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敗残兵、剣闘士になる  作者: しろち
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敗残兵、剣闘士になる 023 気付き


 海岸沿いの馬車道というのか轍のある石畳の道を歩く


 家も海の家みたいな簡易木造であったり集落になると石造りの家が出てくるが2階建てという家を見ない


 車どころか馬車も大八車のような馬車、一切の機械を見ないしもちろん空襲の形跡もなし


 海に浮かぶ船は手漕ぎで投網漁や定置網をしているが全くプラスチックを見ない




「こんなところにも教会が出来たな」



 海岸線歩いている時にカヒームが呟いた



「教会?」



 見れば十字架が掲げられている石造りの壁が一枚だけあり、あとは吹きっ晒しの状態の建設途中のような教会があった



「キリスト教?」


「そうだがどうした?」


「親方はいるのか?」


「神父か?居るんじゃないか?」


「立ち寄っても?」


「じゃあ休憩にするか、少しだけだぞ」


「ありがとう」



 西暦はキリストの生まれた年から数えている筈だ、神父ならば知っているだろうと思い駆け入った



「神父は居るか?」


「私だが」



 壁の横で木枠を組んでいたオッサンが神父だった、ヒゲまで金髪の青い目のぽっちゃりおじさんだ



「キリストが生まれて何年経つ?」


「179年だ」


「ありがとう」


「それだけか?入信者か?」


「いや聞きたかっただけだ、ありがとう」


「いつでも神は見ているよ、神の導きがあらん事を」


「ありがとう」



 1945年から179年に巻き戻ったらしい

 いつだったか零戦が行方不明になって2年後くらいに出てきたと聞いたことがあったがあれは未来に行ったわけだが、今は過去に来たのか、何故?


 考えても答えは出ない、偶然来ただけなのだろうな

 179年といえば成務天皇あたりか?古墳時代じゃないか!服は同じくらいだろうが治金技術は300年近い差が出てるな


 どちらにしろ、帰ったところで何もない

 ここで生きていくのが一番いい気がするな


 そういえば国はローマとかなんとか言ってたな、もしかしたら古代ローマの時代か?『すべての道はローマへ通ず』のあの帝政ローマか?


 だとするとここが一番繁栄している文化発祥の地か



「ハァ〜」



 ため息しか出ない、戦前の日本も便利とは思わなかったがここは不便…でもないか、なんにも無いし、よく分からないし



 今を楽しむしかない!



 なんとなく足が軽くなった気がする、走るのもいいな!



「待たせてゴメン」


「どうしたいい顔して!いい女でもいたか?」


「いやデブなオッサンしか居なかったけど」


「なんだ、じゃあ行くぞお前ら」


「「「はい」」」




 サンーアと呼ばれている養成所から教会まで約3時間浜沿いを歩くと徐々に岩混じりの海岸線に変わる

 右手の緑色の海から白い岩にチャプン、チャプン、と優しく水が当たる

 海の美しさもさることながら左側の急斜面な岩山からは鳥の声が聞こえる、とても長閑だ

 石畳の道が続く、数十メートル毎に石の材質も色も変わり目を楽しませてくれる


 休憩から2時間程経ったところで再度休憩し大麦おにぎり(鰻の蒲焼き入り)を頬張り水を飲んだ


 またすぐに出発、更に2時間同じ光景が続く

 たまに川を歩いて渡ったりオココが雉を射止めたりした程度でなんにも代わり映えしない


 夕方4時近い筈だがまだまだ日は落ちない


 徐々に岩浜から砂浜に戻り3時間後、ようやく地平線に町が見えてきた


 町に着いたのは大体夕方8時頃、だと思うがまだうっすら明るい

 カヒームは街の入り口で松明を借りてスタスタと町中へ歩き出す、どうやらどこにハルゲニス達が居るのか分かるようだ

 町の広場の中心は2階建ての宿屋がひしめき合い、中央には少し背の高い円形闘技場があった


 円形闘技場から伸びるように放射状に広がる道を見て回ると宿舎が有ったらしく進んでいく



「皆覚えておけよハルゲニスのマークは○の上に✕を付けたマークだ、いいな?」



 それ地図記号の交番じゃないですか!覚えやすくて良いけどもね


 ハルゲニスのファミリアグラディアトラからは総勢11人が来ている、ハルゲニスは1人部屋、マリーカとオニシフォロスはまだ来ていないが同部屋、イフラースとルクマーンも同部屋、チロは3人1部屋でギチギチだ



「俺はマツオとカスタノスと同じ部屋に行くぞ」


「カヒームはそれでいいのか?」


「いいんだよ、チロの頃もパロスで序列が低いときもこんなだったしな」



 部屋に行くと扉のない3畳くらいの土間の部屋に薄く藁が引いてあった

 寝る前に腰掛けてカヒームに色々聞いてみた



「カヒームはグラディアトルになってどれくらい経つんだ?」


「4年、いや5年になるか」


「もう借金は返したのか?」


「まあな、自分を買い戻したよ」


「結構掛かるのか?」


「3年は掛かったかな

 とりあえずは生き残って且つ5回以上勝つことだな、俺みたいに女受けがいいと金貨をいっぱい貰えるぞ」


「自分で…まあ顔が良いのは認めるよ

 間違いないな」


「あとはどれだけ自然に接戦に見せるかだな」


「あっさり勝っちゃ駄目なのか?」


「駄目だな、ギリギリがいい」


「盛り上がるからか?」


「そうだ

 仕合は今回が初めてだったな、順番を話しておこう

 チロの仕合は最初に名前と所属のファミリアの紹介がされて全員入場だ、パロスになると音楽の中で一組ずつ登場になる

 仕合はまず木剣でお互いに軽く打ち合って体を温める、このときにお互いの技量を計る

 同じくらいならそのままでいいが、格が明らかに違うときには木剣でやり合っている間に合図を決めて見せ場作るようにする

 例えば剣を弾かせるタイミングとかを話し合うのさ」


「『八百長』だな」


「マツオのところはそう言うのか、まあそういうことだ

 次に経歴と対戦成績、特徴的なところを説明される、マツオは剣一本とか色々言われるだろうな」


「なんか手の内明かされるようで怖いな」


「大事なことは言わねえよ

 でな、自分専用の武器が運ばれてくると切れ味を試すんだ」


「折られでもしたら大変だな」


「その時は折ったやつを殺しても良いことになってるから心配するな、仕合には負けるだろうが助命されるしよ」


「死なない程度っても五体満足が良いんだがな」


「それは技量次第だ、1時間近く戦ってギリギリ勝つと丁度いい

 今回はチロだし基本的には助命される、相当汚い手を使っといてボロ負けすると投石で死ぬ可能性があるから気を付けろ」


「それはしない…と思う」


「まあ二人とも頑張れ」



 カヒームに肩を叩かれ、カスタノスの肩を叩こうとして寝ているのに気付き自分もゆっくりと頭を下ろして横になった

 チラッと見えた腹の傷はもう一本線になって消えかかっている、回復速度が早い


 明日以降で技をまた磨いて3日後に十分勝てるように練習しようと自分に誓い眠りについた




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