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敗残兵、剣闘士になる  作者: しろち
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敗残兵、剣闘士になる 026 ついでにコペシュ


 その宣言のあとは一旦全員退場した

 裏に残るのはイフラースとチロの5人のみ、残りの3人は宿舎に帰ってしまった


 イフラースも出番が明日で用事は無かったが休憩する場所とメディケの詰め所の案内、もしもウェナーティオ(闘獣)に選ばれた時に誰が出るか等の話をしに残ってくれたらしい



 ただすぐには移動できない、退場したところでチロは抽選があるのだ

 最初は何日目に出場になるのか?ということから始まる

 オココだけはサギッタリウスということもあり2日目にチロ同士の仕合、3日目にウェナーティオ(闘獣)がすぐに決まった

 残りの4人はくじ引きだ、積まれた麻雀パイのような何かの動物の骨に文字が書いある、新人全員がそれを一個ずつとり文字を確認する


 3人の役人?さんがそれぞれ違う文字の書いてある木の板を見せそれぞれの日付を伝える


 ニゲルとカスタノスは2日目、セバロスは3日目だ、そしてまさか自分が初日を引くとは…




 初日出場者以外は一旦休憩所へ


 一人残されてちょっと寂しいが周りの新人さんもソワソワしているのを見るとちょっと落ち着いた



「おい、そこの奴隷」


「はい?」



 自分でしょうか?と椅子にふんぞり返って座るヒゲだるまな背がちっちゃいのに体だけパツパツなオジサンを見る



「お前は何だ?」


「何だとは何を答えれば良いのでしょうか?」


「サムニティスかトラケスか?」


「ガッリじゃないかと言われていますが盾は使わず剣一本なので何なんでしょうかね?」


「なんだそれ死にたいのか?兜は?」


「かぶる予定は無いです、当てても額に一枚板をつけるくらいですね」


「ますます死にたいらしい、ガッリでいいな

 名前は?」


「マツオです」


「やっぱりか、まあいいせいぜい足掻いて死ね

 あい次お前!」



 不貞な輩だ、こういう上官居たな〜

 裏で横領して査問会に呼ばれて腹切らされてたっけか


 全員の聴取を終えて対戦表が組まれていく



「じゃあ最初はガッリのマツオとホプロマクスのギリフォス」



 ホプロマクスは重装闘士で兜とマニカ、両脛にオクレアを装着し距離を取って攻撃出来る槍と視界を遮らない小さい円盾を持つ厄介なタイプだ



 ギリフォスと呼ばれたのは縮れた金の短髪で彫り深い顔で青い瞳が特徴的だ

 初日のメンツの中では一番筋肉質で身長も180センチ近く一番高い、胸板も厚く脂肪も十分に付いている鍛え上げられた戦士という印象だ


 うん、怖い!



「よし、これで組めた

 あ〜終わった終わった〜」



 ヒゲだるまのオッサンはガニ股で巨体を揺らしながら出ていきそのまま流れ解散になった


 イフラースはすぐ後ろに控えて居てくれたようで治療所に立ち寄って挨拶をしてから待機所に向かった


 治療所にはメディケが3人、ウーンクトゥルが5人おりコンクリート?製の手術台と湯を沸かした大瓶、高濃度アルコールが置いてあった

 アルコールは飲ませたり吸わせたりして意識を飛ばすことに使うらしい、うーん消毒せい!


