敗残兵、剣闘士になる 057 旅路
あっという間に時は流れ、10月の終わりだ
10月の後半は雨がパラパラと良く降って風の強い日もあったし、随分と冷え込む日が増えた
ということで11月の移動を前にお買い物!
買うのは古着のマントやコートのようなモノが欲しいとカヒームにお願いして街にマシュアルとカスタノスを伴って繰り出した
カヒーム御用達で以前にも訪れた古着屋さんに向かう、ここには戦争で奪った物、持って帰ってきたボロのツギハギ服など等も置いてある
トゥニカと呼ばれる半袖貫頭衣やウール製のポンチョや外套も置いてある
鹿革や猪革の毛布も置いてあるが値段が高いし、なにより狩りで収穫した皮を鞣しに出してくれたそうで新しい物が12月の頭には届くと聞いている
マシュアルにも毛布としても使えそうな厚めのコート、トゥニカ、ゲルマンから取り上げたというズボンを購入、カスタノスにもコートを買わせられアウレリウス金貨2枚が飛んでいった
服がオーダーメイドじゃないのに高い!奪った物なのにね!と思ったらゲルマンのズボンが温かく人気があるので高いんだそうだ
残り金貨約30枚、しっかり稼ごう!
なんか現金減ってないかって?ついでにナッツや蜂蜜を購入し胡椒に手を出したから、たったの数粒で金貨1枚って高いぜ〜
前に唐辛子を使ったがあれはヨーレシが浜で拾った物らしい
(あの時の種植えときゃ良かった〜)
と後悔は尽きない
調味料として発見があったのはカラシナの種であるマスタードシードだ、皮付きのまま乾燥されておりいつでも使える状態だった
醤油、肉、辛子と言えば…
今晩の夕食はシューマイだな!
肉屋で鹿肉を塊で購入、大麦は粉にして皮にして鹿肉を叩いて保存しておいた熊肉を一部投入、ネギとサボテン、ショウガを刻んで混ぜて皮に包んで蒸し上げた
見た目はシューマイだが中身は分からない、辛子をちょっと塗って食べたら…シューマイじゃないけど美味しかったので良しとしよう
グラウクスというチャレンジャーはタップリと練からしを付けて食べ盛大にむせて涙と鼻水で溺れそうになっていた
服を購入してシューマイを食べた日、ハルゲニスから恐ろしい話がされた
「11月の興行だが馬車の手配を忘れた
そこでルクマーン、道は覚えているな?」
「ああ、はい」
ルクマーンが物凄い渋い顔をしている
「よし、ではルクマーンを道案内にしてマツオ、ニゲル、ハーランド、ビョルカンの5人は11月2日に徒歩でユリア・アウグスタ街道に沿って移動を開始
カヒームに御者を頼むとして私は11月9日にグラウクスとマシュアル、ディニトリアスを連れて武器を運んでいく予定だ
11月11日か12日の昼間に落ち合おう、目標はアンフィテアトルムのテルマエでな」
「「「はい」」」
「では解散!」
ハルゲニスが去り食後にまったりしているルクマーンに聞いてみた
「テルマエって何だ?」
「そうだな、大きな丸い穴にお湯を張ってそこに入って汗を流すところだ」
「なるほど“風呂”だな」
「マツオのところではそう言うのか、川で水を浴びるのはこれからの時期は辛いからなテルマエで温めてから仕合に臨むのさ」
「それはいい、この街にテルマエは無いのか?」
「無いな」
「何故作らないんだろうか、作ればソコソコ入る人も居るだろうにな」
「まあこの街にはそれをするだけの水が無いんだよ」
「そこの川は小さいからな」
「そうだ、アレラーテにはローダヌス(ローヌ川)って大河があるから上流から水を回して下流に流せるのさ」
「なるほど」
「まあ、楽しみにしているといい」
「そうしておこう」
それからまたトレーニングを積んで、3日後の朝に5人は旅立った
「ちょっと待て、俺も行くことになったんだ旅費持ってねえだろうがよ〜、置いてくなー!」
3人ずつ寝られるテントと言っていいのか分からないが雨避けの布を順番に背負っていく
後から来たのはマクシミヌスだ、どうやら旅費を持っているらしく道中の案内と監視、お財布にもなってくれる優れ者だ
道を歩くと3mくらいの石の塔があった
「マイルストーンだ
目標は毎日25〜30個分を進む予定だ、お前らへばるなよ」
そういうマクシミヌスが一番心配だ
「(足引っ張るなよ)」
シンクロしたように全員の心の中が一致していた




