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敗残兵、剣闘士になる  作者: しろち
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敗残兵、剣闘士になる 077 帰路


 朝イチで自分とマクシミヌスとアルティマタスの3人で荷車を受け取りハーネスでラバを固定、しっかりとブラッシングしたこともありアルティマタスに従って歩くラバの足取りは軽く荷車の挙動も良い


 自分とルクマーンの分の装備を荷台に括り付け盾で蓋をして縄で固定した


 煮沸した水、焼き魚、馬の喉肉とバラ肉の燻製を持ってアレラーテを後にした



 また海沿いを歩き初日はマルティクム(現マルティーグ)のルドゥスで一泊、ラバはアルティマタスにお湯で体を洗われてピカピカになり嬉しいのか「ヒーン」とか細く鳴き声を出していた




 そして2日目マッサリア(現マルセイユ)へ到着、荷物は全て荷台に載せているため軽々歩いているが一人だけ辛い人が出ていた



「どうしてみんなそんなに歩けるんだい?」



 アルティマタスだ、忘れてた

 捕虜生活でろくなものを食べていないのに履きなれない古い靴(マツオが購入)と安いズボン(マツオが購入)を履いてラバを引いて歩き夕方に世話を頑張っているのだ


 既にラバを引く体力はなく歩いているだけで精一杯だ、見かねてルクマーンが声をかけた



「ハーランドに歩き方を教えてもらえ」


「え?歩き方を?」


「特殊ではないが、いや特殊なんだろうな

 知れば納得する歩き方というか足の運び方だ

 足の運びが変わると闘技会でも自分の体が使える体に変わるんだ、なんだろうな無駄に散らしていた力が集束するというかなんというか」



 確かに、鉄砲の動きが盾でぶん殴る動きに変わるとは思わなかったな



「歩くことが良い訓練になるのだ、教えてもらって損はないぞ」


「そこまで仰られるなら是非とも習いましょう

 ではハーランド教えてくれるか?」


「はい」



 ルクマーンに対してやけに礼儀正しい、パロスの中でも上位だからか?

 アルティマタスの覚えは早かった


 ビョルカンが言うにはスエビの王族は政だけでなく幼い頃から剣や槍、弓等実践的な訓練と戦術の勉強をさせられ王族が民族の中で最も強いということを貫いているのだそうだ


 なるほど動きの飲み込みが早いわけだ、

 ただし、食事の回数も量も多いのはどうにかしたいところだ

 朝夕の2食では足りず昼前と3時にも魚か肉と果物やナッツ類(クルミ、アーモンド、ヘーゼルナッツ)を食べる

 旅の途中は弓矢(マツオが購入)でウサギや鳥、蛇を捌いて食べていた


 ウサギの毛皮はマッサリアで売れたし鳥のダウンの部分は麻袋に取り置きして持ち帰る用にしてある




 問題は山火事がどうなったか?だがいい報告が上がっていた



「昨日の朝に雨が降って消えたそうだ」



 街の人にマクシミヌスが聞いてきた情報だ、確かに煙は見えない

 マクシミヌスとルクマーンが2人で話し合っている



「通れると思うか?」


「どうかな、こちらに人が来ればいいけどな」


「カルシタナエ(現カシス)まで行ってみるか」


「それがいいな」



 結果、マッサリアからカルシタナエまで数時間移動することになり出発、カルシタナエまでの道も十分に山間だったが山火事の跡はなくそこで空き家を借りて一泊した

 マクシミヌスが聞きまわったことには山間は通れないが海沿いの丘を歩いていく分には大丈夫だったとのことだ


 翌日歩くことになった海岸線沿いがまあ大変な道だった、45度斜面をジグザグ登り崖沿いを上下しながら丘を超えては下り超えては下りを繰り返す


 テロ・マルティウスに着いたー!と思ったら一つ手前の漁村だった


 流石に皆ギブアップで一泊、キエウタ(現ラ・シオタ)という村らしい、千人前後の小さな村だが海は砂浜が短く崖と崖の間の浜だけあって海が青く澄んで輝くようだった



 丘陵地帯を通り今度は海岸線沿いの道を進む


 どれが目的地なのか?というほどに漁村が点在していてその漁村群の終わりの村が目当てのテロ・マルティウスという少し大きい村だった



 そこで一泊し再び海岸線沿いを行く、問題の山火事が起きていたところは見事にハゲ山になっている

 今年は全く動物がいない、温かく熱され海鳥も避けているのかハエや蚊が多く押し黙って歩き続けて途中の海っ端の小屋で野宿、ルリーア・オクタヴァノム(現フレジュス)まで丸2日を要した


 リフレッシュと食材購入もあり2泊使いそこからは整備された街道を通りニカイア(現ニース)とセイント・レムス(現サンレモ)、アルビンガウヌム(現アルベンガ)を通り随分と離れていた第2の故郷サンーアに戻ってきた




「着いた〜」


「ここが俺たちのルドゥスだ」


「どれが家なんだ?」


「「「…」」」



 アレラーテ(現アルル)から徐々に田舎へ歩いてきて一番家らしくない砂浜の放牧地みたいなところがゴール地点という切ない結果だった


 アルティマタスを取り残してルドゥスに入る前に全員で目を合わせたあとに泣くほど大笑いしてから見慣れた我が家の柵を開いた




 夕暮れ時を過ぎている、母屋からはいい匂いが立ち込めている


 『ギィ、ギ、ガン、ニィィー』


 と建付けの古びた木戸を開けマクシミヌスが言い放った



「只今、全員無事にアレラーテより戻りました」



 一番いいところを持っていくよねえ



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― 新着の感想 ―
[良い点] 丁寧な返し、大変ありがたいです。 簡易保険的な死亡時の補助金がでてたんですね。納得です。 ショタに続き、王子様まで主人公のハーレム(謎)に加わり、今後が楽しみです。 あと1、2年したら、主…
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