第五話
月曜日
教室に入るとすぐに駿が目に入った。
駿の今までの印象といったら、頭がよくて空気は読めるが、その分人に流されやすい一般的なやつだと思っていた。
身長はそれなりに高く、制服はかっちり着てそうで実は着崩しているという一面もある。
あいつも見た目は優等生だが実際はそうでもないタイプなのかもしれない。その点でいったら私たちは相性がいいのかも。
「おはよう。」
駿は笑顔で挨拶をしてきた。
「おはよう!」
私も、いつも通りの高い声で元気よく挨拶をする。
その姿をみて、駿は少し悲しそうな表情を見せた。やはり事情を知っているとこれは結構驚くだろうな。
「しずは―。おはよー。」
優花が私の方に向かってくる。
「優花の今日の髪型かわいいね!」
可愛いとは思っているが、毎日こういう会話をするのは内心結構疲れている。ただ、これは女子高生ならお決まりの会話パターンらしいので笑顔でこなしている。
駿は遠くからこのやり取りを眺めて微笑んでいた。
あいつ。何考えてるんだよ。
やっぱり秘密は明かさない方がよかったか…?
昨日のあの状況ならやむを得なかっただろうと自分に言い聞かせ平然を装った。
「私のことそんなに見ないでほしいんだけど!」
一時間目の古典の授業中、私は駿にLINEを送ってみた。昨日交換しておいてよかったと思いつつ私は送信ボタンをタップして駿の方を振り向いた。
駿は真剣に黒板を板書していて、スマホに目を向けそうな雰囲気ではなかった。
そうだ、駿は優等生なんだった。授業中にスマホを触るなんて不良じみたことはしないよな。
そう思いながら駿を見つめていると目が合った。
にこっと微笑んでくれたが、私は目をそらした。
優等生でも意外と恋愛に興味はあるんだな。てっきり、四六時中勉強のことしか考えていないタイプかと思っていたからちょっと意外だ。
気が付くとスマホに着信が来ていた。駿からだ。素早くアプリを開いて、私は駿からのメッセージを読む。
「それは無理だね。静羽が俺のことを見なければ、俺が静羽のことを見ていることにも気が付かないからいいんじゃない?」
なるほど。頭いいな。実践してみよう。
駿が授業中に返信をくれるなんて。というかちょっと待って。これじゃまるで私が駿を不良にしているみたいじゃないか。
私はあくまで不良を演じているが、駿を不良にするような真似は良くない。これは結構難しいな。
「はい、じゃあ三番。坂口さんわかるかな?」
あれこれ考えているうちに、先生に質問を投げ掛けられていた。
「えっと…。係り結びだから、答えは已然形?」
「おお。正解。よく気が付きましたね。」
しまった。うっかり正解を言ってしまった。幸運にも馬鹿っぽい声だったが、だいぶスラスラと答えてしまった。
クラス中がざわつくのがわかる。
「うそっ!正解なの?」
私はすかさず正解したことを喜んで見せた。
「やっぱりまぐれかよ…!」
隣の席の健太がそう言うと、クラス中が笑いに包まれた。
ナイスだ健太。
今の一瞬で悟った。
これは近いうちにぼろが出る。




