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「では、亜人種でお願いします」
そう言いきった私に、光は些か驚いたようだった。
「……宜しいのですか?」
震える声で是非を問うてくる。
だが、否やは無かった。
その旨を伝えると、感極まったかのように声を震わせる。
光を震わせたり、声を震わせたり、色々と忙しい光だ。
「ありがとうございます!」
「随分大袈裟ですね」
「あ、すみません。せっかくサービス開始日だと言うのに、皆様思ったより亜人種を選ばれなくて」
「そうなんですね」
「ええ。ですから嬉しくって、つい」
私感激です!とばかりに体を震わせる光。
表情など見えないのに、随分と感情豊かだ。
それにつられ、なんだか良い事を行った気分になる。
「では、続いてステータスの設定に移らせていただきます!」
心做しか元気になった光に対し、しかし待ったをかけた。
「その前に」
「?」
「アバター設定を行えませんか?」
「あっ」
忘れられていた。
◆
現在の私の身体は、本体登録時に行った生体スキャンを元に作られた、現実とほとんど遜色無いアバターである。
いかにネットゲームとはいえ、素顔を晒すのは色々と拙い。
私は光の助言を聞き入れつつ、現実のそれとはわからないようにカスタマイズしていく。
とはいえビジュアルが直接ステータスと関係する訳無いので、サクサク決めていく。
最終的に、髪を銀に近い白に、目を濃淡の濃い藍に変更し、全体的には小柄で中性的な顔立ちとなった。
「変更はこれで宜しいでしょうか?」
「はい」
凝ろうと思えばかなり細部までいじれるのだが、あまりにも項目が多すぎて断念した。
そんなセンスは持ち合わせてないし、実際始めたら一人称視点になるから関係ないし、と心の中で言い訳をする。
「綺麗なお顔ですよ!」
光はしきりに褒めてくれるが、どうせマニュアルだろう。
次に移る。
「では、次こそステータス設定です。と言っても、そこまで複雑ではないのですが」
「説明お願いします」
これもまた、種族設定の時と同じように説明を貰う事にする。
「このゲームは基本、レベル制では無く、スキルと技能制を選択しています
「レベルとは、魂のレベルであり、存在値を上昇させる事になります。が、これは特殊なのでここでは割愛させていただきます
「スキルとは、発動するだけで決まった効果が発現する、特殊な力のことです。その分コストと呼ばれるものがあります
「技能とは、行動の補佐をするものです。技能を持っていなくても該当する行動は取れますが、結果にボーナスが入りません
「……成程」
成程。これは1度では覚えきれないやつだ。
そう判断した私は半分聞き流した。
まぁ、おいおい覚えて行けるだろう。
熟練度がどうとか、スキルレベルがどうとか言っていたような気もするが、よくわからなかった。
「では、スキルの選択をしてください」
「やっとか」
「……ちゃんと聞いてました?」
おっと危ない危ない。
危うく本音が漏れかけてしまった。
閑話休題。
さて、スキルである。
どうやらスキルはスキルスロットと呼ばれるものに設定するらしい。初期は3つあった。
そしてスキル所得可能一覧を見せられるが、……かなり多い。
これは自身を優柔不断であると自覚する私には難門となりそうだ。
Tips:スキル-01
スキルには“スキル熟練度”と“スキルレベル”があり、“熟練度”を一定以上上げることでレベルが上がる。レベルが上がると、スキルの威力が上昇したり、派生スキルを覚えたりする。熟練度が上がると、スキル内容の一部が変質したり、コストが軽くなったりする。
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