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三日間で学んだこと

「お、起きなさいよ!早く!」


頭を恐らく全力で叩かれて目が覚めた。


「痛っ!え?なに?」


突然の痛みに跳ね起きる。そんで、とりあえず死んではいないことを確認した。むしろ、なぜか疲労感などを全く感じない。三日間さ迷った疲れがきれいさっぱり消えていた。


が、安心ばっかりしている暇はないようで。


「なんだよ。こいつら......」


鎧に身を包み、剣を持った兵士と思われる奴等が俺の周りをぐるりと円形に囲っていた。あきらかに俺の味方では無いことは分かる。殺気をひしひしと感じるのだ。


「ヴォリテニアの軍隊よ。汚いわね......」


「って、あんた誰だ?」


声がした方を振り向くと一人の少女がいた。年は俺と同じくらいの17とか18くらい。腰まで届く髪に、整った顔立ち。そんで、俺の周りを囲っている兵士たちと似たような鎧に身を包んでいる。そして、手には俺の身の丈を遥かに越える長さの剣が握られている。


「そんな事、どうでもいいでしょ?とりあえず、逃げなさい!私が退路を開くから、そこから逃げて。民を戦いに巻き込むわけにはいかないわ」


と、いい放った。なんだ?戦いってよ。まさか、この大量の兵士と戦うってのか?たった一人で。


「お前、こいつらと一人で戦うのか?」


「そうよ。王国のためにね」


こいつ、まさか......


「俺、まだ何にも飲み込めてねぇけどよ、お前、死ぬ気だろ」


予感できたのだ。なんだかこいつの眼を見てると、とうに命なんか捨ててる眼をしているのだ。確信なんて無かったけど、そう感じたんだ。


「えぇ、そうよ」


「納得いかねぇ」


「え?」


「納得いかねぇって言ったんだ。命をそんな簡単には捨てるんじゃねぇよ!」


「あんたには関係ないでしょ!いいから逃げなさい!」


「もういい。わかった」


「なにがよ!」


「お前は俺が死なせねぇ」


「なにあんた勝手なこと言ってんのよ!」


俺は命を捨てようとしている奴が大嫌いだ。たとえ誰のためでも命は無駄にしちゃいけねぇんだ。そう、あいつみたいに。


「おい、腰にしてる短い剣貸せよ」


「え?」


「一緒に戦ってやるっつってんだよ!いろんな事に納得いかねぇからな」


「......勝手にしなさい。死んでも知らないわよ」


「心配どうも」


少女が腰に着けていた短い剣が俺に放り投げられる。それを拾いながら、考えてみた。カッコつけて見たものの、俺の勝算は未知数だ。俺は今、一発勝負の博打に挑もうとしている。


「くるわよ!」


「おう」


大量の兵士が俺たちに向かって迫ってくる。地響きだけで、若干の恐怖を覚えるほどだ。


兵士が迫ってくるのと同時に俺は頭の中には数式を並べる。そして、数式が並び終わった瞬間。



「鎖よ。離れろ」


言葉を発して俺は宙に舞う。これが合言葉らしい。俺がさ迷っていた三日間で学んだことの一つだ。空中に移動した。


そして、俺の事を完全に見失った兵士たちに落下しながら思いっきり剣を降り下ろす。


「よかったぜ」


兵士の頭の兜は割れずに衝撃だけが頭に伝わったようで、兵士は目を回してぶっ倒れる。


「やったりぃ!」


よっしゃっ!と思ったのもつかの間、


「俺、着地できねぇ」


仕方ねぇ。やったことないが、やってみるしかない。空中でそのまま頭に数式並べる。空中で移動魔法を使うのは初めてだが......


「鎖よ。離れろ......とっ」


無事に着地できたみたいだ。しかも、敵陣の後ろみたいだ。


「やばい!あいつは大丈夫か?」


少女の事を興奮して忘れていた。くそ。敵陣の後ろに居るから確認することも出来ない。


「ちくしょう!やったるわ!」


敵の背中に向かって走り出す。そして、俺の射程圏内に入った瞬間に先程まで並べていた数式とはすこし違う数式を並べる。そして、


「鎖よ。結べ」


と、合言葉を言う。その瞬間。俺の視界に入っていた兵士は全員空へ舞っていた。まぁ、俺がやったんだけど。これが俺が三日間で学んだもう一つの力。俺では無く、別のものを移動させる力だ。まぁ、頭の中で使ってる数字は同じで、たまたま俺が普通に並べるのを間違えたらできたんだけど。


宙に舞った兵士達は地面に叩きつけられ気を失っている。そして、開けた俺の視界の先には、さっきの少女が長い剣を振り回し応戦しているのが見えた。しかも、相当強い。一人で同時に三人ほど相手にして、一撃で相手ている。


俺は魔法を使って少女の近くまで一気に移動し、


「まだやるのか?」


「もういいわ!!大分倒したし!一旦引くわよ」


「どうやって!?」


「私の肩に掴まりなさい!」


「お、おう!」


俺は言われるがまま少女の肩を掴んだ。すると少女が、


「鎖よ!離れろっ!」


その瞬間、俺達は城に居た。



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