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敗残兵、剣闘士になる  作者: しろち
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敗残兵、剣闘士になる 095 皇帝死去


 新人が来たことで訓練が2部制に変わった

 自分とカヒームのところで交代しながら行っていく、監修はマギステルに昇格したドライオスだ


 新人には足の運びを含む体の基本的な使い方と人体構造の勉強、元から居たニゲル達と去年の最後に入ったアルティマタスまでは重心の崩し体術と言えば格好いいが無手の技を教えることにした

 カスタノスの反省でもあるがドライオスもマクシミヌスも実は出来ないらしいことが判明した



「だって一撃で死ぬところまで出来ないだろう?」


 だ、そうだ


「やってみましょうか?」


 と聞くとおずおずと


「すみませんでした」


 と正直に打ち明けてくれたのだ




 裸で練る技が一番の基本である


 相撲の言葉らしいがよく知らないので気が向いたら調べて欲しい



 裸で人は殺せるか?可能である、むしろ簡単だ


 相手が防具着けていた場合は?勿論可能である、簡単なことだ



 重さは武器であるが枷であり諸刃の部分がどうしても残る


 兜を被っていれば地面との直撃は避けられるが頭の丸さで骨にかかるテンションの反応が鈍り首の骨にダメージが来やすい


 腕や足は衝撃が抜けにくいことで崩しやすさに繋がる可能性がある



 そんな基本的なところから始めて相手の重心を崩す技も教えていき【懸】の考え方を入れていく

 こういう場面でニゲルは伸びていく、言われた通りに動ける体というのは素晴らしいものだ

 但し考える頭は足りていない


 次はアルティマタスとビョルカン、この2人も体の使い方は上手く頭も良い分飲み込みが早い


 時間は掛かるのはセバロスとハーランドだ、セバロスは素直じゃない、ハーランドは単純に歳を食いすぎているし恐らくボクシングみたいな当て身の方が上手く出来そうだ



 ある程度の組手と受け身と出来るようになってから当て身の練習を開始した


 スエビの3人は抜群に強い、ニゲルもリーチがある分上手くできる

 セバロスとババンギが上手く出来ない、セバロスは相変わらず変なプライドが邪魔をしている

 ババンギは小さいことでリーチが出ず懐へ潜らなければいけないがそれは難しいのだ

 オココはビックリなことに何をやらせても出来る天性の才能だ、少し人とタイミングがズレておりカウンター気味に決まるので一撃が弱くても致命的なってしまう、剣とか槍を使わせても絶対できるだろうになぜかしないんだな



 カヒームは武器を持ち替えさせらながらひたすらに走らせているらしい、武器を自分の腕と思えと指示が飛んでいるのを聞くと的を射ているが新人には受けが悪いだろうなとちょっと思っている



 そんな訓練の日々が続きいつしか冬が終わり遠くに見える山々の雪化粧が消えてきた3月10日の夕食後、遂にハルゲニスからのお達しが来たが予想とは違うものでもあった



「マツオ、ちょっと来い」


「はい」


「ガレノスから手紙が来た

 マルクス・アウレリウス・アントニヌス様が病床に伏せて動かれなくなった

 意識も疎らで黄色い顔をして一時期は何か呟いたり腹を掻き毟ったり居ない蝿を追い払うように手を動かされていたがもうされなくなったそうだ

 モルスに誘われ精気を奪われたという話が書いてありどうしたら良いのか良い案は無いのか?とのことだ、これには返信せなばなるまいな」


「そこまで来たらもういつ亡くなってもおかしくありません、手の施しようが有りませんと返答してください」


「本当にそれで良いのか?」


「はい、意識が戻ったとて幻が見え聞こえ苦しく腹の奥底から痛みを訴えるだけです

 意識を失うギリギリで痛み止めが飲ませられれば良いですがもう飲めないかもしれません

 あとは戦神となりローマの礎になってもらうのが宜しいかと」


「ふむ、残念だな」


「そうですね」



 ハルゲニスは直ぐに返信をしたがそれが届いていたか間に合わなかったかどうか、3月22日アクタ・ディウルナ(板書きの新聞掲示板)に訃報が届けられていた


 3月17日、ウィンドボナにてマルクス・アウレリウス・アントニヌス様死亡


 マルクス・アウレリウス・アントニヌス帝位を引き継いでから息つく間も無い戦争の連続ながらローマを守り拡大してきた戦争嫌いな戦神と呼ばれた皇帝は押し込まれても押し戻し総じて負け知らず、最後はコンモドゥスに戦を託し重臣に見守られての旅路となった


 同時にコンモドゥス帝が帝位をそのまま引き継ぎ「戦神の御力の元にゲルマンとの戦争を終結させる」と宣言があったそうだ


 3月27日、皇帝の遺骸がローマに届けられハドリアヌス廟であるサンタンジェロ城に埋葬された


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― 新着の感想 ―
[一言] 再会すること無く逝ってしまわれたな。
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