リアム・ペンシュラという男【リアム視点】
前回のお陰で無事に夫婦になったリアムとシトラの世界線です。大体20歳ほど設定です。
リアム病んでます、注意です。
静かな冬の夜、寝室のベッドで僕は、隣で規則的な寝息を立てている彼女を眺める。
もう成人して何年も経つのに、出会った頃と変わらない可愛らしい容姿。月明かりに照らされて白く輝く肌。どれも魅力的な彼女しか持たないものだ。……その可愛い彼女の左薬指には、自分が付けているものと同じ、シルバーの指輪を付けている。
本当に、ここまで辿り着くのに長い年月だった。公爵家の令嬢である彼女を貰い受けるには、爵位もそれなりで無くてはならない。12歳の子供が、二回り三回りも違う大人と対等に商談をするのも、その為に身につけた所作も……血の滲むような努力をしたから得たものだ。彼女は元々、僕が天才だったと思っているようだが……彼女の兄や、第二王子のように地頭がよかったら、もっと楽に今の地位に付けていただろう。
……彼女が建国の聖女シルトラリアだと知らされた時、納得した。……僕を救ってくれた、僕のそばにいると言ってくれたあの時から、僕は彼女を神のような存在だと思っていたのは、当たり前の事だったのだと。彼女のおかげで僕はここにいて、彼女のおかげで兄と家族になれた。……全て彼女がいたからだ。
寝ている彼女に顔を近づけ、そっと唇を合わせる。疲れている彼女は起きないが、それでも唇を動かし、嬉しそうに微笑んだ。
僕はそのまま彼女の髪を撫で、愛おしさのあまり吐く息が熱くなってしまう。
「ずっとずっと、一緒にいようね」
耳元で静かに囁くと、彼女は小さく震えて頬を染める。……思わず喉を鳴らしてしまう程に、それは魅力的だった。そのまま寝転がり、彼女を抱き抱え目を瞑る。髪を何度か撫でると、彼女は再び規則的に息を吐く。
僕は心が満たされていく感覚に、この上ない幸せを感じた。
やっと、やっと僕の所まで堕ちてくれた。
体も心も、僕を求めてくれる様になった。
この瞬間の為に、僕は今まで血反吐を吐きながら生きていたのだ。
半精霊の僕と、聖女とはいえ人間の彼女とは、寿命が桁外れに違う。彼女が死ぬのも、彼女と離れるのも許されない。……今の僕なら、魔法で彼女の寿命を延す事も可能なはずだ。そうしたらもっともっと彼女と過ごす事ができる。ああ、なんて幸せなんだ。
「僕と永遠に、幸せになろうね」
もう一度彼女に口付けをして、僕は再び幸せを噛み締める。
「リアム、昨日の夜中に何か私に言ってた?」
「どうだったかなぁ?僕は寝てたと思うけど」
「そうだよぇ、ごめんごめん、気のせいだったかも」
「………ああ、そうだ、シトラこれ読んでもらえる?文献で見たのを写してきたんだけど、どうやら魔法みたいなんだ」
「うん?なんの魔法?」
「ずっと一緒にいれる魔法みたいだよ」
「新婚の私達にぴったりなやつだ!えーっと、なになに? ?」