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新婚夫婦と家で【ショーン視点】

ガヴェインとシトラが結婚後の話です


狼の獣人、ガヴェインという青年。

彼は突然大司教に連れられて、聖騎士団の一員となった。


最初こそ誇り高き聖騎士団員に、特例で入団した彼には抗議する者も多かったが、彼の戦闘能力を知り、その声は無くなっていった。

彼は誰に対しても愛想良く話さない、何なら一切話さない。それなのに顔が良いから非常に女性から人気のある、そんな青年。


けれど、彼は唯一、シトラ・ハリソンの前では口を開き、そして笑う青年だった。






「まさか、婚姻するとは思わなかったけどな」


俺は非番を使って、教会の近くの町に来ている。穏やかな人が多く、自然に溢れた小さな町だ。

そんな町の、平民が暮らすには少し大きめ、煉瓦造りの可愛らしい家の応接室で、目の前にいる白髪の獣人を見つめる。……獣人は気まずそうに目線を下にする。


「………うっせぇよ」



それでも穏やかな表情をしているガヴェインに、俺は少し笑ってしまった。


俺がシトラ・ハリソンを昼食に誘った時、まぁ色々とあった様で、顔を赤くする彼女と共にガヴェインが来た時は驚いた。自分の隣に座らせてこちらを威嚇してきた時には笑えたが。

その後しばらくして、彼女はハリソン公爵にガヴェインとの婚約を願い出たらしい。……公爵は三日ほど寝込んだらしいが、夫人の後押しもあり、渋々、というかほぼ夫人が無理矢理了承したのだという。


そして先日の彼女の20歳の誕生日に、この町の小さな教会で、公爵令嬢の結婚式とは思えないほどの小さな結婚式を挙げた。


「あの時のお前の顔、今でも思い出して笑っちゃうよ」

「………」

「ドレス着た奥さんみた途端、嬉しさ噛み締めてニヤけてたもんな?」

「………」



どうやらこれ以上言っても無言を通す気だろう。顔は真っ赤なので恥ずかしがっているのはわかるが。……ふと、外から女性の笑い声が聞こえる。それにはガヴェインも気づいたのか耳をピクピク動かして窓の方を見る。


「シトラちゃん、この前たくさんジャム作りすぎちゃって、良かったら食べて」

「え!いいんですか!?やったー!いちごのジャムをのせたパンケーキ!旦那さん大好きなんですよー!」



そこには平民の格好をした彼女が、町人に声をかけられ喜んでジャムを受け取っていた。……俺は信じられない、という表情をしながらガヴェインを見つめる。


「…………パンケーキ、好きなのか……?」

「……………」


耳をペシャリと垂らしながら、更に赤くなった彼を見て、俺は笑いを堪えて震えた。すると気配を感じたのか、彼女が外から窓を覗き込み、そして俺を見つけると嬉しそうに手を振り笑顔になる。……正直、ガヴェインがいなかったら、俺も狙っていたと思う。


「おい、俺のだからな」


それに気づいたのか、先ほどの可愛らしい表情はどこへやら、唸り声を上げながらこちらを威嚇している。俺はわざとらしくため息を吐いて彼を見る。


「お前なぁ、独占欲強いと、奥さんに愛想つかれるぞ」

「愛想つかされても逃がさねぇから、良いんだよ」


……思わぬ執着心を見せられて、俺は何も言えずに顔を引き攣った。……恋とは、ここまで人を変えるものなのだろうか。



「ガヴェインただいまー!ショーン様!お久しぶりです!」


ドアが開き、そこから先ほどまで外にいた彼女が、笑顔で応接室に入ってくる。ガヴェインはすぐに立ち上がると、俺に見せつけるように彼女の頭に口付けした。

彼女は突然の触れ合いに驚き顔をどんどん赤くさせていく。………なんだ、何を見せつけられているんだ俺は。


「ちょっ!ガヴェイン!?」

「お前、俺の事大好きだよな?」

「え!?」





そのまま「何か」が始まる前に、俺はいそいそとこの新婚夫婦の家から出ていく事にした。

新作もはじめました。「私を愛した神様探し」というタイトルです。

「望まれなかった聖女ですが、何か?」と同じ世界です。よかったらご覧ください〜!

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