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吐き物。

作者: 森永雪

僕のクラスにはとても変な子がいる。いや、「変」ではない。ただ他と違うだけで。1人大人びた雰囲気で休み時間もいつも1人である。

いつも悲しそうに外を見てきた「彼女」に僕はいつしか心を奪われていた。


ある日理科教員に捕まり下校時間ギリギリまで手伝いをさせられた時、教室に戻ると「彼女」がいた。そこにいた彼女は怪訝そうな目をしながら嗚咽し、ティッシュに何かを吐いていた。

「大丈夫?」

そう声をかけると彼女は眼を見開いてこっちを見た。

「何でもない。見苦しいところを見せてしまいましたね。」

そういうと彼女は鞄を取り早足で教室を出て行った。


初めて聞いた彼女の声は妖艶、いやそこまでねっとりしていなくて透き通ってるというには色気がありすぎる…言葉にできない。そんな声だった。

その日の夜頭の中でリピートされる彼女の声。そのまま彼女の声を子守唄に寝落ちそうになっていたところふと気になってしまった。彼女が吐いていたものである。ティッシュを口から話した時それは「たん」とか「何かしらの食べ物」とかではなく「白い何か」だった。いやまさか。自分の中でできたある疑いを僕は抹消しようと頭の中で違う。と繰り返した。あんなに不思議でクラスで孤立した彼女がまさか口にアレを含んでいたなんてそんなわけがない。そんなわけがないんだ。そうやって考えるうちに、カーテンの外は明るくなっていたことを僕は気づかなかった。


そのことについて考え初めて3日が過ぎた。あの時吐いていたもの。このクラスの誰かのものなのだろうか。そうだったら一体誰の。いやまだ「それ」だとは決まったわけじゃない。そんなことを考えながら授業もろくに頭に入ってこなかった。

多分その様子の僕を見て彼女もなにか察したのか、その日の放課後空いてるか。と彼女が聞いてきた。昼休みだった。普段クラスの中で高嶺の花のような存在の彼女が陰キャの代表格とも言える僕に話しかけたのだ。あの時のクラスメイトの視線はとても痛かった。

放課後待ち合わせの場所へ行った。ファミレスとかではなく近所の喫茶店だ。まあ、ここならば他のクラスメイトと居合わせることもないだろう。そう思いながらベルの音とともに僕は店内へ入った。

店の一番奥、窓際の席に彼女は座り、小さいカップのコーヒーを啜っていた。

「可愛らしいカップのコーヒですね。」

そう言って向かいに座ると彼女は

「エスプレッソ。一番好きなの」

そう言ってまたひとくち啜った。

「じゃあ僕もこれ1つください。」

そう店員に言った時彼女は少し驚いた顔をしていた様に見えたが、二度見した時にはもういつもの笑顔に戻っていた。

沈黙が痛い。

僕が話題を切り出せずにもぞっとしていると彼女がちいさなカップを置きこう言った。

「多分あなたはあの日私が吐いてたものが何かわかってずっと私のことをみてたのよね」

唐突だった。

「あの、えっと、、あれはやっぱり…」

「その先は言わなくて大丈夫。でもあれはクラスメイトとかのじゃなくて、担任のだから、付き合ってる。とかじゃないわよ。」

「担任の…」

言葉を失いそうになった。イケメン彼氏とかじゃなくて彼女が吐いていたあれは担任のだったのだ。そして彼女はなぜそんなバレたら退学ものなことを顔色変えず淡々と話しているのだろうか。

「あの、そんなこと僕に話して大丈夫なんですか…?」

「大丈夫よ。だって、あなた。言いふらす友達もいないでしょう?」

そう笑いかけると彼女は「失礼するわ」と言って店を出て行った。そのあとに運ばれできた小さいカップのコーヒはとても苦かったのを覚えている。


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