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いつかきっと  作者: 原田楓香
13/53

13.  同じ気持ちで


 『ドラマが決まったよ』


そんなメールが来たのは、夜の10時を過ぎていた。

英子にも同じメールが届いているはずだが、おそらく、

夜が早い英子はまだ見ていないだろう。

嬉しいお知らせだから、できるだけ早く、おめでとうが

言いたい。佳也子は、急いで返信する。


『やった!おめでとうございます!めっちゃ楽しみです!』

『まだ、これからいろいろ打ち合わせや準備をしてからなので、

撮影もまだもうちょっと先になると思うけど』

『どんな役?』

『天才ピアニスト』

『え?また天才?』

『天才まだ2回目』

『え、3回目かと』

『あれは、佳也ちゃんが言ったんでしょ、天才タコ焼き職人って』

『あ~そうでした笑』

思い出して笑ってしまう。


あれ?返信が来ない、と思ったら、

電話が鳴った。

あわてて画面を見直すと、圭の名前が表示されている。

佳也子は、びっくりして急いで、電話に出る。


「いや、なんか、じれったいっていうか、直接、声聞いて

話したいなって思って。今、大丈夫?」

相変わらず、少し高めの柔らかな声だ。

「大丈夫ですよ。お久しぶりですね。声は」

「そうだね。佳也ちゃん、元気そうだ」

「元気ですよ~。で、天才ピアニストさん、どんなお話に

なるんですか」

「うん、コンサートで日本全国ツアーをして、訪れた街で、

いろんな事件に巻き込まれるんだけど。マネージャーを

助手に、その事件の謎を無事解決して一件落着。で、

最後は、コンサートでみごとな演奏をして、観客を魅了

する、みたいな感じ」

「すごい!じゃ、毎回、ピアノ演奏するシーンがあるって

ことですよね」

「それそれ。いや、ライブで弾いたことはあるけど、でも、

ピアニスト、しかも、天才って。やばいでしょ」

「じゃあ、猛特訓ですね」

「うん。必死で練習してる」

「毎回、ちがう曲?」

「いや、さすがにそれは無理って。何曲かレパートリー

作って、毎回、そのうちのどれかの演奏シーンを入れる、

ってことになりそう」

「わあ、楽しみ。リクエストとかって、できます?」

「俺で弾けるやつなら」

「ずいぶん謙虚な天才ですね」

「そうそう。才能をひけらかさないタイプの天才なんで」

圭が笑う。

「ねえ。圭くん。今、ちょっと思ってんけど」

佳也子は言う。

「天才ピアニストだからって、いつも超絶技巧の曲ばっかり

弾かなくてもいいんちゃうかな。 聴く人の心を、見事に

つかむ天才ってことで。だから、ドラマの最後の演奏シーン

の曲は、あらかじめいくつか選曲した中から、視聴者に

アンケートを取って、希望の多かったもので、ドラマの

その回の締めくくりに合う曲を演奏するとかはどう?」

圭が、うなずきながら聞いている気配がする。

「ドラマの他の部分では、超絶技巧の演奏シーンをちらっと

入れて、(ああ、この人は、天才ピアニストなんだな)って

イメージを印象づけておいて、事件解決後のホッとした

ところでは、視聴者が聞きたい曲とか、難曲じゃないけど

名曲、って思うような曲を演奏する、とか」

圭の声が、楽しそうに弾む。

「それ、面白いね。毎回、エンディングはリクエスト曲、って

かなりハードだけど、でも、面白い。ありがとう。ちょっと

相談してみるよ」

「ごめんなさい。めっちゃ思いつきで、無茶言うてるよね?」

「いや。毎回俺が難曲を弾きこなして終わり、っていうより、

かえって、楽しいかもしれない。見てくれてる人たちが、

いつ、自分のリクエスト曲が演奏されるのかなって楽しみが

できて」

「天才だから、どんな曲でも頼まれると、すぐ弾けるから、

毎回、会場のお客さんからのリクエスト曲を、楽しく弾いて

みせる、という設定とかどうでしょう?例えば、JPOPの

リクエストもあれば、懐かしい童謡を弾いてほしい、なんて

リクエストもあって。気づいたら、会場中の観客が、彼の

ピアノにあわせて合唱して、感動!とか。JPOPのリクエスト

では、HSTの曲弾くとか」

ふたりで、あれやこれやと想像しながら、アイデアは、

どんどん広がっていく。


「めっちゃ楽しかった。どこまで実現できるかはわからない

けど、俺なりに伝えられることは伝えて検討してもらうよ。

見てくれる人たちに、毎週楽しみにしてもらえるように、

精一杯、やってみるよ」

「どんなドラマになるのか、楽しみにしてます」

「うん。撮影に入ったら、3カ月ぐらいは、ずっとかかりきりに

なると思うし、その前に、ライブツアーで全国回るしで

なかなかそっちへいけないと思うけど」

「来れなくても、メールも電話もあるから、大丈夫ですよ。

なんか話したくなったら、いつでも連絡くださいね。それと、

むりしたらだめですよ。無理せざるを得ないときも多いと

思うけど。それでも、しっかり食べて、ちゃんと眠って

元気でいてくださいね」

「佳也ちゃんもね。想ちゃんも、英子先生も。俺が会いに

行くまで、みんな元気でねって、伝えてね」

「はい、伝えます」

「じゃあ、おやすみなさい」

「おやすみなさい」

電話は静かに切れた。

そして、次の瞬間、

ぺこり、と頭を下げたかわいいイラストのメッセージが

届いた。

佳也子も、同じイラストのメッセージを送る。


毎回、最後に相手と同じ絵文字やイラストを送り合う。

いつの間にか、圭とのメールのやり取りでは、それが、

習慣になっている。


(離れていても、同じ気持ちでいるよ)

なんだか、そう励まし合っているように思えてくるのだ


(同じ気持ちでいるよ)

そうだったらいいな・・・

佳也子は、明かりを消して、想太の隣の布団に横になる。



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