遅刻するのは人を殴っているのと同じではないのか?
「遅刻するのは人を殴っているのと同じではないのか?」
と僕はつぶやいた。
「ああ、また・・・」
と美少女剣士のミカが言った。
「うん、いつもどおり」
小さい美少女魔法使いのリンも頷いた。
「うん、これも昨日の話と続いてると考えると、わりと分かりやすいテーマかもね」
ともう一人の魔法使いのカナコも言った。
そう、僕らはいま『ラピッドタイガー』と戦っていた。
そもそもタイガーって速いきがするけど、さらに俊敏な虎のモンスターだ。
そして、僕の興味はもちろん、そちらではなく、遅刻に向かっていた。
「これは、昨日の流れからなんとなく想像がつくわ!」
とラピッドタイガーの攻撃をかわしながら、美少女剣士のミカが言った。
「お?」
と僕が聞く。
「これはわりとそのままよね。遅れた時間の分そのまま相手の人生を奪っている。それは暴力の性質と同じだ、という話でしょ?」
とミカが言う。
「そう、凄い!その通り!」
と僕が言う。
「それほどでもないわよ!!」
と、ミカはエッヘンと胸を張りながら顔を赤くしていた。
「そう、そういう感じだ。寿命が80年だとしたら29200日がその人の時間だとする。1日時間を奪ったら1/292000奪ったことになる。これは体重60キロだとしたら0.2グラム奪うことになるよね。一時間0.0083グラムだ。これは立派な暴力といえるだろう」
「まぁ、言いたいことはわかるけど、なんかちょっと無理やりな感じはあるわよね」
「そう?」
「やっぱり痛みがないのが、暴力とは違う点よね。痛みがないと、なんか堂々と怒りづらいというのかあるわよね」
「なるほど。でもまさしくそこが重要なところだと思う。痛みがないから、許してしまうんだ。痛みがあったら許さないのに、だ」
「ああ、言いたいことがわかってきたわ」
「そういう、特性をうまく使って人の時間を奪うという人がいて、これが現代の社会問題になっているんだ。ブラック企業とか」
「ブラック企業?なんかかっこいいわね」
「全然かっこよくないから」
と僕は笑った。
「現代社会は、残業代はかならず払わないといけないのに、それをしない人たちだからね。でも、弁護士の人たちの過払い金請求の次は残業代の回収になるから、これもどんどん減って良い社会になっていくのかもしれない」
「なんだか分からないけど、発展した国もいろいろ大変なのね。」
とミカが言う。
「さて、倒そう」と聖剣『アロンダイト』を振った。
その聖剣は光り出し、この世界最強の力を存分に発揮することになった。
ドカァァァァンという音と共に、『トルネードタイガー』を倒したのだった。
「嘘と遅刻は現代人が恐れる新たな暴力だよね」
僕の思考と異世界の旅は続く。