21. 温かく強く
『ドラマ、めっちゃ、よかったです!!
英子さんも想太も、みんなで、
終わった瞬間、テレビの前で拍手喝采!!でした』
佳也子の送ったメールには、!マークが踊っている。
!マークをもっと山盛りつけてもいいくらいの気分
だから、これでも我慢したほうだ。
仕事中だといけないから、とりあえず、メッセージを
送っておく。
演奏会のシーンを巻戻して、3回目を見終わってから、
佳也子たちは、自分たちの部屋に戻るために、
立ち上がった。
「よかったねえ~。またらいしゅうも、いっしょに見ようね」
想太が、ニコニコしながら、英子に言う。
「そうだね。また一緒に見ようね。じゃあ、おやすみなさい」
英子の笑顔に見送られ、佳也子と想太が居間を出ようと
したときに、電話が鳴った。
急いで、英子が出ると、思った通り、圭だ。
「圭くん! 見たよ、見たよ。すっごくよかったよ。
ドラマ自体も楽しいし、面白いし。それに何より、
ピアノのシーン、すっごく素敵で感動した!」
英子が急いで、電話をスピーカーモードに切り替える。
想太が力いっぱい電話に向かって言う。
「圭くん!よかったよ。めっちゃピアノうまかった!
かあちゃんもおばちゃんも、ないてた!まきもどして、
なんかいも見た!」
圭の嬉しそうな声が答える。
「そうか。ありがとう!そんなに気に入ってくれて、
嬉しいよ」
佳也子も言う。
「ピアノのシーン、ほんまによかったですよ!
それ以外にも、いっぱい、いろんな表情があって、1時間が
あっという間でした!」
「うん。演じてても楽しかったんで、楽しんでみてもらえて、
ほんとよかった~」
「あの会場で歌ってたお客さんたち、みんなほんとに、
自然に泣いてる感じがしたんだけど」英子が言う。
「わかります?あれね、演技とかじゃなくて。
ピアノの演奏にあわせて歌う、とだけは、台本にも書いて
あってね。会場のお客さんたちにもそうお願いしてたんだ
けど、歌いながら、みんな自然に泣いちゃったって言ってた。
大合唱になったでしょ?あれも、あそこまで、みなさんが
歌ってくださるとは思ってなかったから、びっくりしたんだ。
だから、俺もつられて泣きそうになった。ほんとに、
ピアノ弾きながら、めちゃくちゃ、感動した」
「やっぱり。・・・あれ、演技じゃないよね、って話してたのよ」
「ほんまに、あのシーン、つられて泣いちゃいましたよ」
「ぼくもぼくも」想太がアピールする。
「そうかぁ。・・・よかった。頑張ったかいがあったよ。
まだ、撮影残ってるから、がんばってくるね。ほんとに、
・・・見てくれて、ありがとう」
圭の声が、かすかに揺らぐ。
「こちらこそ、ありがとう!」
「ほんまに素敵なドラマをありがとう!」
「圭くん、ありがとう。さつえいおわったら、またあそびに
きてね」
「うん。きっといくよ。待っててね。・・・じゃあね」
名残惜しそうな声で、圭の電話が切れた。
圭以上に、名残惜しさを感じたのは、佳也子たちだった。
いくら伝えようとしても、伝えきれない。
感動を言葉にするのは難しい。
言葉は、ときに無力だ。そう感じる。
でも、ほんの少しでも、誰かの力になることもある。
電話のすぐあと、圭から、英子と佳也子のスマホに
メッセージが届く。
『ありがとう。めちゃくちゃ元気出た。
疲れも吹っ飛んだ~』
そして、
スマホの画面で、アリが、10匹ダンスを踊っている。
佳也子もダンスしているアリを返す。
(なかなか会われへんけど、
私たちは、元気だよ。
いつもここにおって、ずっと、応援してるよ)
応援していると思うことで、
佳也子の気持ちも温かく強くなる。
不思議だけれど、
応援は、
する方の心も
される方の心も、
温かく強くする力があるのかもしれない。
佳也子は、そう思う。




