各地のグルメの食べ歩きシーンも話題ですよね。

いろんな自治体がぜひうちに来てほしい、ってロケ地候補に

名乗りを上げてるって聞きましたけど』

『そうですね。ありがたいことですよね。相方の伊原さんとも、

今度は、何が食べられるかな?って、いつも楽しみにしてます』

マネージャー役の芸人さんの名前を、嬉しそうに口にする。

プライベートでも、仲がいいのだという。


プライベート、か。

佳也子が知っている、圭のプライベートの姿は、ほんの少しだ。

彼の、東京での姿は、テレビの中の姿だけだ。

日常は、知らない。

圭が、よく行くお店や、美味しいと思っているもの、

素敵だと思った景色、そういうものを、彼は、こまめに

メールで送ってくれる。


けれど、普段、圭が、どこに行って、誰と会って、どんな顔で、

誰と話して、何をしているのか。

佳也子は、何も知らない。

見ることができるのは、画面の中の圭だけだ。

インタビューならまだしも、ドラマの中の圭は、やはり、

ドラマの中の人物だ。


佳也子は、時々、本物の、圭本人に、会いたいと思う。

いや、正直に言おう。

時々、じゃなくて、もっといっぱい、会いたいと思う。

毎日が無理でも、1週間に1回でもいいから、

目の前で笑っている、圭に会えたらいいのに、と思う。


ここにいるよ。

ここにいるよ。

だから。

だから、

・・・・・・会いに来て。


佳也子は、心でつぶやく。



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