二回目 既視感
凪沙が生まれからは、母や父は、妹に割く時間が増えた。
ぼくは、妹が嫌いだった。
こいつが生まれたせいで、母と父は俺に構ってくれるはずの時間も
どんどん少なくなっていった。
ぼくは次第に1人で遊ぶ時間が増えた。とにかく1人でいる時間をどうにかしたかったのだろうか、
ぼくはぬいぐるみとごっこ遊びを良くしていた。
月日は流れていく。
妹は2歳となり、母も父もだんだんと昔のように俺と遊んでくれるようになり、凪沙への嫉妬の気持ちも段々
薄まってきた。
多分、ぼくはヤキモチを焼いていたと思う。
その翌年の4月のこと、家族全員で近所の公園でお花見をしている最中、
偶然、ある家族が隣に座ってきた。
その家族は、どこか既視感があった。しばらく見ていたら、
「あらお友達?」
と、隣の家族の母親が娘に聞いた。
娘は首を横に振った。
すると凪沙の世話をしている父の横で、母は
「こんにちは。桜、綺麗ですね。」
と挨拶を交わし、向こうの母も、
「こんにちは。本当、そうですね。」
と返した。
母と、向こうの母は、しばらく世間話をしていた。
世間話をしてる間、娘は向こうのシートを渡ってこっちに来た。
「あなた、なまえはなんていうの、わたしは、櫻木 凛。」
「ぼくは、梅原 晃誠。よろしくね。」
「うん!よろしく!」
「あなた、なんさいなの?わたしは5さい!」
「ぼくも5さい。おなじだね。」
「もしかして、来年から鶯谷小学校?」
「そうだよ。もしかしてきみも?」
「そうだよ!よろしくね!」
「うん、よろしく。」
ぼくはその時、どこからともなく凛と話せる時間は長くは続かないと思った。
そうして、日は暮れ、花見が終わった。
そして1年後の春、ぼくは、櫻木家と鶯谷小学校の入学式で再開した。
「ご入学おめでとうございます。」
と背中の後ろから聞き覚えのある声がした。凛の母親だった。
その声と同時に「おはよう!こーちゃん」
と太陽のようなとても元気の良い挨拶も聞こえてきた。
凛だ。
「おはよう。きみ、ほんとうに鶯谷小学校なんだ。」
「ひどい!うたがってんだ!」
「ごめん、きみのことこのまちで二回しかみかけたことないから。。」
「じつはね、1ねんまえに滋賀から引っ越してきたんだ〜」
「シガ?、がいこくのひとなの?」
「ちがうよ!!、滋賀は日本だよ!」
「そうなんだ。」
「そうだよ!、それよりそろそろにゅうがくしきはじまるからいこうよ!
と、そのまえに〜
ママ!、こーちゃんといっしょにしゃしんとってよ!」
「いいわよ、はいチーズ!」
「チーズ!」
「チーズ。。」
「いいわね、2人とも輝いているわよ!」
「ありがとう!、じゃあそろそろいこう!」
彼女はそう言ってぼくの袖を掴んで、半ば強引に連れて行かれた。
校門をくぐった後にぼくたちと同じ学校に通っているとは思えない、
大人のようでかっこいい6年生にコサージュを胸につけてもらい、
手を繋いで1年生を過ごす教室に着いた。
「おはようございます!」
「おはようございます!」
と言って人が続々入ってくる。
その中にさっき聞いた声がした。
「おはようございます!!」
と現状このクラスで1番元気だと思われる生徒が入ってきた。
「あ、こーちゃんじゃん!、同じクラスなんだ!、よろしくね!」
「よろしく。」
「では、皆さん席についてください、今から出欠を取ります。」
「安倍 夏美さん、、、、、、渡辺 翔さん…
全員いますね!
あ、そうだ。私の名前は水橋 綾と言います!
1年間よろしくお願いします!」
この人もまた、元気そうな先生だと思った。
式の時間になり、1組から入場して、そろそろぼくのクラスも
入場する。
保護者と在校生、先生方の温かい拍手の音に包まれて入場した。
式も順調に進み、校長先生、PTA会長の話と続いた。
「次は新入生代表挨拶です。1年3組 梅原 凛 さん お願いします。」
「はい。」
と元気な返事が体育館に広がった。
ぼくその時、とても驚いた。まさか凛が代表挨拶をやるとは思わなかったからだ。
「桜が咲き誇り、風に舞う花吹雪が彩る今日」
から始まり、
「ご指導くださいますようお願い申し上げます。」
で終わるまるでお手本のようでとても小学生とは思えない新入生挨拶に二度も驚かされた。
そして、入学式を終えた次の日から、彼女は毎朝
家に向かいにきて、一緒に登校班の集合場所まで
行くようになった。




