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敗残兵、剣闘士になる  作者: しろち
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敗残兵、剣闘士になる 003 ごはん


「カヒーム!」



 痰がらみのしゃがれた声が入口から聞こえる

 いつの間にか眠っていたようで月明かりが照らしていた


 シルエットですぐわかった、自分を買ってくれたあのオジサンだ



 ザッザッと裸足のままがに股歩きで来た



「まだ生きてるよ」



 日本語で言っても分からないだろうが落ちついて話せば何かしらは伝わるだろう



「マツオ?」


「はい」



 よく覚えてたな



「グラウクス****、マツオ**メディケ***モルス**アニマ**カヒーム」



 モジョモジョ喋るから名前以外が全然聞き取れない、歯がないのか?と、よく見ればしゃくれてるじゃないか

 所々で医者とか魂とか言う言葉が聞き取れたが今一何を言っているのか分からない

 とりあえず骨接ぎであって蘭学を修めた医者出ないのでメディケではないのは間違いない



「メディケ、ネファス」



 と声に出して手を振り違うと伝えたい



「マツオ、ウーンクトゥル ****」



 はい、分かりません

 首を傾けておきます

 どうやら何かを言うことを諦めたようでそのまま寝ているカヒームの顔を撫でている

 顔撫でるの皆好きね~、男同士なのに



「カヒーム」


「カヒーム モルス プーンャ

 カヒーム マグナ モリース」



 親指を上げておいた

 カヒームは死んでない、生きていると言ったつもりだが合ってたかな?



「オオオ、カヒーム」



 オジサンはカヒームの髪を撫で付けて額に口付けしてから立ち上がった

 暗くて分からないが泣いているようにも見えた



「マツオ」



 人差し指と中指を引っ掻けるような動きを此方に見せた

 何かよく分からず動かないでいると今度は手を引かれて外に出た


 オジサン腕に引かれて隣の大きい建物に入るとそこには馬車に乗っていた残りの四人とカヒームを撫で撫でしていたオッサン、ガタイの良い厳つい方々が地べたに座って鍋を囲み飯をスプーンで喰らっていた


 その手の皿の中には粒の大きい白いごはんと魚を煮込んだようなオカズ、豆、野菜があった



 何故だか涙が溢れてきた



 白いごはんだ



 ずっと食べたかった白いごはんだ



 茶色い雑穀と炊いたごはんじゃない、豆で嵩ましもされていない、水炊きのような重湯ような物でもない白いごはんだ



 涙で溢れて何も見えない


 見えないけれどそこには大粒のごはんがあった


 心の中にある楽しかった思い出までもが溢れてくる


 十八歳から始まった戦争は四年経ってもまだ続いている、家族兄弟は散り散りになり、生きていると分かっているのは山の中の小屋に避難した年の離れた長男だけ



 皆で一緒に食卓をワイワイ囲んでいたことがどれほど幸せなことだったか今になって分かった



 入口でオイオイ泣いていると口に何か入った

 いや、入ったのはごはんだ


 噛めば噛むほどプチプチとした食感が甘く広がって美味しい


 ・・・ん?


 プチプチ?



 目を擦ってしっかり目を開けて口唇に付いた米粒を取ってじっくり見てみると米粒が二つくっついたような形の米だ

 真ん中に微かに茶色い線が入っている、それを噛むとプチプチ音がするらしい



「うん、これ大麦だ」



 何故か納得してプチプチもきゅもきゅ食べて飲み込む



「米っぽいけど米より甘いかもしれないな、粘り気が少ないからかな食べやすいな」



 ゴツい人達に腕を引っ張られて床に座らされ皿にこんもりと大麦飯を盛られて木のスプーンを渡された


 どうやら食べて良いらしい



「いただきます」



 正座になり目を閉じて合掌し我が血と肉になる糧を頂く、生き物植物、作ってくれた人に感謝を込めて一言告げたのだ



 スプーンを取り大麦飯を掻き込む、旨い!ああ旨い!飯だ飯だ、何日かぶりの飯だ!うまいぞおおおおおおお!



 結果おかわりしました




 食後に金を出していたオジサンに呼ばれて行くと木の板に証文だろうか何かが書いてある



「ミニステルアリス ロアンヌ アウレウスXX リベロ」



 どうやら借用書のようだ、何かを20返せば自由ということなのだろうか



「ノーメン プレナ」



 板の下の空いている部分に名前を書けと言うことか?


 羽ペンみたいな物をインクにつけて名前を書いた、勿論ローマ字でだ



「マツオ **** グラディアトル ****メディケ ウーンクトゥル」



 相変わらず何を言っているのか全く分からない、歯に挟まってたのか大麦の粒飛んできたし!汚いな~


 とりあえず何かしながら稼げと言うことなのだろう



「了解した、とりあえずカヒームの治療が優先だ、戻らせてもらう」



 正座のまま礼をして、半歩分下がって立ち上がり家を出る


 月が大きい、満月だ



 カヒームの寝ている所に行くと既にオッサンが居て油のランプに火がついていた



「メディケ マツオ レメディウム」



 オジサン何かを吹き込まれたのか単語で話すようになった



「何もすることはない」



 カヒームの頭の手拭いで顔に出た大粒の汗を拭い洗ってからもう一度冷やして頭に乗せた



「今日はここで寝よう」



 カヒームが見える位置で体育座りを決め込む、腹が満腹なったこともあり自然と眠気襲ってきてそのまま眠りについた




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