 治療所はあと2箇所空いており片方を借りられるそうだ、後でディニトリアスがメンテナンスした手術道具とハルゲニスには事前に頼んでいた塩と高濃度アルコールも運び込んでくれるらしい



 待機所は6畳くらいの部屋で軽く体を温めるくらいは出来そうだ

 トイレは共用、なるべく話したく無いのでギリギリまで行かないようにしようと思う


 結果残ったのは自分一人、めちゃクソ寂しい


 仕合に合わせて迎えが来るのだそうだがどうにも何もすることがなく待機所の入り口にいる看守に倉庫へ行く許可を取ってもらい暇つぶしを画策、第一回戦ということもあり無事に許可を得て見張り付きで倉庫へ見に行けた



 闘技場入口へ向かうと闘技場へ上がる階段の上は鉄柵で閉じられており牛の荒ぶる鳴き声と歓声で盛り上がり具合が窺われる


 倉庫を漁ろうと入ると一人先客がいた


 チロの集まりでは見たことがない、細いアフリカンという感じの人だ

 身長も160くらい細身で目がギョロッとしていて目が合うと物凄い良い顔で笑顔を見せてくれた、歯が白い!


 趣味なのか何なのかずーっと槍を漁っている


 こちらは剣と斧を漁っていくので交差することはない、剣にも色々あるがシーカという短い曲剣とちょっと幅のあるグラディウスが圧倒的に多い

 あとはファルカタという反りのある内側が刃になっている少し薄い剣、ファルクスと呼ばれる刀の刃が逆についている長い反りのある剣が僅かにありスパタと呼ばれる直剣も何本か見つかった

 あとは錆びきって朽ちた剣が数本かあるくらいであまり種類はない…



「なんだこれ?」



 細長いS字に曲がったちょっと刀っぽい剣だ、先っちょが少し尖って出ており内側が少し引っかかるような突起が付いている

 大分錆びついているので切れはしないだろうが鋼も丈夫で歪みもない、全長で90センチで刃が60センチで柄30センチ、刀身の厚さは8ミリ程度で幅も4〜5センチとかなり刀に似ている


 握りは木をベースに何かの革が巻いてある、少し重心が上だが違和感はない

 軽く振ってみると形こそ刀に近いものの振り心地は斧のような感覚だ

 シゲシゲと見つめていると先客のお兄さんがこちらを見ているのに気付き目が合った



「コペシュだ」


「この剣の名前ですか?」


「そうだ」


「へ〜、これって持って帰れたりするんですかね?」


「大丈夫だと思うよ、ね?看守さん」


「いいぞ、生きて帰れればな」


「ありがとうございます!」



 やっほーい!鞘は無いがもう切れないだろうからと許可を頂いた、条件付きで


 獣と人間の闘いは結構長く掛かっているがずーっと盛り上がりを見せたままで最後は大歓声の中で拍手が大雨のように鳴り止まない中で闘獣士が戻ってきた


 民衆からのお捻りも投げ込まれており、看守に聞くと下働きのお兄さん達が回収して少し頂いて8割くらいを勝者に渡してくれるそうだ、全く世知辛い




「マツオ出番だ」


「はい!コペシュ預かっててくださいよ?」


「大丈夫だ、ちゃんと持っていよう」



 看守さんにコペシュを渡して階段を1段ずつ上がる

 薄暗闇から娑婆に出ると明るくて堪らない、何の装備もなく闘技場に上がったところで係員(審判)に練習用の木刀を渡された



「懐かしさすらあるな」


「中央へ」



 真ん中にいる貫頭衣のオジサンに呼ばれ歩いていく、反対側からは明らかにフル装備なお兄さんが肩を振りながら歩いて来た


 目の部分に荒い格子の入った頭全部を覆う兜に羽の無いトサカが付いている

 右腕には薄い金属を重ねたマニカ、同じく薄く加工したオクレアを両足に付け、左手の円盾は中央が金属で補強された木製、右手の槍は2メートル近いただ尖らせただけの槍だ



「制限時間は大体30分、助命嘆願か動けなくなったら負けだ、いいな?」


「はい」


「ではサンーアから来たガッリのマツオ、ピサエからきたホプロマクスのギリフォスの仕合を始める

 まずは互いに打ち合って温まったら武器を渡そう」


「はい」


「では、開始!」



 審判のオッサンが下がった瞬間に一歩飛び出し槍を振りかぶって投げるような格好をみせてきた


 いよいよ開始だ!



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