敗残兵、剣闘士になる 085 最高傑作
「1月23日のマルクス・アウレリウス帝の統治開始記念闘技会がルリーア・オクタヴァノルムで開催される
出場するのはチロ(新人戦)にアルティマタス、ノヴィティウス(未熟者、マリディアーン)はカスタノスとセバロス、パルス・セクンダスにババンギ、パルス・プリムスにはカヒームだ
アルティマタスは出る枠があればもっと上のクラスに出てきて良いぞ
先導はマクシミヌスと帯同にマツオだ
出発は明後日の17日、寒いからしっかり対策をしていけ
いずれは甥であるマクシミヌスにこのファミリアを任せる、皆もそのつもりで頼むぞ
一緒に奴隷市も開催される、2人くらい買って目を養って来い
マシュアルとグラウクス、ディニトリアスは荷車で一緒に武具を運べ」
「「「おう」」」
マクシミヌスはハルゲニスの甥っ子だったのか、初めて知った
そしてまた歩き担当で明後日出発、たまには乗り物に乗って出かけたいなと思う今日此頃です
「マツオ、ちょっと来てくれ相談がある」
ハルゲニスの声明の後に、ディニトリアスに連れられて工房へ向かった
工房には大量の煤けた木が詰まれており鍛冶場の熱気も空気を伝って感じる
「で、相談ってなんだ?」
「アルティマタスの防具だ」
「あぁ、チロ相手なら要らないだろ?」
「まあそうなんだが、上と闘うって言ってただろ?流石にあった方が良いだろうと思うんだがな」
「俺が貰った左のガレリアとオクレアをやるよ
何色かつけてやってくれるとありがたい」
「いや?いいのか?」
「いい、どうせもう使わないだろうからな」
「そうか、じゃあマツオの分は古い物で見繕っておく、もしもの出番あるかもしれないからな」
「無いだろう?有っても困るんだが」
「刀なら後はガードを着けるだけだぜ?」
前のより少し幅広のガードを磨いているニヤけたヌワンゴが居た
「もう出来てるのか!早いな!」
「マツオ以外にはこの剣は使えないからな、丹精込めさせて貰ったよ
前のより切れ味はいい筈だ、耐久性も切った感触もな」
「仮組みしたから振ってみなよ」
「ヌワンゴありがとう」
鍔と柄が一体化した変な刀だが構えて見ると僅かにしか重さを感じない
波紋は真っ直ぐ刃から峰に向かってグラデーションが付いている
切り下げ、切り上げ袈裟逆袈裟、腰切りと切り返し、突きと繋げて見るとまるで羽のような軽さと鉄なのになぜか靭やか(しなやか)だ
「ディニトリアス、この刀どうなってるんだ?
硬い鉄が柔らかいというか粘り強い動きをするぞ」
「流石だな!この良さを分かってくれる奴は少ないと思うぜ〜
簡単に言うとだな、刃の先端にだけ鋼を軟鉄に割り込ませて焼刃土に炭と色々を混ぜて浸炭させたことで出来たんだ
焼刃土付け方が一番のポイントだがそれは教えないでおくぞ?これは俺の特別な部分だからな」
「分かった、聞かないでおくよ
これは立派な業物だ、素晴らしいよ」
「だろ〜?ただな鋼の問題があって使えるのは一回きり、何日も使える刃じゃないかもしれん
しっかりと脂と血を取って使うしかなかろうな」
「護身刀ならそれでいいさ、十分だよ
俺には釣り合わないくらいさ」
「使ってこそ剣だからな、マツオに使ってもらえて嬉しいよ」
「ありがとう、感謝する」
「おうよ」
その後は微調整を頼みルドゥスへ戻った
自分が貰った物ではあるがアルティマタスに防具を贈ることを話し、本人の希望で黒に塗り替えることになった
準備は着々と進む
マクシミヌスはいつか自分が継がなければいけないと思っていたそうで、ドライオスがマギステルに昇格することも決まり新たなドクトレを雇おうかカヒームに頼もうか迷っているらしい
それも4月までにとのことだ、現状ではドクトレが1人いることになっているので問題ないのだそうだ
セバロスは死にかけたこともありしっかり借金をして穴あきのお面から兜へ変更しマニカも新調した
カスタノスは相変わらずカヒームのお古、カヒームも今まで使っていた武具を使用する予定で何も無ければそのままカスタノスに譲渡する予定らしい
ババンギは右手に少し長めのシーカ刀、左には短い直剣とマニカ、両足にオクレア、兜は顔が見えるタイプだが面頬が大きい形をした視界を重視したものになった
全員の武具が揃い、いよいよ出発の日を迎えた




