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かつての親友の息子と【シトラ視点】

リアムとシトラの話になります。




ペンシュラ領にある、美しい茶畑。それが一番よく見えるのが伯爵邸と、今立っている丘の上だ。


そこでも一番景色が見える場所にリアムは、先代とノアの墓を建てた。私はその墓の前に立ち、魔法で作った花束を墓のそばに置く。


「ノア、貴女の息子は立派な領主になったよ。……色々あったけど、お兄さんとも仲直りして、今じゃ二人で領土を切り盛りしてるみたいだよ」


墓に向かって静かに語りかけると、心地よい風が花束を揺らす。まるでノアが聞いているように思えて、微笑んでしまう。


「リアムの事は私が責任を持って守るから、安心してね」


かつての私の親友の願いを、私は叶える為にこれからも生きて行くのだ。私はそのまま後ろを向いて立ち去ろうとすると、すぐ後ろに黒髪の青年がいる事に気づいて目を大きく開ける。その青年は金色の瞳を細めて、こちらに美しく微笑んだ。


「お母様に会ってくれて、ありがとう」


宰相の事件から3年後、もうすぐ18歳となるリアムは更に紳士らしさを身につけ、ノアの面影を宿した美しい青年となった。私はリアムの目の前まで寄るが、更に背が伸びたリアムの顔を見るには、顔をかなり上げなくてはならなくなり、少しそれが悔しい。



あれから私達は、中のいい親友として関係を深めている。それは他の親友達も同じだが、リアムだけはシルトラリアだった頃の親友の息子でもあるので、もう母親のように世話をしている。恐ろしい事にこの美青年は独身で、婚約者もいない。なので最近は縁談話を持ち込み、彼の素敵な奥さん探しをしているのだが…………全く興味をそそられる存在がいないらしい。


「リアム様!今日も縁談話、たくさん持ってきたので見てくださいませ!」


そう言いながら持っている鞄の中から大量の写真を見せると、リアムは一瞬固まるがすぐに笑顔になり、そのまま私の持つ写真を取り上げる。せっかく私が選りすぐりの令嬢を選んで持ってきたのに!!と私はその写真を返してもらおうとするが、背の高いリアムはそれを軽くあしらい……そしてビリビリと音を出しながら写真を手で破いていった。


「ああぁ!!!」

「僕はお見合い結婚はしないって、何度も言ってるじゃないか」


呆れたような表情でこちらを見るリアムに、私はどんどん頬を膨らませる。


「もう18歳なんですよリアム様!せめて婚約者くらい作らないと、当主なんですから!」

「そんな事言うけれど、シトラはどうなの?婚約者いないでしょ?」

「私はリアム様が終わったら見つけます!!!」


相手、誰もいないけどね!と思いながら叫ぶ。……その言葉にリアムは、不機嫌そうにこちらを見て無言になる。……なんだろう、色気のある美形にそう見られると、怖いんだが。


「……僕とすればいいじゃないか」

「え?」


急に自分の視界がリアムの顔から、空へと変わる。……背中に当たるのは地面だろうか?リアムが支えながら倒してくれたのか、痛みは全くない。天気のいい空がしばらく見えていたが、ゴソゴソと音がなったと思えば、今度は空ではなく目の前にリアムの顔が現れた。


まぁつまりあれだ、私はリアムに押し倒されているのだろう。……そう自覚すると自分の顔がどんどん赤くなって行くのがわかる。どうしてだ!?そんなにも私に世話を焼かれるのが嫌なのか!?目の前の美しい顔面は、そのまま鼻が当たりそうになる位にまで近づく。……恥ずかしいなぁ!?


「……兄さんと仲直りしたのを報告した時、君に「愛してる」って伝えたの忘れたの?」

「…………え、でも、あの、それは」



劇の台詞だって!リリアーナさんが言ってました!!


「まさか、冗談だと思ったの?」

「………………」

「……あんなに僕に、口付けされておいて?」


困ったように眉を下げる仕草ですら、色気が零れ落ちて見える。……うん?あの時の事は、劇の台詞とか、ついでとかじゃない?………………え?マジのやつだった?





私はようやくその意味を理解して、今までの自分の態度に恥ずかしさが溢れて、耳まで赤くなっていく。そんな私を見たリアムは、嬉しそうに頬を染めながら笑いかける。


「ようやく気づいたの?…………全く、君は鈍感すぎるなぁ」

「あっ、え、あの………」


やめて!私を見ないで!恥ずかしすぎる死にたい!思わず顔を手で隠すが、それを片手で阻止され、そのまま両腕を掴まれ頭上に抑えられる。


「恥ずかしくて、いっぱいいっぱいなんだ?」

「………………くぅっ!!!」

「こんな顔しておいて、僕に気がないとか、そんな事ないよね?」


耳元で囁かれる熱を込めた言葉に、私は思考がショート寸前なのか、視界がぼやけ始める。


「攻められて、恥ずかしくていっぱいいっぱいで、声も出ないんだ?」

「………………う、」

「無言でも、顔は正直だよ?……すっごく可愛い顔してるよ?」

「……………クッッッッ!!!」


何だこれは!?耳元で囁かれる低音ボイスが身体中を痺れさせる………これが言葉攻めってやつか!?なんか恥ずかしくて、前の世界で手を出せなかった言葉攻めボイス音源を!今私はされているのか!?


あまりの恥ずかしさに目が潤み、目の前のリアムが更に見えなくなる。そんな瞼に、生暖かいねっとりとした感触が襲い掛かる。それで視界が良好になり、リアムを見るともう反対の目にも同じような感触が襲う。………あっ、これリアムの舌だ。



両目とも視界が良好になった途端、目の前に現れる頬を赤くした、恍惚したリアムの表情が襲い掛かる。………そのまま、オッドアイの瞳が熱を込めたと思えば、唇に、前と変わらない柔らかい感触が押し当てられる。




………私は、そのまま意識を飛ばしそうになったが、寸前の所で掴まれる腕に爪を立てられ意識を戻される。………………意識飛ばさせて………………。











かつての親友よ、貴女の息子は立派に育ったよ。………ごめんね、息子にいい奥さん見つけようとしたけど……………それ無理だわ。


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