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第十八話

 

 図書館が休館だったため、駿の家にいるのだが。 


 彼氏の部屋のベッドの下で、雑誌の束を見つけてしまった。


 見た感じ6冊といったところか。

 親に見せられないような雑誌をベッドの下に隠すのは現実なんだ。


 近年は休刊になる雑誌も多い中、このての雑誌にその気配はない。それなりに需要があるからだろう。

 魅力を探るべく、私はそっと手を伸ばす。


 だが雑誌に手を触れた瞬間に私は我に返った。

 

 ここは人の部屋だ。ましてや人がわざわざ隠している物に手を出すなんて、非道徳的である。

 

 私はサッと手を引き戻し、物理問題集に目を向けた。


「お待たせ。ドーナッツあったぞ。」

 

 間もなく駿は部屋に入ってきた。

 

 あそこで手を出していたら今ごろ…。思わず顔がひきつる。


 「本当に?食べたい!」

 

 笑って誤魔化したが、私の好奇心は押さえられないのであった。


 「ここの7番を教えてほしい。」

 

 駿は淡々と問題を解き進め、私もポツポツと気になる問題集を解いていた。

 

「ここの2次式に注目して。与えられた式を使えそうじゃない?」

 

「代入すれば答えが出るってことか。」


「それでもいいね。でも、2つの式の連立方程式を解いたら次の問題も簡単に解けるようになるよ。」

 

「本当だ。じゃあ連立してみる。」


 勉強を教えている間も、ベッドの下に隠されている雑誌の正体が気になって仕方がなかった。


 「なんか、計算が合わないな…。」


 駿はそう言って頭をかく。

 

 私は駿のノートを見て、計算ミスを探す。

 

 「ここじゃない?シャーペン貸して。」


 私は駿からシャーペンを受け取ろうとした。その瞬間、手がもつれてしまいペンを落としてしまった。

 

 幸運なことにも、転がったペンはベットの中に入り込む。


 手を伸ばしたら届く距離だったので、私はシャーペンを拾おうとした。

 

 「待て。」


 そう言った駿は自分でシャーペンを拾った。


 私は確信した。これは絶対クロだ。


「なに?もしかして何か隠しているの?」


 わざと知らないフリをした。


「別に。何も。」


「まさか、やましい物でも隠しているのでは…?」

 

 続けてからかってみる。駿は明らかに動揺した。これはおもしろい。


「まあ、別にいいのよ。誰にだって秘密はありますから。というか私の秘密と比べたら、どうせしょうもない秘密なんでしょう?」

 

「わかったよ。」

 

 駿はそう言ってベッドの下に手を伸ばした。


「絶対に誰にも言うなよ。友達にも、親にも。」


「もちろん。私の秘密と交換条件ね。」


 私の秘密を知っているわけだから、駿の秘密も1つくらい教えてもらう権利はある。


 さあ、どんな表紙なのだろうか?


 期待に胸を膨らませ抱えられた雑誌に目を向けると、私は思わず笑ってしまった。 


「へっ…?『海外留学マガジン』?」

 

 期待外れというか、想像の斜め上を突いてきた。


「ちょっと前から、高校を卒業したら海外に進学したいなとか思ったりして。でも、誰にも言ってなかったから…。」

 

「そうなんだ。意外だね。海外だなんて。」

  

 じゃあ、卒業したら会えなくなるのか…。

 

「なんだ。エロ本でも隠しているのかと思ったのに。」


「駿がいなくなるかも」という動揺を誤魔化すため、私は素っ気なく呟いた。


「ははっ。そっちは頭を使うだろう。少なくともリスクは()()()()()()()。」


「させている…?」


「いや。違う!」


 駿は紅潮した。

 

「やっぱり、隠し事はあるんですね!分散ということは少なくとも2冊以上。」

 

「俺の趣味じゃない。姉ちゃんがくれたんだ!」

 

 兄弟とはそのような本をプレゼントする関係なのか。いや言い訳か?

 

「俺にいつまでも彼女がいないことを心配して、『かわいいに耐性を付けろ』って。というか一応、静羽と仲良くさせてもらってるし。」


「ははっ。私、駿のお姉ちゃんと仲良くなれるかも。」


 絶対に変な人だ。


「そうかもな。姉ちゃんは俺より頭が良いし、静羽と気が合うかもな。」

 

 へえ。駿より頭が良いと言うことは、要するに天才ではないか。

 

 なんとなくだが。同族の香りがする…。


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