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第2話 LOVEだ!!!

お待たせしました!

2話の投稿でございます!

───そこにあったのは───

「っ!?」

 目の前には、長方形のガラスケースの中に入っている"それ"が映った。

 無数に備わった(いびつ)な形状の牙、首から体にかけて連なる6(つい)(えら)、こちらを睨むまんまるの目玉。

 ラブカの正体は、魚。これはラブカの剥製(はくせい)

「どうだい?驚いたろう?」

 小沙魚は剥製の前に移動して、ケースに手を添えた。なぜこの古びた旧校舎にこんなものがあるのか、この人は何者なのか、私は少し警戒した。

「にへへ〜、そんな引かなくても〜。」

 そういってまたヘラヘラしながら私を見つめる。

「なんでこんなものが旧校舎にあるの?」

「…なんでって、僕が1から用意したんだよぉ。」

 小沙魚が言うには、この高校に入学して数週間が経った頃、旧校舎のまだ使えそうなこの教室を使ってラブカの剥製を飾るための設備を用意したのだという。いや、信じがたい話だ。いくらなんでもここまで完璧な設備を用意する事なんてほぼ不可能と言っても良いほど、どれだけ注ぎ込めばここまで出来るのか。私は剥製の前に立って、小沙魚に尋ねる。

「んぇ?いやいやぁ、流石にラブカちゃんを僕1人で捕まえたり剥製にするのは無理だよ。」

 ケラケラと笑いながら答えた。仲のいい漁師や剥製作家に頼んだらしい。その他の用品、ガラスケースや教室の設備は半年かけてここまで完成させたと小沙魚は言った。

「すごすぎるって、なんでここまで出来るの?」

 小沙魚は歯を見せながらニッコリと笑い答えた。

「好きだからッ」

 嘘ひとつないような満面の笑み。私はにわかに、小沙魚は本当に"ラブカ"が大好きなのだと思った。

「鳴海さんがラブカを好きな気持ちは十分伝わったよ。ありがとう。それじゃ。」

 私は小沙魚に挨拶して理科準備室を出て、帰ろうと教室のドアに手をかけた。

「ちょちょちょ!待って待って鮫ちゃん!まだ話はこれからだから!」

 そう言って私の前に立って引き留め、またラブカの元へと連れて行かれた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「それで何?私バスと電車で通学してるから次のバス逃したらしばらく帰れないんだけど…」

「ふっ、安心したまえ鮫ちゃん。鮫ちゃんがスムーズにチャチャッと済ませてくれればすぐ帰れるからさ…。」

 小沙魚はニヤニヤしながら一つの紙とペンを持ってきて私の前に出した。

 

       『入部届(にゅうぶとどけ)深海生物研究部(しんかいせいぶつけんきゅうぶ)」』

   

「入部届…?な、何?入れって事?」

 うんうんと(うなず)きながら事情を話し始めた。

 

「実はねぇ、うちの学校って部員が最低4人いないと正式に部活として認めてもらえなくてねぇ…。僕の他には誰も入りたがらなくて困ってたところなんだけど……。」

 

 メガネをクイッとして一呼吸おき、こう言った。

 

「だが!そこに現れた1人の救いの手!それがぁ!鮫飼奈津こと、鮫ちゃんなのだ!」

 

「………いやいや、入らないよ?」

 私は紙とペンを返した。さっきも言った通り、私はバスと電車での通学だ。部活に入ってしまうと帰りが遅くなる。

「うぇ!?な、なんで!?めちゃめちゃ心に響いてたよね!?」

「響いたけど、私には関係な…」

「お願いお願いお願い!!!」

 小沙魚はしつこく懇願(こんがん)して紙とペンを押し付けてくる。負けじと私は他にも協力してくれる人はいるからとなんとかその場を押さえた。

「入ってくれないの…?」

 と思ったら次はあざとくお願いする作戦で私に近寄った。上目遣いで瞳をウルウルとさせながらこちらの目を覗く。

「いや、可愛らしくお願いされても嫌なものは…」

「お願いお願いお願いお願いお願い!!!」

 この作戦もダメだと再び必死に喰らいついて懇願した。せっかく新調した制服にもう(しわ)ができてしまった。浅く溜息(ためいき)をついて引き剥がそうと小沙魚の手を握ったその時。

 

       キーンコーンカーンコーン


      最終下校時間のチャイムが鳴った。

    

「やっば!」

 スマホの時刻を見ると、18時と示された画面が表示されていた。バスの到着時間をとっくに過ぎてしまっていたのだ。

「おっとっと〜、そろそろ下校しないとヤバいねぇ。」

 ふと我に返った小沙魚はそそくさと荷物をまとめ始めた。徒歩下校が確定した私は目を点にして小沙魚を見つめていると、

「鮫ちゃんお家どこなの〜?」

こんな質問を荷物をまとめながら私の方を見て振った。

「私は3丁目のスーパーの近くだけど」

 そう言ってスマホで現在地から自宅までのルートを検索にかけて到着予想時刻を調べながら答えた。

「うっそ偶然!僕もすぐ近くだよ!」

 朝会った時のようにまた目を輝かせながら言った。

 

   『到着予想時刻 徒歩 20:03 約2時間』

   

 これから徒歩で2時間かけて自宅に帰るという今にでも泣きたくなる検索結果が目に映る中、そうなんだ、と口を開こうとした私は一瞬考え込んで、放とうとしていた言葉を変え言った。

「えっ…?なんでバス着いちゃうってわかってたのに早く帰らなかったの…?」

「んぇ?だって…」

 

 彼女は帰りの支度を終え、私の前に立つ。その顔は、また少しニヤついていた。数秒の沈黙が続いた後、小沙魚は口を開き言った。

 

「僕、チャリ通だよ?」

ご覧いただきありがとうございました。

みなさんは学生時代どんな部活に入っていましたか?

私はキレッキレの運動部(卓球)でした^^


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