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つやめき☆キューティクル学園 ~攻略対象全員おかっぱ~

 最近テレビからおかっぱ男芸人が減っていて寂しいので書きました。

 性癖は出した方が人気が出ると聞きましたが‥ 出るのでしょうか? いや無理ですよね?

 今日から私はキューティクル学園の二年生。

 転校初日ってドキドキだわ。


 校門をくぐった先には素敵な人がいっぱい。金髪とか赤毛とか多様な色の髪をみんな個性的に整えているの。


 それもそうよね、この学園は髪の毛が美しい生徒に対する推薦枠があるのだから♪



 私が転入できたのも、なぜか去年あたりから髪色がピンクに変色してきたためよ。

 前の学校で髪の悪口を言われた私は転校を決意したの。キューティクル学園は渡りに船だったわ。



「編入試験は本来なら平均70点が必要ですが、わが校にはピンク髪の枠があるので合格です」


 にっこり告げる先生に冷や汗をかいちゃった。

 ギリギリたりなかったのね。




「今日転校してきたサラサ・ストレイトさんだ。みな仲良くするように」

「よろしくお願いします」


 通りいっぺんのあいさつをして席に着く。


「ねえねえ、あなたはどんな髪型が好み?」


 お隣の女の子が話しかけてきた。フワフワな髪がカールしてる。

 好みの男子じゃなくてここも髪型なんだ。



「えっと‥ おかっぱ‥ 特にキノコ頭かな」


 私は前の学校では隠し通していた性癖をさらけだす。


 サラサラヘアーのおかっぱが風にゆれるとことか最高じゃん。

 スローモーションで見たいくらいよ。


 自分でもやりたいけど女の子はダメって親に怒られるから、私はのばすだけ。

 まー 自分がバサッてやっても見えないのが難点ね。



「じゃあおかっぱファイブを教えてあげるわ」


 聞きなれない言葉で私はとまどう。


「は? おかっぱファイブ?」

「ええ、略してO5とも呼ばれているわね」



 どうもこの学院には髪型ごとの派閥があるらしい。


 彼女から名前と居場所を教えてもらったから、お昼休みにさっそく探しに行くわ。




 まずは隣のクラスのヤマサット・リョースター君。


「君うわさの転校生でしょ、可愛いじゃん。一緒に遊びに行かない?」


 おかっぱのすき間からのぞくアカブチメガネがおしゃれだし、ちょっとお調子者だけど親近感がわくわ。



「あのねー ボクねー 焼きそばパンとメロンパンとサンドイッチ!」


 購買部でパンをたくさん買っていたのは、食いしん坊なんのがすぐわかるポッチャリおかっぱね。


「ごめんねえメロンパン売り切れなのよ。クリームパンで我慢してちょうだい」

「ええ~ ガッカリ‥」


 うなだれているのがかわいそうで、私が買ったメロンパンと交換してあげた。


「ありがとー ボクはヒムラス・ユーキット」


 ショタ風味の彼はやはりおかっぱファイブの一人。



 次は校庭。騎士志望の男子が訓練しているの。応援する女子も多いわね。


 目に飛びこんできたのはたくましい体のおかっぱ。アオーキー・マッチョーサー君。

 筋肉とおかっぱのコラボレーション? もはや反則では?



 やばいここ学園じゃなくて楽園か?



 放課後もイケメン探しにレッツらゴー!



 図書室で勉強しているのは金髪おかっぱのジェシー・ガク・シンク君。

 おかっぱがメガネをクイッとするのも乙な物ですなあ。



 そして最後は生徒会室。下校時間までねばって会長の出待ちよ。


 扉から現れたのは生徒会長にして我が国の第三王子トール・ホットハーラ様!


 まるで雨上がりの様につやめく黒髪の王子は、おかっぱファンだけじゃなく全校生徒のあこがれの的。


「きゃー! 殿下♡」


 黄色い悲鳴にふり返ってほほ笑む殿下。

 そうこれ!

 ふり返った時にファサッとゆれるおかっぱの髪!

