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My hack  作者: 面子宿
19/30

拾玖

19です。

「はぁっはぁっ...」


百舌は辺りを見渡す。

知ってる場所だ。


(ここは...古本屋の前...っ)


直感的にまずいと思い歩き出す。

走る体力はすでに残っていない。


「色々起きすぎだろ...」


そう文句を漏らしながらも歩き続ける。

足にふと痛みがする。

強い痛み。

地面に腰をおろす。

もう歩けない。


「セイは...どこなんだ?」


あの時、姿を表すことができないと言っていた。

何かが起きてるのか。

いや、既に起きてるのか。

非現実への賽は投げられている。二年前に。


「戻って来ない方がよかったのかな...」


「僕は言ったはずだよ。何があっても弱音を吐くなってね。」


懐かしい響きがする。


「セイ...?」


「約束くらいは守ってほしかったね。言霊だと言ったろう?」


「何で今まで姿を表さなかったんだ?」


少し憤りを含んだ声。

セイを信頼している証拠だろうか。


「その理由は説明してるだろう。言霊だと。」


「言霊...?」


「百舌、僕は君の感情を媒体にしてるんだ。と言うことは君の感情の強さが私の強さと言うこともできる。だから弱音を口に出せば意思も弱くなる。そういうことだよ。」


「弱音は今まで出さなかったじゃないか。今の今まで」


「百舌、鳩とアオサギを愛せてないだろ?」


「は?」


「言ったろう?僕の能力は博愛だと。愛のないところに愛は訪れないよ。お陰で肉体を維持するのがやっとだ。」


「愛せるわけ...ないだろ?恨んでない?あぁ、そのつもりだった。だが、俺は人間だ。聖人でもなければキリストでもない。いざ対峙すると...無理だ。」


溜め込んでいた弱音が零れる。

隣人を愛せよなんて戯れ言だ。

あんなやつらを愛すなんて無理だ。


「君はどうしたいんだ?」


どうしたい?当たり前だろ。

そんなふざけたことを聞かないでほしい


「元の生活に戻りたいに決まってんだろ。何でこんなことをしなきゃいけないんだ。俺は何もしてないだろ?」



「あぁ。確かに君は何もしてない。何かをする力がない。だから、力がほしい。君はそう望んだんだろう?」


「望んでない。」


そんなことを望んだ記憶はない。

セイは何を言っている。


「いや、君は僕に力を願った。だから僕は君を媒体にしたんだ。」


「分からない。なんなんだよ。何でこんな目に。」


セイに会って緊張がほぐれたのか弱音が、思いが止まらない。

セイに敵意がない。

それだけで安心するには十分だった。


「分からないだろ?だが、君が行動しない限り君の平穏は訪れない。誰かが何とかするなんて考えは捨てて欲しい。」


「お前は俺にどうして欲しいんだ。」


「君の幸せをつかんで欲しい。前も似たようなこと言わなかったかい?」


「そのために感情を...愛を持てと?」


「元はといえば、君が鳩に見初められたのが原因なんだし、愛の責任は愛でとらなきゃ」


「意味が分からないな。」


体が少しずつ落ち着くのを感じる。

パニック状態が解けてくる。

セイが口を開く。


「ところで、君はその感情といつ遭遇したんだ?」


「その感情?」

読んで頂き感謝です。

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