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敗残兵、剣闘士になる  作者: しろち
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敗残兵、剣闘士になる 029 助っ人


 2回戦はかなりいい勝負だったようで歓声が鳴り止まない


 そんな中まず運ばれてきたのは負けた方か

 意識が危ないのか白頭巾2人に腕と足を抱えられて運ばれてきた

 運ばれたと思われる道に結構な血が滴っておりかなり重症だと推測され、死に瀕していると思われ、少し奥の部屋へ運ばれてその後はうんともすんとも聞こえない、駄目だったかもしれない



 ちょっと時間が経ってから勝ったと思われる方が腕を切られたのか、肘の辺りを押さえ指先から血を滴らせながら歩いてきて案内されたのは目の前の部屋だった


 部屋は3畳程度の土というか石とコンクリートで作られた部屋で入り口の仕切りは布か木だ


 向かい合わせで3組の6部屋があるが入り口は互い違いになるように作られている




 勝者の方は腕のどこだったのか分からないが動脈じゃなきゃ良いがなと思っていると、ちょっと声が聞こえてくる



「焼いたって血が止まらないじゃ無いか!早くなんとかしてくれ、意識が朦朧としてきた」


「なんで止まらないんだ!どうなってんだ!

 誰か!誰か!助けてくれ!」



 大変なことになっていそうだ

 なんとなくグラウクスを見るとバツの悪そうな顔をしていた



「助けに入るとダメなのか?」


「助けられるのか?」


「見てみないとなんとも」


「あんまり良くないもんなんだよ、大体が弟子を連れてきてるから師匠がダメなところは見せられないもんだ」


「なるほど、じゃあちょっと見てくるわ」


「おい!話聞いてたか!?おい、ちょっと待て!」



 なんとなく今なら間に合うかもと思って部屋にお邪魔した



「向かいの部屋のメディケのマツオです、助けてくれと聞こえたもので来てみました」


「いや、まあ」


「血が止まらないんだ!あんたでもいい助けてくれ」


「ちょっとお邪魔して」



 師匠と思しき人はメスっぽい何かを持って茶の長髪のグラディアトルの右腕のところに腰掛けていた



「なぜ腕を下げてるんだ?」


「瀉血するなら下げるだろう?」


「血を止めたいんだろう?」


「そうだ、だから余計な血を抜くんだ」



 ええと意味わからん、死ぬぞ



「それ無理です、死にます、断言できます

 最終的に血が足りなくなるかサラサラになりすぎて死にます、どいてください殺す気ですか?」



 黙ったまま動かない医師モドキの首を掴んで投げ飛ばしグラディアトルの治療を開始

 まずは下げていた腕を上げベッドの上に自分の足を乗せて腕を伸ばして置く



「誰か突っ立ってないで手伝ってくれ、まずはぬるま湯をくれ、洗うぞ」


「そんなことをすれば血が汚れるぞ」


「煩えな、黙ってろ!早くぬるま湯で洗うぞ、グラウクス頼む」


「仕方ねえな」



 入り口前でバツの悪そうな顔で逃げようとしていたグラウクスに声をかけて手伝わせる



「いいか!覚えておけ血も水の流れと一緒だ、高いところから低いところに流れるんだ、下げれば止まらないんだぞ?分かったか?」



 モドキとその弟子らしき壁際の2人に話しつつ、他の部屋にも聞こえるように大きな声を出す



「次に傷口はしっかり洗え、キレイにして置かないと中身がどうなってるか見えないぞ」



 ぬるま湯で腕を洗う、傷に触れる度にビクッと腕が動くが気にしない



「良し!キレイだ見てみるぞ、おい壁の2人、灯りを持ってこい」



 この時点でかなり出血は止まっていた


 壁際の2人が灯りを持ってきた、オイルランプだ珍しい!


 傷みると切られたのは右肘の窪みの内側、ナイフで引っかかれたような抉った創だ



「おい!意識はあるか」


「大丈夫だ、ちょっと辛いけどな」


「良し!多分気絶するから先に言うけども動脈切られてる、ただし半分だ、表面に出てるとこ狙われたな、精進しろよ

 髪の毛を長いの3本貰うぞ、お湯少なくていいから煮てくれ、グラウクスは針と火箸を頼む」


「あいよ」



 弟子の片割れが髪を抜いて煮始め、グラウクスは向かいの部屋に戻って道具を持ってきてくれた


 動脈とわかった時点で圧迫止血をして出血止めたのでもうほぼ出てこない



「おい、出血は一時的だが止めたぞ?見えるか?」


「ああ、すげえな、頼むよ」


「ここから痛いぞ、頑張れよ」


「おう、グギィ!ニィイイ、イー!」



 血管に針で小さい穴を開けるとビクッビクッ腰が上がり脂汗が吹き出る、煮た髪の毛を血管に開けた穴に差し込み結紮し縫合していく


 大体直径で4ミリ程度、半断裂なので3針で様子をみて腕を下げる


 微小の出血があり恐らくさっき使ったであろう火箸のようなもので血管を軽く焼き出血点を塞いでいく


 出血がなくなったら表皮の縫合にうつるが動きの確認をしておこう



「感覚は大丈夫か?握ってみろ」


「大丈夫だ」



 グーパー、指折りをしてくれる、動きは大丈夫だ、指先を叩いても触っても嫌がる気配はない



「ヨシ、皮膚塞ぐぞ」



 皮膚にも穴を開けて塞ぐ、こっちは細かくはいかないが4センチ程度あるので気合入れて7針入れた



「よく耐えたな、終わったぞ

 7日経ったら皮膚の髪の毛は切って抜け

 血管に付けた髪の毛は切れないしいつか本当に血管になるからそのままにしておいてくれよ」


「助かった」


「動脈の止血はこうやるんだ、覚えておけよ」


「「はい」」



 モドキの弟子たちがキラキラした目で返事をする、どんな教育してたんだよ、そっちのいじけた体育座り野郎め!



「邪魔したな」


「本当だよ、そんなことしなくても助けたのに」


「次からは助けないから殺さずにちゃんと止血してくれよ」


「ふん!アダッ」



 グラディアトルがモドキの医者に一発蹴りを入れて出ていった

 自分もやりたかったが止めておいた、どうせいつかクビになりそうだったし放っておこう


 さーて!次こそ自分の番が来そうだ、頑張るぞー!



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― 新着の感想 ―
[一言] そら、応急処置だけでも 1800年ぐらい後の技術だから この時代だと神の技でしょうね
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