 私も一瞬で夢中になってしまったわ。




 そしてそんな見目麗しい殿方たちと、なぜか私は次々と仲良くなるの。

 お昼休みや放課後は歩いているだけですてきなおかっぱ男子と遭遇しちゃう。



 宿題を忘れたヤマサット君にノートを見せてあげたり、ヒムラス君と一緒に買い食いしたわ。

 不良にからまれている所をアオ―キー君に助けてもらったり、本屋さんでジェシー・ガク君とバッタリあったりもしたわね。

 お忍びで町を探索していたホットハーラ様にうっかりぶつかった時は驚いたわ。





「あなた最近おかっぱファイブの方々と親しすぎませんこと」


 見事な金髪縦ロールを振りかざすのはトール様の婚約者ローラー嬢。


「特にホットハーラ様は王族であらせられるのよ、もう近づかないで頂戴!」



 まったく反論できない状態で、私はうなだれた。

 私なんてただ髪がピンクなだけのしがない男爵令嬢だし。




 忠告を受け入れる気はマンマンだったのに‥

 出会っちゃうのよ! おかっぱファイブに。


 で、向こうから声をかけてくれたら無下にはできないじゃん。



 しょうがないけどローラー嬢には目の敵にされて宣戦布告されてしまう。


「そんなに高位令息のおかっぱが好きなら、わたくしと勝負なさい!」


 そこから私とローラー様のおかっぱをめぐる戦いが始まるなんて。


 座学が勝負になるのは分かるけど、カット術とかトリートメント競争とかおかっぱへの愛をポエムにして朗読とかは訳分らなかったわ‥



 でも勝負に勝ったら、選んだ一人のおかっぱをワシャワシャできる権利がもらえるんですって!

 本気を出さない訳にいかないわよね。


 



 そんな、おかっぱをかけた勝負をくり広げつつイケメンとの親密度を高める平和な日常を過ごしていたのだけれど‥


 ある日、事件がおきたの。


 


 手紙で呼び出された私が生徒会室に急ぐと、おかっぱファイブとローラー嬢が深刻な顔で集まっていたわ。



「急にすまない。だが事態は一刻をあらそう」


 昨夜、なんと殿下は毒を盛られたのですって。



「以前から我々おかっぱファイブを妬んで嫌がらせをしてくる奴はいたが」


 アオ―キー君も厳しい顔。


「まさかシャンプーに除草剤を混入するとは!」


 なんて悪質な犯行‥ 言葉が出ないわ。



「だからみんなで犯人を捜そうって僕が提案したのさ」


 ヤマサット君はむりやり元気を出している。



「まずは聞きこみで情報集めだ。毒はいつ混入されたのか、除草剤はどこで購入された物なのか」


 ジェシー・ガク君はこんな時も冷静ね。



「あのねー ボクねー 使用人が怪しいと思うなー」


 確かにシャンプーに毒を入れる機会があるのは使用人よね。

 私はヒムラス君にうなずいた。




 そして聞きこみとか証拠集めとかなんだかんだやった後、夜の学校に潜入して犯人を待ち伏せることになったの。


 最近一番仲がいい彼と一緒に。 [* お好きなおかっぱを思いうかべ下さい]

 教卓の後ろで気になる彼と二人っきりだなんて、ドキドキしすぎて心臓が持たないじゃない。

 か、髪がふれあうわ‥




 30分後、かたりと開かれる教室のドア。つかつかと歩み寄る足音。わざと置き忘れたシャンプーに手がのばされたその時、私たちも姿を現す。


 シャンプーボトルを手に取った犯人は‥





 ヤマサット君だった。



 今回の計画を知っているのは私たち二人だけだから、ヤマサット君は知らないはず。



「はは君たちをかく乱するつもりが、逆にはめられたか」


 いつもとは違い憎しみをこめた瞳で私たちをにらむ彼。


「ヤマサット君‥ なんで‥」


 あんな優しかった彼が‥ 一番先に捜査を提案したのはかく乱するためだったなんて‥




「は、僕はねぇずっと君たちが妬ましかったんだよ」


 ヤマサットは苦笑いを浮かべる。


「僕がおかっぱの維持にどれだけ努力しているか知らないだろう? 何もしなくてもサラサラな君たちは考えもしないのかな」


 確かにヤマサット君のおかっぱは、形は美しいのにツヤがイマイチだった。


「あなたがそんな悩みを隠していたなんて‥」


 私は涙目になった。


「君にそんな顔をさせる予定じゃなかったのにな‥ 安心しなよ、事が露見した今、僕はこの学園から去るしかない」


 そして窓から校庭に飛び下りたヤマサット君は、闇の中に消えていった。




 つらい別れもあったけど、今日は三年生が卒業する日。卒業生代表であるホットハーラ殿下のあいさつは素晴らしかったわ。


 そして全校生徒が集まる卒業パーティー。

 私の元に一通の手紙が届いたの。



「パーティーの後こっそり時計台の下に来て欲しい」



 どきどきしながら向かった先にいるのはやっぱりあの方だった。




「君の髪に触っても良いかな?」


 真っ赤になってうなずく私。彼のおかっぱが風にそよいだ。


作者注 好感度のトップがヤマサット君の場合、主人公は一人で作戦を決行します。改心したヤマサット君は退学しません。


 普通のイケメンに興味ありません。

 おかっぱや鳥人を落とすゲームがあったら私の所に来なさい!

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