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Third.

「つ、疲れた……」



私は思わずそうつぶやいた。


ちなみに、私は今あの城の城下町の広場にある共同トイレにいる。


普段は使用者で溢れかえる場所だが、あいにくと今は真夜中。

誰にも気付かれる心配はない。

ここはこういう暗い時間帯だと本当に誰もいないので、着替える場所として重宝している。


しかし、ここに来るまでの道のりで何があるかはわからない。

もちろん着替えてからの道のりも気をつけるにこしたことはないが、ここに来るまでの道のりはとくに慎重にしていたのだが……

城内で声をかけられてしまったのだ。


それもかなり身なりのいい男性に。


侍女の格好をしているとはいえ、こんな真夜中に出歩いていたら誰だって不審に思うだろう。


幸い、この城の人じゃなかったのでなんとか言いくるめることができたが、できればもう二度と人に見つかることは避けたい。

……嘘をついてしまったのが少し心苦しい。


暗かったので相手の顔がよくわからなかったことから、おそらく相手も自分の顔がよくわからなかったと思われる。

というより、そうであってほしい。切実に。



「帰る頃には、もういないといいけど……」



願望混じりにそうつぶやいて、私はアイテム袋から麻のズボンとシャツと、皮の手袋と靴をひとつずつ取り出した。


それから侍女の服と少し華奢な靴を脱いで、先程出した装備をすべて身に付けて脱いだ服と靴をアイテム袋にしまう。


この時点で、改めて自分の容姿を確認してみる。

そこまで確認する理由はないが、しいていうなら気がむいて。


少し後ろを見ると、腰まである自分の長い髪が見える。

髪の色を確認すると、もう薬が切れたようで薄茶色から元の黒色に戻っている。このぶんだと眼も黒色に戻っているだろう。


体は、胸にサラシをつけていること(出掛けようと思い立つ前からつけていた)と身長が155セルク(1セルク=1cm)と微妙な身長も手伝い、よく見ても男か女か判別しがたい非常に曖昧な体型になっている。それこそ、顔を見なければわからないだろう。


そのことを確認して、私はアイテム袋からマントと仮面を取り出して身につける。顔と髪はこの二つで隠し通すつもりだ。


私にとっては不審者にしか見えないこの格好だが、そういう目で見られたためしがないためおそらくそう珍しくもないのだろう。

……いまだにこんな格好の人は他に見たこともないが。


そんな風に考えを巡らせていると、ふと大切なことを思い出した。

まぁ、大切といってもたいしたことではないが。


着替えるために棚の上に置いておいたアイテム袋に手を入れ、

中から飾り気の無い黒っぽい金属製の首輪を取り出す。


この首輪は『偽りの独奏』という魔道具で、着けたものの望み通りの声を周りの人に幻聴として聞かせるという代物で、私にとっては声を楽に変えることができる便利品になる。

ちなみに前のお出掛けのときに露店で購入した。


つけるのは初めてでよくわからなかったが、どうやら杞憂だったようで普通につけることができた。


これで着替えは終了だ。


アイテム袋を懐にしまい、共同トイレを出る。

月も無い真夜中では黒いマントは姿が隠れやすく、警備に見つかることもなく町を出ることができるだろう。


おそらく一番目立つことになる仮面と首輪をフードで引っ張って隠しながら、私は歩を進めた。


長さの単位一覧

1ムルク=1mm

1セルク=1cm

1ルルク=1m

1キルク=1km

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