gelee
ジュレ
柔らかいゼリーの状態。
ふと空を眺めたら、太陽と雲が揺らいでいた。
怖くなって下を見た瞬間、何かの粒が頬を流れていった。
久々に夜が怖くなっていた。産まれてから、何度も乗り越えてきた夜。寝たら何かを置いてきそうで、忘れてしまいそうで、失ってしまいそうで・・・僕はあの時も、きっと今日の夜も寝れなくなった気がした。ただ、明日は早朝からのシフト。何がなんでも、朝は起きないといけないし、寝ておかないと次の夕方が持たない。弟が着々と上京の準備をして立て込んでいる。そんな家には、まだ帰りたくはなかった。
このまま、見知らぬ誰かの手に引き連れられて犯されたり、抱かれても悔いはない。
このまま、身元不明になるような遺体になったり、犬になったりしても悔いはない。
優柔不断でどうしようもなくて、誰かの言葉や言動で動く自分。それは、嫌われるのが怖くてそうしているのではなく、ただただ、誰かにそうやって想われるのが嬉しくて、自分がただ此処に居ることを感じられて応えているだけなのに・・・恩返しでもあるのに、何もかもがさら地となった気がする。
琉球みたいな砂浜じゃない、グレーの砂浜を歩くように、僕は一歩一歩あるいていった。裸足で歩くこの砂浜は、サクッと受け入れてくれるのではなく、仕方なく僕を受け入れるかのように鈍い感触で僕を包んだ。目の前に広がるのは雨上がりのグレーな海の空。そして、白く泡立った少し荒い海。遥かむこうを覗き込めばオレンジの太陽が沖側で照らしている。それを求めるかのように、僕は薄微笑になり、絶対歩いては行けない、泳ぎも出来ない海の沖に期待をなんかをかけて、僕は走っていく。
一枚で造られた布の服が風でひらひらとなびきながら、僕と共に歩んでいく。柔らかなその布は、僕の涙も拭きながら寄り添っていった。
誰にもわからない境地を僕は歩んだいた。誰にも伝えられてない想いの中を、僕は歩いていた。
決してその形のまま、今の僕をすくえない。
僕を救えないだろう。
すくった瞬間にプルンと僕は、気持ちをさらに弾けさせて原形をとどめていないだろう。
待っていて、僕はいまその沖に向かうから。