敗残兵、剣闘士になる 059 短縮
セイント・レムス(現サンレモ)、ニカイア(現ニース)、ルリーア・オクタヴァノルム(現フレジュス)と4日間かけてやってきたがここで大問題が発生した
ここら辺は数週間全く雨が降っていなかったらしく枯れてきた木々が擦れ合い自然発火で山火事が発生していたのだ
次の予定地はテロ・マルティウス(現トゥーロン)だが山間の道も海岸線沿いも進めない状態になっていた
そこでニカイアから来る船に乗り込みマッサリア(現マルセイユ)まで行ってしまおうという話になり、実はかなり節約していたというマクシミヌスのお財布を開放して海運業を営む店に頼みに行ってもらった
結論としては一人につき金貨2枚でストエークハデス(現イエール諸島)まで乗せてくれるとのことで既に支払ってきたとマクシミヌスがドヤ顔で言ってきた(スルーした)
半日もあれば着くそうで島に着いたら5人で金貨1枚あればボートで本土に渡してもらえるらしい
そう聞いてボートに乗って沖の船に乗せてもらい、島に向かったが降ろす積み荷がないからとストエークハデスには寄らず丸2日と半日をかけてマッサリアに到着してしまった
ラッキーなのかはどうだろうか、船に乗る前からハーランド、ビョルカンがずっと船は嫌だとゴネており乗船してすぐから最後まで吐き続けてグロッキー
マクシミヌスはなんともなし、ニゲルは揺れが気持ちいいとずっと寝ていた
ルクマーンは帆を張る手伝いを含め雑用に走り、自分は船員と一緒に食事を作ったり直前に買った果物を提供して魚を分けてもらったりなど仕事をしながら過ごしていた
船を降りマッサリアで食事提供してくれる宿を取り一泊、ハーランドとビョルカンの調子は優れないが歩きつつ持ち直して貰うしかない
マッサリアから少し歩くと眼前に大きな湖と刈り取られた小麦畑が広がる分岐点でマクシミヌスとルクマーンが相談している
「海の方に回るか陸を回るかどっちがいい?」
「時間的には同じだったよな?」
「そうだな、皆はどっちがいい?
陸に回ればちょっと大きなヴィラ(村)があるし海周りにも村はあるが宿は難しいな」
「どっちでもいい、静かに寝られれば」
「同じく」
「人が少ない方がいいかな」
「確かにねえ」
ハーランドとビョルカンはとりあえず気持ち悪さが勝っているらしく横になりたい一心だ、ニゲルはあまり人が得意じゃないらしい
個人的にも人が多すぎると買い出しが面倒なので避けたいところだ
「じゃあ海周りだな」
街道から少し外れ湖の南沿いに歩いて進むと湖から海へ流れる川の中洲の高台に家が建ち並んでいるのが見えてきた
「あそこの外れに寝かせてもらおうか」
「随分と大きいな、城もあるじゃないか」
「マルティクム(現マルティーグ島)という島の街だ、数百年毎に支配する民族が替わったこともあって街の作りは面白いことになってる」
「へ〜」
「うーん、まあ行けば分かる」
見えているのに街が遠い、最後は渡し船を使って数時間かけようやく到着した頃には夕日の出ていた
家は石造りで色も黄色オレンジ白と様々、建物の形は無骨に石を積み上げただけの家から漆喰かコンクリートを塗ったようなキレイな壁の家があったりと様式も様々だ
川沿いは港町、高台に上がると大きな御屋敷が増える
更に進んで下り坂に差し掛かり古びた城壁のような囲いがあった、そこの門番にマクシミヌスが話し掛けて中に入っていった
「ルクマーンはここが何か知っているのか?」
「まあな」
「ここ何なんだ?」
「耳をすませば何か聞こえてこないか?」
遠くの方で『カン!カン!』っと木と木が当たる音が聞こえ「ダメだ!もっとしっかり奥まで突け!」という叱責のような励ましのような声が聞こえてきた
「聞き覚えがあるだろう?」
「ルドゥス(剣闘士養成所)か!」
「正解だ、さあ行くぞ許可が出たみたいだ」
門を見ると中から少しだけ顔を出して手招きしているマクシミヌスが少し怖い
顔色の悪かったハーランドとビョルカンは生き生きとした顔になりニゲルは逆にしょんぼりした顔になり足取りが重たくなった
中に入ると東側に宿舎、西には石のないキレイな土のグラウンドが広がっており一部では馬を走らせている
「馬にも乗るのか〜」
「キルクス(戦車競馬)の為の調教だろう、マッサリアにはキルクスがあるからな」
「へぇ〜、せめて乗れるようになりたいな」
「頼めばやらせてくれるんじゃないか?あとでだけどな」
「是非ともお願いしたいな」
マクシミヌスに案内され宿舎に行くと空き部屋(1室が2畳ほど)を2部屋分用意していただいたとのことで3人ずつで分かれて入った
何故かマクシミヌスとルクマーンと同じ部屋になってしまい何だか狭い感じがする
「マクシミヌス、マツオが馬に乗りたいんだとよ」
「いいじゃないか行って来いよ」
「良いのか!?全くの素人だぞ?」
「大丈夫だろう、明日キルクスがあるわけじゃないから
マツオは落馬に気をつけろ」
「はい!」




