grille
grille
【名詞】【可算名詞】
1(門・扉・窓などの装飾的意匠のある)格子, 鉄格子.
2(銀行出納口・切符売り場・刑務所の面会所などの)格子窓.
3(自動車の)ラジエーターグリル (⇒car 1 さし絵).
[フランス語 ‘grill' の意]
やつれた心は顔までも影響していった。
それは慣れた人には充分間に合うとされる、看板商品を買いに来たお客さんがいた。
そのお客さんはいかにもそれだけが目的なようで、お店の中をウロウロしては戻って来てを繰り返してた。まだ3ヶ月にも満たない僕は、到底間にはずもなく、『この商品の何々が出来立てですよ~。』と厨房の中で叫びながら、『まだ出来ないんだよ』と心の中でアピールもしていた。
しばらく我慢していたのか、それとも痺れを切らしたのか、お客さんが怖い喧騒で僕を呼び出した。
「ねぇ、あのさ?!もう、売り切れたワケ?いつも私、あんたとこの看板商品が大好きで≪ハンバーグ丼≫をひいきにして来たんだよね?なんで、無いの?」
「・・・いっ、いらっしゃいませ。あ、あの…すみません。まだ製造途中でありまして…申し訳ありません。」
「・・・え?何を云っているの?私はね、いつもと同じ時間帯に買いに来てるの。そしたら、もういつもなら商品が陳列しているわよ?それなのに、今日は何なの?商品自体も少なすぎないかい?お客さんを待たして、人として最低じゃないの?」
「・・・あの、すみません。僕の場合は、まだ…時間が」
「あぁ~、そう。君、新人なの?そうだったのね、どおりで気前がおかしいと思ったわ。タジタジしすぎて、空気さえなかったわ。私が仲良くさせてきて貰った店員さんは、優しかったわ。厨房にゆとりをもちながれも、しっかりと接客してくれたわ。私が≪常連さん≫だって、知っていたのね。来るたびに、『出来てますよ~』だなんて可愛い声だして薦めてきたわよ。なのに、君は声にハリはないし…姿も立ち振る舞いも迫力、いや自信すら無いんじゃないの?・・・と、いうことは私・・・。私は、危なく変なものを食するとこだったのね~」
「・・・・・・・・・っ。」
「ところで、その彼女はいつ勤務なのかしら?教えて欲しいわ、私にも事情があるの。」
シフトを当分ずらさない、誰にも頼らない。と、考えていたから、そのお客さんが求めてる彼女のシフトの曜日だけをメモして、わざわざ手渡しした。そのお客さんはふてくさりながらも、メモだけを嬉しそうに手にして帰っていった。
厨房に戻ると、冷え切ったご飯と危なく焦げかけたハンバーグが僕を待っていた。
泣くとか辛いとか、どうでも良かった。そこにあるのは、こんな自分にある劣等感と拒絶反応だけ。オーブンから取り出したハンバーグが、まるで僕の心臓のように焦げ臭さが漂っていた。当たり前だがそのハンバーグは時間ロスして商品にならないために棄てた。
でも、僕の場合はそういうワケにもいかなく、ただただゴミ箱のなかで肉汁が溢れてるハンバーグを見てうっすら微笑んでた。
調理を始めて2時間後のこと、先輩が髪を乱しながらやってきた。
何が何だか判らないでいると、僕が在庫間違いをしていたらしく飛んできたらしいのだ。
彼女は横にきて、在庫の再確認をしながら僕のほうを見て、また作業を続けた。一通り終わると彼女は制服姿から私服姿に戻り、ため息交じりで僕に呟いた。
「それ、商品として出すの?」