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marine

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マリネ。それは・・・

 「調子が良くないのなら、私が出ます。休んでください。」

 「・・・すみません。早く良くなりますので。」

 「でも、前回のように…『でも、動けるので出れます。』とか言わないでください。」

 「・・・はい。」

 「・・・それと、今度私が具合が悪くて頼んだとしても『大丈夫ですか?』とか聴かないでください。はっきり言って迷惑です。休めません。では。」

 「・・・・・・はい。」

 「おやすみなさい。」

 「・・・おやすみなさい。」



 こうして、僕は休みを貰うことにした。時々この仕事も向いていないんじゃないかって思う日もある。だけど、せっかくようやく面接で通った門。辞めるわけにはいかない。だけど、いつかボロが出そうで仕方が無い。それに、ツメを噛みながら弟の巣立つ姿を、後ろで眺めている。なおさら負けたくないという気持ちと、もうこれ以上頑張れない気持ちが交差して劣等感が漂う。

 先輩の言うとおり、話の冒頭であった『何ですか?』…ハッキリといえない自分に腹が立つ。こんなにも身が酸っぱくなるまで、寝れなくて冷や汗をかいて起きる朝もあったり、我慢できなくて握り締めている拳があるというのに、自分の気持ちに正直になれないのはどうしてこんなにももどかしいのだろう。



 あの電話の話から数時間後のこと、本来ならば出勤支度を完了している時間帯にメールが入った。


 「出勤したい?」




 「ふざけるな。」と叫んだ。これで何度目だ!!と怒りが募った。たとえ、僕に仕事に対しての自覚が足りなさ過ぎるにしても、そう尋ねられたら『出なきゃイケない。』という衝動に駆られ「出ます。」と返事をしてしまう。

 ただでさえ、前回も「代わりに出てもらったから、その分は私がこの日に出るね。」といっていたシフトに対して、「私、出勤して良いんでしたっけ?」と訊かれ罪悪感に押さえ込まれて、「出ますよ。」的なメールをしたら、「・・・いや、本来は私が出るって言ってたよね。だから、大丈夫だよ。休んでください。」と返事が来てた。



 僕は謝罪文と共に、返事をした。「休ませていただきます。私情な事ですみません。でも、ズル休みしたいわけではありません。」と。そのメール送る直前に、「あのメール撤回で。」と来ていたがそのまま送信した。そのまま布団に塞ぎこんでいた、自分は寝込んでしまった。


 寒さがやけに沁みる頃、携帯に一通のメールが残されていた。



 「次回、また『出ます』とか『やはり休みます』とかメールを寄越すようなら、上司に報告します。では、休んでください。」あのメール送ってすぐの返事だったようだ。

 もう、怖いものがなくなった気がする。返事には、『どうぞ、クビにしてください』と言わんばかりに、『はい。わかりました。』とだけ書いて、携帯を閉じた。



 その後に、ツーッと何かが鼻から垂れ落ちた。

人生って、いったい何なのか。

それさえ解れば、僕は泣けるような気がする。

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