しゃべらない人は何も考えていないんだろうか?
「しゃべらない人は何も考えていないんだろうか?」
と僕はつぶやいた。
「あ、はじまった・・・」
と美少女剣士のミカがつぶやいた。
「うん・・・」
と小さい微小じ魔法使いのリンがつぶやいた。
「そうね。今回のはどんな話かな・・・」
ともう一人の魔法使いのカナコも言った。
僕らは今「ブラックタイガー」と戦っていた。
黒い姿をした、虎だ。
多分特殊な能力を持っているのだろう。
しかし僕の興味は、しゃべらない人間に向かっていた。
「それは、さすがに考えているんじゃない?私も、考えたことすべてを口にするわけじゃないし・・・」
と美少女剣士のミカが、ブラックタイガーの攻撃を処理しながら、僕の疑問に答えた。
「なるほど、そうだよね。でも、その言葉に出す部分と出さない部分ってどのくらいの比率なのだろうか・・・」
「比率?」
と美少女剣士のミカが聞き返した。
「そう、考えている部分と、口に出している部分の比率があるはずだよね。50%50%とか。」
「ふむふむ?」
「つまり、一言も話さない人は、たくさん話す人に対して、考えている量も少ないのではないか?という説」
「なるほど、おもしろいけど・・・それだと気になることが一つあるわ」
「ふむ。なに?」
と僕は聞いた。
「それだと聞き取ることもできないんじゃないかしら、同じくらいの思考をしていないと会話って成り立たないと思うの。似たようなことを体験したり、考えたりしていなかったら、話を聞くことも難しいんじゃないかしら・・・」
「なるほど、おもしろい。」
「ここで、ひとついい例があるよ」
「いい例?」
「そう、ベビーサインだ。」
「ベビーサイン?赤ちゃんのサインってこと?」
「そう、これは最近育児でブームになっている方法で、話すことができる前の子どもにサインを覚えさせるということだ
」
「へ~。そんなことできるんだ?」
「うん、僕も動画で見ただけなんだけど、美味しいとか、トイレに行きたいとか、お腹すいたとか、そういうのを、言葉を喋ることの出来ない子どもが、伝えることができるんだ」
「へー!おもしろいわね!」
とミカが食いつく。
「うん、これによって、泣き出した子どもに、ご飯?トイレ?って聞くと、ジェスチャーで返してくれるようになるんだ。言葉を発することが出来ないけど、ジェスチャーを出すことはできる、という時期が、わずかだけどあるんだね」
「へぇぇぇ、面白いわね。つまり、考えることはできるし、言葉を聞き取ることはできるけど、『発話』ができない、という時期が存在するのね」
「そう、考えるし、聞くことができるけど、発話することが出来ないという状態があるということだ。つまりそれはおとなになっても。だから話さない人は考えていないわけではない」
と僕がまとめた。
「さて、すっきりしたところで・・・」
「倒そう」と聖剣『アロンダイト』を振った。
その聖剣は光り出し、この世界最強の力を存分に発揮することになった。
ドカァァァァンという音と共に、『ブラックチーター』を倒したのだった。
「思考とアウトプットの関係については、今後も考えていく必要がありそうだ」
僕の思考と異世界の旅は続く。