プロローグ
2078年9月13日、日本の大手企業レフス社から「リリスガイド」という名の瞬間移動装置の開発が発表された。瞬間移動の方法は、その装置の中で作られる特殊な空間に物体を設置し、その物体を1度データに置き換え、そのままもう1つの瞬間移動装置に送り到着先で、データからまた最初の状態の物体に戻す、という1連の動作で瞬間移動は成り立っていた。人々はこれを"転移"と呼び、実用化していった。
また、転移の際に使われる電力が少ないおかげで、それにかかる費用も少なく、お手軽な値段で転移が出来た。この画期的な開発を日本だけでなく、世界各国が取り入れていくのも、そう時間はかからなかった。
もちろんメリットだけではない。自動車産業や、鉄道会社、航空会社など、移動に関わる会社、産業は大きな打撃を受けた。瞬間移動装置という名の通り、瞬間で移動し、なおかつ経済的にも優秀となると、今までの移動手段に関わる会社、産業は適うはずもなく、自然と廃れていった。
だが、このようなデメリットは可愛いものだった。
日本で使われていたリリスガイドの自律プログラムに異常が発生し、転移させた物の形が転移前と少し変わってしまうことが起きた。
人間で言うと髪の毛が1本0.01mm程度短くなるような変化であり、このようなささいなことを気にする人はほとんどいなかった。しかし、このほとんどに属さない人は少なくはなかった。
だが、突然ある日を境に、転移した人の中には片腕が別のところについたり、心臓が外に出ていたり、体の四肢が胴体に付いていなかったりなどということが度々起こるようになった。
「彼ら」はリリスガイドの特徴である物のデータ化、そこに目をつけ、リリスガイドの形状記憶の自律プログラムを暴走させたのだった。
しかし、その行為が「彼ら」のとある目的の幕開けだったことは、その時は知るよしもなかった。
その目的の内容は、リリスガイドがデータ化した人のデータ、これを別のものに書き換え、新たな人類を造ることだった。例えば人の腕のデータの皮膚のデータを"鉄"に変える。そうすれば鉄でできた腕になる、ということだ。
もちろん鉄の腕などになってしまえば本来の腕としては全く機能しない。肘や指の関節などは曲がらなくなってしまうからだ。
そんな幼稚な考えも虚しく「彼ら」はそんな簡単なことを見逃すほど愚かではなかった。
リリスガイドの自律プログラム、そこには物質形成プログラムが含まれている。それは、1度データ化した物を適した姿に再度形成するプログラムである。人のポケットに入っていた携帯と一緒に転移し、それが体の1部となるのを防いだりするための機能だ。「彼ら」はそれの裏を付き、最初からその携帯を人の1部と認識させることにより、携帯を人と組み合わせることを考えたのだった。つまり鉄という物質が元から人の腕だと思わせることによって、鉄の特徴を生かしたまま腕として機能することが可能となってしまったのだ。
「彼ら」はリリスガイドに新たな人類を作る為のプログラムを組み込んだ。リリスガイドにはそれ専用のネットワークのようなものが存在する。お互いの機器の状態を常に送受信し、転移をより完璧にするためである。この機能により、世界各国のリリスガイドにもこのプログラムが組み込まれていき、大勢の人が新たな人類になってしまった。知らずになってしまう者もいれば、意図的にそれになろうとするもの、そして終いには、「彼ら」自身も自らを新たな人類にしてしまった。
彼らは自分達の組織を「レボルナイト」と名乗り、新たな人類を「オリジン」と名付け、時代遅れで新たな世界に邪魔な存在でしかない旧人類を抹消し、「オリジン」のみの世界を創ると宣言、旧人類に攻撃を仕掛けた。
旧人類はこれに対抗するため、データ化した武器に擬似的な思考を組み込んだ兵器「アーマード」を用いて「レボルナイト」に対抗を開始した。
まるで瞬間移動装置の開発を祝うかのように、まるで新人類の誕生を喜ぶかのように、戦火の輝きが盛大に巻き起こった。
※文の始めの1マス空けるやつが出来てるか分かりません。出来てなくてもあんまり気にしないでお読みください。