「道を探そう」
短編の予定なのでそろそろボス戦ですよ。
第五話「道を探そう」
前回までのあらすじ
①生物学者のシンジが仲間に加わった。
②ボブッティブとジョナサンを救った、政府直属の特殊部隊に所属する人のコードネームはサイレントバーサーカー略してサイバサだった。
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サイバサという最高に呼びやすいコードネームを教えてもらったボブッティブとジョナサンは、これで気兼ねなく名前を呼べる喜びを噛み締めていた。
「よーし、サイバサさんを助けるために頑張るぜ俺!」
「俺も助け出された身。サイバサさんを早く見つけなくては」
二人のやる気は十分だ。
「でも待って二人とも。そのサイバサさんもここにいないわ。それっておかしくないかしら? ここまで来たら、もう出会ってもおかしくないでしょうに」
ブレイドの意見は正しい。そう、一行は二階すら踏破してしまったのだ。シンジと出会った場所が、二階の果てだったのだ。
「いいえ、それは違いますよブレイドさん。……サイバサはこの先に進んだのです。隠し通路を使って」
「「「!?」」」
三人は驚き、目を見開いた。……隠し通路、そういったものを完全に見落としていたことに気づいたからである。
「じゃあシンジ博士。貴方はその先でサイバサさんとはぐれたの?」
「そうですね。とても強いやつに襲われまして。私は後ろにいたのでなんとか元来た道を戻ることができましたが……」
言ってシンジは目を伏せた。
「オイ待てよ! するってーとサイバサさんは死んじまったってことかよ!? 話が違うじゃねーか!!」
ボブッティブはシンジの胸ぐらを掴んだ。
「……落ち着いてください。彼はそこまでヤワじゃありません。ニンジャですから」
「あ? サイバサさんニンジャなのか? ……そっか、なら大丈夫か」
ボブッティブは冷静さを取り戻した。
ニンジャは、日本で特殊な訓練を受けた者だけがなることができるという凄まじきソルジャーである。様々な任務をこなすためのスキルを持っており、その能力は汎用的にして最強クラスだ。
活動を全世界に広げてからは要求される技能も増えたため……少数精鋭、或いは一匹狼のフリーランスとして活動する者が多い。当然、その全てが一線級の手練れである。
サイバサはそんな凄まじいニンジャであった。ゆえに三人はシンジの言を信じることができた。
「よかった。信じていただけたようですね」
シンジは微笑んだ。
「それで……シンジ博士。その隠し通路というのはどこにあるんですか?」
ジョナサンは話を本題に戻した。
「はい。では案内します」
シンジはそう言って壁を押した。
「な、なんだァーーーーッ!?」
ボブッティブはあまりの事態に大声で叫んでしまった。
なんと、今まで行き止まりだと思っていた壁はただのベニヤ板だったのだ。
「こ、こんな簡単なトリックに気がつかないなんて、俺たちはなんてバカなんだ……」
ジョナサンは少しだけショックを受けた。
「無理もありません。エイリアンの技術によって、ベニヤ板はものすごく硬くなっていたのですから。コンクリートの壁だと勘違いするのはいたって普通のことですよ」
シンジのフォローがあっても、にわかに信じられないジョナサンだった。
ベニヤ板の先に続いていたのは道ではなく地下への階段だった。そう、一階を無視して二階から直接地下に繋がっている階段だったのだ。
「ついにクソッタレどもとの対面の時だなジョナサン」
「ようやく胸糞悪いクソ野郎どもをぶちのめせるわけだなボブッティブ」
二人の闘志は十分だ。この先にきっとサイバサがいてくれるという、安心感も相まってのものだ。それだけ二人にとってニンジャは大きな存在なのだ。
かつん、かつん、と。階段を降りた先にあったのは、長い通路とその先にあるエレベーターだった。
そう。この廃病院はツインタワータイプ。なんらかの理由により、地下からのみ東棟へ移動ができる構造だったのだ。
