嘘は現代の暴力なのではないか?
「嘘は現代の暴力なのではないか?」
と僕は呟いた。
「ああ、またはじまった・・・」
と美少女剣士のミカがつぶやいた。
「うん、はじまったね・・・」
と小さい美少女魔法使いのリンが頷いた。
「そうね、でも今回はわりとわかりやすそうなテーマ」
ともう一人の魔法使いのカナコも言った。
だんだん彼女達も僕の思考についてこれるようになったらしい・・・。
もちろん今もモンスターと戦っているところだ。
『ビッグスピイダー』だ。
巨大な蜘蛛。
糸を破棄、長い手足を持つ。モンスター。なかなかの強敵だろう。
しかし、いまの僕の興味はそこではなく、嘘に向かっていた。
「嘘が暴力ってどういうこと?」
と美少女剣士のミカが、キイィィィンとビックスパイダーの攻撃をさばきながら聞いた。
「うん、僕がいた世界では、テクノロジーの進化によって、ほとんどの暴力がなくなっているんだ」
「暴力がなくなる?そんなことあるの?」
とミカが目を丸くして聞いた。
それはそうだろう。なにせいま、目の前に暴力があるからだ。この異世界では、テクノロジーの発展は進んでいなく世界は暴力にあふれている。
「まず、法律というものがある。殴ったら、牢屋に入れて隔離する。というシステムがある」
「ああ、それは、この世界にもあるわね!」
とミカが言う。もちろんビッグスパイダーの攻撃を弾きながらだ。
この世界にも簡易的な警察機構はあるのだろう。
「そして、その暴力を捉える機械が、一般的に普及した。監視カメラはすべてのお店に配備されているし、カメラはすべての人間が持っている世界なんだ」
「カメラってなにかわからないけど、なんだか凄そうね・・・」
とミカが驚く。
「そうなってくると、基本的には暴力は振るわれない。そんな世界で重要になってくるのは何か?」
「何かしら、人を行動不能にするなにかよね?」
とミカがさらりと言った。
「え・・・すごいね・・・天才か?」
と僕はミカに対して言う
「え?そう?されほどでもないけど!」
と顔を赤くして笑った。
「そう、そもそも、暴力が、その後のその人の時間を奪うという概念だよね。痛い。というのももちろんあるけど、それを取り除いて考えた時に、人の時間を奪うという要素が出てくる」
「ふむふむ」
「寿命が80年だとして、20歳の時に殺されてしまったら、60年の時間を奪った。と考えることができる」
「なるほど!」
とミカが言う。話がわかったようだ。
「嘘をつくことによって、人の時間を大きく奪うことができちゃうわけね」
「そう、そうなんだ。だから現代人は嘘を恐れている。ある年のニュースの上位三個が大きな嘘だったという年があるんだ。『学術的にないものをあると言った』『耳が聞こえるのに聞こえないと言った』『嘘をついてごまかそうとした』これがトップニュースになるのは、人類が嘘を恐れているからなんだ」
「なるほど、痛みを伴わない暴力と言うわけね」
とミカが言った。
「そう、今回も納得が言ったところで・・・」
「さて、倒そう」と聖剣『アロンダイト』を振った。
その聖剣は光り出し、この世界最強の力を存分に発揮することになった。
ドカァァァァンという音と共に、『トルネードタイガー』を倒したのだった。
「現代において、嘘は一つの暴力なのではないか」
僕の思考と異世界の旅は続く。