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第二十九話

 風呂から上がり、部屋に戻るとお待ちかねの自由時間がやってきた。


 沙弥と実波は部屋で筋トレをするようなので、まいまいと一緒に優花の部屋に向かった。

 

 「おじゃまします。静羽です!」


 扉を叩くとすぐに優花が迎え入れてくれた。これでいつもの6人が揃った。


「これからババ抜き大会だけどやる?」

 

「もちろん!」


 風呂上がりの優花は、頭の低い位置でツインテールをしている。(かわいい。)



 「罰ゲームはどうしましょーか?」


 カードが配られる間、まいまいはちょこん正座をして呟いた。


 「自分以外の5人全員が知らない秘密を一つ暴露!」


 優花がそう言うと、みんながわっと盛り上がる。

皆さま賛成らしいので、罰ゲームは秘密の暴露に決定した。


秘密か。いくらでもあるな…。

 

 2枚揃っているカードを捨てていき、私の残りは8枚になった。みんなの手元は残り5枚くらいになっているが、優花はあと3枚だ。今のところ私の手元にババはない。


 私はまいまいのカードを引いて、優花にカードを引かれるようだ。罰ゲームを回避すべく、頑張らないと。



 「ねえ、駿に告ったの?」

 ババ抜きの最中に、まいまいはストレートに尋ねた。さすがまいまい。


 「まだだよ。というかたぶん無理。」


 優花はそう言って笑った。


 心配ないと思いたいが、駿の気が変わってしまったら困る。


 心の中で上手くいきませんように、と願ってしまうのが苦しかった。


 

 そうこうしているうちに私のカードはどんどん揃っていき、残るカードは3枚なった。


 「上がり!」

 しかしそれよりも周りがあがっていくペースが速く、まいまいが一抜けすると、続々とみんなが抜けていった。


 残りは私と優花の二人だ。


 ババは優花が持っていて、7が揃えば私の勝ちだ。


 とりあえず右…。いや左を引こう。


 そっとカードを抜いた瞬間、優花は笑顔になった。


 まずい。抜いたカードを表に向けると、ジョーカーの文字が見えた。


 ふぅ…。私はカードをシャッフルして優花の前に出す。右を引いてほしいと願いつつ、私は優花の瞳をじっと見つめた。


 「うーん。こっち!」


 優花が引いたのは、左のカードをだった。


 「やった!最下位回避!」


 ということで罰ゲームは私か。


 私は過去を振り返って、誰にも話したことのないエピソードを探す。どれがいいかな…?


「幼稚園の頃の自慢話ってしたことある?」


 皆は首を横にふった。では、この話にしよう。


 「幼稚園の頃の私は、すごい勉強熱心だったの。家の近くの算数教室に通って、そろばん習ってたんだ。」


「えっ。静羽が?」


 みんなは驚いた表情を見せる。


「そうそう。それで、けっこう計算が早かったから未就学児対象のそろばん大会に出たの。」


「結果は…?」


妙に緊迫した雰囲気になっていて面白い。


「優勝したんだよね。けっこう大きな大会で、文部科学大臣賞とか言われて、大きい盾をもらったの。その時に勉強に満足しちゃって今はこんな感じになっちゃったけど…。」


「だから最近の優花は勉強してないってわけか!」


 みんなは納得してくれたようだ。


 まさか私が馬鹿を演じているなんて、誰も思っていないようだ。


 もし一度だけ、過去に戻ることができるなら。

 私は間違いなくこの大会の日を選ぶだろう。

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