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敗残兵、剣闘士になる  作者: しろち
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敗残兵、剣闘士になる 010 タダ飯喰らい


 ルドゥスでの一日は訓練から始まる


 朝練習、朝ごはん、日が陰るまでは自主練習、日が陰ってきたらまた練習、夕食、その後は灯火の中での実践練習だ


 この夜の油灯で如何に影を作るか、影関係なく攻略できるか、影の中で対処が出来るか、影を如何に上手く使えるかが重要になる


 マクシミヌスは結構お年を召しているらしく夜の練習は上手くできないとのことイフラースやカヒームが代わりに教えてくれる場面もあった



 チロ(見習い剣闘士)の時には土地の有力者の集まりだけでなく見世物小屋なんかでも剣闘をさせられることもあるのだとか


 その時には油の壺が多くても二個、最悪一個のときもあるそうだ


 今回の有力者の会合では4本程度は灯っているだろうとの話だ

 チロ同士の剣闘では練習用の木剣が主だが稀に許可が出て真剣での勝負になることも有るのだとか


 

 剣や槍の先で光を反射させたり、音を立てるのが有効なんだそうだ

 夜の砂浜で動きながら剣先を追う、剣闘士の輪郭を追うなどの練習に距離感の掴みにくくなる黒塗りの武器での立ち回り練習を実施した


 ババンギも一緒に練習をしたし、セバロスとニゲルも付き合ってくれて濃厚な3日間を過ごせた




 遂に決戦当日の朝を迎えた


 今回は日本式に木刀一本の予定でいる

 今後日本刀が手に入れば武士スタイルで、手に入らないのであれば何かしらで代用もしくは新たに武器を考える必要があるがもう少し待ってもいいかなと思う

 チロは1年くらいのんびりと経験を積んでからパロス(ハルゲニスのルドゥス内での武装集団)の序列に加わることになるのでのんびり考える時間はありそうだ




 朝のお通じを済ませて瞑想をする


 ちなみに排泄物は個別の壺にする、壺は回収するものがおり持っていって乾燥させてから肥料にするのだとか

 それについてはしっかり虫と菌の駆除をして欲しいと本気で思っている



 最近は心象の敵が増えたセバロス、ニゲルは勿論、ババンギの動きの早いこと早いこと!左右へのステップも早く、踏み込みの時の重心移動がグッと下がってから出るもんだから剣の速度も早く避けきれず木刀で弾く必要がある

 木刀なら問題なしだが真剣の場合は刃が欠けるだろう、旅の一座の芝居みたいに刃と刃を当ててキンキンやってたら大抵がノコギリになるかナマクラなら折れる

 同田貫ならまだ耐えるだろうかそれでも無理がかかるだろうな




「刃で防がず、いなす」



 来る方向が分かれば刃を置いておけば良い、後は動きを相手の力に合わせて対応すればいい


 重心の位置は保ちつつ、軽く転がるようにだ



「昔、やられたな~苦手なんだな」



 古武術の基礎であり奥義と言われる重心の移動、長兄は軸芯は棒ではなく点で作れと言っていたな

 棒で作れれば未熟者から上がるが免許皆伝になるには点にしなければならない



「独楽ではなく、球になるのは難しい」



 そこからは何も考えずに自然に任せて体を解き放ちただただ一体となっていた





 日が天辺越えて降り始めた時に声がかかった



「マツオ、行くぞ準備しろ」


「はい」



 ババンギに声をかけられ紐巻きの革靴を履いて木刀を持ち上裸のまま柵の出口まで移動するとハルゲニスと武装したドライオスがやって来た


 ドライオスの剣は太い長剣、赤塗りの盾は円で大きい、赤い兜に赤い鎧を着けていた



「ドライオス、カッコいい」


「そうか?あんまり好きじゃないんだがな」



 足がいつもの棒ではなく足の形をしている装飾義足になっているのもなんだか違和感だがパッと見ればちょっと足の悪い人くらいにしか見えない



「帰りは夜中だからな、念のためだ、進め」



 ハルゲニスからも念のためという話だったし、ババンギに聞いても治安が悪いわけでは無いらしい

 ただし奴隷商を逃げ出した戦争奴隷などが憂さ晴らしをしにくる時も稀にあるらしくそのためだという



 道すがら住民から「ホルデアリウス!」と何度か声を掛けられた「大麦食い野郎!」という悪口でもあるし、パッと見て分かるくらいに「良い体してるぜ!」という誉め言葉でもあるとドライオスが言っていた


 個人的には皆も米食文化になれば良いのになと思うくらいでしかない

 「米食い野郎!」と日本で言われたら「タダ飯食らい!」と言われてる感じで嫌だけどね




 影が伸び始めた頃に町の中心地に着いた、石造りの家の門前には槍を持った衞士がいるがあくびをしているくらいで平和だ


 ドライオスとハルゲニスは建物の奥に進んでいったがババンギと二人で門をくぐってすぐの手水処で待たされることになった


 時間があるので革靴を脱ぎ足を揉む、ババンギも同じく革靴を脱いだ、アフリカに居たときも裸足の生活だったらしく石を踏むくらいじゃ痛みは感じないらしい


 靴を脱いで待っているとお使いの人に声を掛けられ待機の場所に案内された


 物置みたいな部屋にババンギの剣と面が置かれていた

 ババンギは両手に剣を持って闘うディマカエルというグラディアトルだ


 大分と逸脱した動きを機敏にするもんで慣れないと翻弄されて終わる

 左の手首から肩まで革を重ねた腕鎧であるマニカを装着、右手には反りというか抉りのある少し長い剣のファルカタを持ち、左手には短い曲剣で反りの内側に刃のあるシーカを持つ

 面は黒塗りのちょっと細長い、人間の顔を簡易化したような模様の堀込みがあり目の除き穴だけが丸く白で塗られている



「怖いな~」


「だろう?」



 ハッハイヒーイヒーの独特の笑いをしながら二人で体を動かして温めておく




 日が沈み外は暗く涼しい風が抜ける頃、ようやく声がかかった



「出番だ、マツオ」


「はい」


「負けるなよ」



 呼び出しに来たドライオスの一言にニヤッとした微笑みで返す


 負ける気は更々無いが相手次第だろうな~どんなんかな~


 緊張感薄くドライオスの案内について歩を進めた



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