拾壱
ハイペース更新まだまだ続きます。
(ここはどこだ。)
百舌は思う。
体が無重力にいるような感覚。
自分が自分じゃ無いみたいだ。
現在の百舌は記憶を変えられているまま、記憶を取り戻している状態。
いわば二つの記憶が混在している。
変えられていた人格からしても、元からの人格からしても、自分のなかに異物が混入しているようなイメージ。
今の時点でもおかしくなりそうだが、おそらく記憶を取り戻したといっても、全部では無い。想像だが...
これから、時間が経つにつれて記憶がより完全なものになって、さらに混乱すると思うと考えただけで目眩がする。
嫌悪しているものを愛している。
好きな事が嫌いである。
(どちらがもとの自分でどちらがあとの自分?)
(本当の俺は、どっち?)
(もう考えるのも疲れた。)
やめよう。諦めよう。
(本当にそれでいいのか)
(別にいい。ここは何もない。なにも考えないでいい。俺はここが居心地が良い。)
声が聞こえる気がする。
気のせいだろう。
自分しかいない。
だが、その声はだんだん強くなって、ついにははっきりと聞こえるようになる。
「へぇー...諦めるんだ。」
「あぁ...いい。めんどくさい」
「僕が君の体は好きにさせてもらうよ。身体欲しかったんだ。君が戻る気がないならしょうがないだろ。」
「あぁ、しょうがないな。」
無気力。これは多分鳩が作った俺だろう。
別にいい。そんなこと身体くらい好きにして欲しい
「君に過去を見せたのは間違いだったかな。」
「どうだろな」
心がざわつく。
「君の意思はこのくらいだったんだ。」
「...このくらいだ。」
「たかだか二年間の記憶に支配されるんだ。」
「...あぁ」
ざわつく。酷く。より一層
「君は誰よりも深く、誰よりも広く、この感情を持っていると思ってたんだけどな。」
「うるさい...セイ」
「思い出せ。君の本質を。」
騒ぐ。全身が。
揺らぐ。人格が。
自分の中に、奥深くに眠っている感情が掘り起こされる。
「君の本質は」
「俺の本質は」
「愛」
作られた百舌がその瞬間姿を消す。
「思い出したようで何よりだよ。」
「...セイ」
「でも、ごめんね。この身体は僕のものだ。」
百舌に戦慄が走る...
二つの人格が混在ってやばそう。