二回目 リセット
俺は黒い虚空の中に何十年、何百年も過ぎている気がした。
死んだあとは地獄も天国もなく、ただ「無」があった。
『「無」がある』というのはおかしい話だが、言葉の通りに「無」があったのだ。
「光だ。」
目が見えないはずなのに、光が差してきた。多分見るというよりかは感じたのだろう。
俺は光に向かった。死に物狂いで光の方向に向かった・・・
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1989年、11月11日 とある都立の病院にて
「オギャー!オギャー!」
「おめでとうございます!元気な男の子ですよ!」
「ありがとう郁美。本当にありがとう。」
「こちらこそ、ありがとう、あなた。
そして、よろしくね。
私たちの可愛い赤ちゃん。」
約1カ月後の12月13日、赤ちゃんは1カ月検診を経て、
初帰省を果たした。家には、両親以外にも親戚がいて
誰もが赤ちゃんの眠っているベビーベッドのそばに群がっていた。
「あら可愛い赤ちゃんねぇ。お名前は?」
と母方の親戚の杉江さんが言うと。
「実はまだ決まってなくて、、、何個か候補はあるのですが、、、。
そう言って父親は息子につける名前のリストを書き綴った紙を読み出した。
慎平に、寛太郎、涼太、誠也、拓人、弘行、龍之介、それに、、、。」
「|晃誠《こうせい?。」
その瞬間赤ちゃんは突然起きた。そして、
「ひっ!」
と笑った。
それを聞いて、父親と母親はお互いに顔を見合わせて、
「この子が自分でこの名前を選んだんだわ。」
「“晃誠“僕もなぜこの名前をリストに入れたのかもわからないんです。確か
昨日の夜・・・
この子の名前を決めていた時に、突然気を失ったように、目の前が真っ黒
になっていました。
そして一筋の光を差してきたと思えば、目の前に顔がはっきり見えなかったの
ですが中高生ぐらいの歳頃の男の子が走って行ったのです。光の方へと。
その子に不思議と親近感と言いますか、何かが湧いてきたんです。
それを見ているうちに、だんだんと目が覚めてきて。気付いたうちに
“晃誠“と書いてありました。」
「偶然ね、、私も昨日の夜中にお母さんが私の代わりにこの子の世話を1時間
見てもらっている時に、少しの仮眠を取ったの。
そうしたら、あなたと見た夢と全く同じだったわ、1人の男の子が光の方に向かって
走って行ったのよ。」
「もしかしたら、その光に向かって走って行ってるのが晃誠じゃない?」
「確かに、、、。
“晃誠“。晃は、光が明るく輝くこと。誠は、嘘偽りのない心。この子にぴったりだ。」
と、父親と母親以外の人も“晃誠“という名前に満場一致していた。
「晃誠、うーん、じゃあこうちゃんね。」
「こうちゃん!」
母親に続くように父と親戚も
「こうちゃん!」
「こうちゃん!」
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・
と盛り上がっていった“「こうちゃん」フィーバー“が続いていった。
そうして、初帰省を終えて、東京の下町にある実家に着いた。
実家は、母方の実家よりかは多少狭いが、世間一般では、
広い方の一軒屋だ。しかも駅近だ。
そのこともあって母と父は毎週、電車を使って多種多様な
ところに連れて行ってくれた。
多分、普通の子供よりも多く外で遊んでいたのだろう。
また、俺は絵を描くのが好きだったらしい。絵本の絵
を描くつもりだったが、“バケモノ“を描いては紙を
破り捨てて、描いては破り捨ててを繰り返していた
らしい。
自分でも1歳の頃はポジティブなアスリートで気まぐれな芸術家
と豪語してもいいと思う。
そして2歳の頃、ぼくに妹が生まれた。
妹の名前は、凪沙




