決意
俺は急いで廊下に出ると、右側からレーネが走ってきた。
「付いてきて!」
レーネは切羽詰まった形相で叫ぶように言った。
俺はレーネを先に行かせると、後から付いていった。
そして、1つの部屋に入った。そこは、
俺も窓を見ながらその説明を聞いていた
「いけない!早く避難しないと!」
レーネは、焦りながら言った。二人が玄関へと走っていったためついて行った。
ルビーさんは、途中に立て掛けられていた剣を一本乱暴に取って俺に向かって投げてきた。俺は、咄嗟にそれを受け取った。
「その剣を使って自分の身を守りなさい‼︎」
俺は、剣なんて使ったこともないし、帰宅部だったため剣道をやったこともなかった。
「でも…これはルビーさんが持っていた方がいいんじゃ…」
「私には、自分の剣がある!」
俺が全てを言い終える前にルビーさんは、簡潔に答えた。
国民全員が剣を持っていることを思い出した。
「どこに避難するんだ!」
「中央!騎士団がいるところの地下よ!」
ドッカァァァァァン
また、大きな音がした。
「ああっ!壁がっ!」
『ベンデーレ』の壁には、防御術式あがはられており、簡単には、壊れないようになっていた。
あれを壊すには相当強い衝撃を与えなければ壊れないらしく、吸血鬼が強いことを意味していた。
玄関の外に出ると、たくさんの人が走っていた。
たくさんの悲鳴が聞こえる。
坂の下の方を見ると、黒い物が高速で動いては、止まり、一際大きい悲鳴をあげたかと思うと、またさらに、別の声が聞こえた。
俺たち3人は、すぐに走り始めた。
「二人とも下の方に何かが!」
「えっ⁉︎」
二人は、同時に驚いた声をあげた。
「あ…あれは、吸…血……鬼」
レーネは、下の方を見て、足を止めた。
「お嬢様‼︎ダメです‼︎」
ルビーさんは、叫んだ。
レーネは、ルビーさんの叫びを聞かずに腰に携えた剣を抜き、坂を下り始めた。
「あなたは、避難しなさい‼︎」
ルビーさんはレーネを追いながら、俺へとそう言った。
俺は、怖かった。たくさんの悲鳴が聞こえたから。俺があそこへ行ったところで、役に立たないだろう。
俺の頭にレーネの顔がよぎった。
彼女は、とても優しかった。最初、あそこにいた人が俺じゃなくても、きっとレーネは、同じ行動をしていたと思うし、今と全く同じ状況だっただろう。
でも、俺はそんなレーネのことを気に入っていた。
俺は、いままで『好き』という感情を持ったことがなかった。
でも、今なら分かる。
俺の、このレーネに向けた感情こそが『好き』だということを。
結婚したいわけではない。恋人になりたいわけでもない。
ただ…この感情は、自分の胸の内に秘めて、自分の勇気の源となるだけで良い。
「レーネを助ける!」
足は…自然と動いていた。