「そうだったわ。全てのフロアを見ても明らかに壁だったからうっかりしていたけれど、ここはツインタワータイプの廃病院。本来東棟に行けなければおかしいはずだったのよ」
ブレイドは頭を抱えながら言った。無論、左手のみである。右腕はエクスカタナなのだから。
「どうもこの廃病院、元から何か特殊な細工をして東棟への関心を薄くさせているようね……一気にきな臭くなったわ」
魔術的な作用がある旨を、ブレイドは付け加えた。
「エイリアンの次は魔法かよ! メガ盛りだなオイ!!」
ボブッティブはウンザリしていた。まさかここまで複雑な事態になるとは思わなかったのだ。
「だがボブッティブ。それでも俺はやる。クソッタレエイリアンを倒したいんだ」
「わーってるよジョナサン。俺だって同じ気持ちさ。安心しろって」
「仲がいいのですね。……さて、では早速エレベーターに乗りましょう」
一行は、エレベーターに乗り込んだ。行き先はいきなり屋上だった。
「あの、シンジ博士? 屋上になっていますが、合ってるんですか?」
ブレイドの問いにシンジは頷いた。
しばらくすると、電子音とともに扉が開いた。
そこに広がっていた光景は、ボブッティブとジョナサンの想像を超えたものだった。
外にはその光景は見えていないようだ。エイリアンが展開したと思われる光学迷彩めいたバリアが張られていたからだ。
「こ、これは……!」
ブレイドが驚きながら言った。
「ニンジャの持つ隠れ蓑……!」
なんとこのバリアは、エイリアンではなくニンジャが展開したものだった!
そしてその巨大な隠れ蓑の中で繰り広げられている激闘! これこそが驚天動地の光景なのだ!
UFOから飛来した五体の5メートル越えのロボット。それは見た感じダイヤモンドで構成されているようだったが、それをサイバサ——あのサイバサがいとも容易く一体一体丁寧に破壊していた。無論、必殺魔剣『霧魔・苦理』は習得していない。あれは一子相伝ゆえに。
ではどのようにしてサイバサはロボットを倒しているのか? その答えは比較的現実的なものだった。
ロボットの関節部分、そこは接合面なためかダイヤモンドで構成されていなかった。サイバサはそこを狙ってニンジャカタナによる切断を行なったのだ。
結果として、五体のロボットはいとも簡単に機能を停止した。残るはUFO内のエイリアンだけである。
「……お前。なぜ戻ってきた?」
戦闘を終えたサイバサは、そう言った。
「恩人を置いて逃げられるワケないですよ! 助けたいと思ったから戻ってきたんです! 頼れる仲間もいます!」
ジョナサンは思いの丈を叫んだ。
「いや、確かに君にも言いたいことはあるが……今のはだな——」
サイバサが何かを言いかけたその時、背後のUFOより主砲らしきものが姿を見せ——そして勝手に爆散した。
「甘い、甘すぎるぞ。昨日食べた派手な色のグミより甘い。空中には大量の『機雷ニンジャエディション』をセットしておいたのだ。もう一度撃とうとしてみろ、今度こそそのUFOが爆散するぞ」
「す、すげえ……」
「ああ、まさかここまで強いとは……」
ボブッティブとジョナサンは、サイバサのすさまじき強さに目を奪われていた。
「これがニンジャ……我が一族が必殺魔剣を生み出さなければ太刀打ちすら叶わなかった存在」
ブレイドもまたニンジャの強さに戦慄していた。
そしてついに、UFOからエイリアンが飛来してきた。その数15。ここの屋上で戦うのなら妥当な人数だ。武器もハイテクっぽいビーム兵器を装備している。ボブッティブやジョナサンの武器より強そうだ。
だが、それがどうした。——ボブッティブはそう思い、既に発砲していた。
ジョナサンも同様に散弾を撒き散らしていた。
鮮オイルを撒き散らしながら倒れる数人のエイリアン。
やや後退するエイリアン戦闘部隊を前に、ボブッティブは口を開いた。
「何だ、やっぱりそうか。エイリアンだろうがなんだろうが——銃で撃ったら大体倒せるっつーこったな」
ボブッティブは不敵な笑みを浮かべている。
——ついに、戦いの時が来たのだ。
というわけでボス戦ですよ