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新婚旅行へ【ケイレブ視点】

隣で疲れたのか寝ている彼女を、俺は起こさない程度にそっと頭を撫でる。

かつての建国の聖女であり、この世界ではハリソン公爵家の令嬢だったシトラ・ハリソン。


彼女は先日、シトラ・カーターとなり、俺の妻になった。

今でも夢でないかと思ってしまう時がある。あのライバル達によく勝てたものだと。


結婚式当日、これ以上ないほどに美しい花嫁を見て、俺は今すぐ連れ去ってしまいたくなった。もう結婚式どころではない、連れ去って自分のものにしてしまいたかった。……それはかつてのライバル達も同じだったようで、夫婦初日の夜、「初夜を迎えられると思うな」とギルベルトとリアムに腹黒い笑顔のまま、他の男性陣と共に朝方まで飲まされた。

シトラは知らないだろうが、朝帰りした俺を母と妹は、「ありえない!クズ夫!!」など暴言の嵐を浴びせられた。本当にそうなので何もいえない。


それもあり、最愛の女性との初夜を逃した俺は、彼女と繋がるタイミングをずっと逃していた。


……だったのだが、それは唐突に、そして最高に愛おしい彼女により迎える事ができた。



「……どれだけ俺を、夢中にさせるんだか」



頭を撫でる手を、彼女の頬に移動させる。彼女は眠ったまま俺の手を掴み、そのまま自分から頬に擦り寄せる。…………駄目だ、抑えろ俺、流石にこれ以上は彼女が動けなくなる。


新婚旅行は彼女の希望もあり、カーター領にある別邸へ来ている。周辺にある港では漁が盛んで、ハリエド国でも珍しい魚を生で食べる習慣もあると伝えると、彼女が嬉しそうに「スシが食べれる!!!」と喜んでいたのが微笑ましかった。どうやら彼女がいた世界では、生魚をよく食べていたらしい。


なんとか衝動を抑えた俺は、されるままだった手を静かに取り、そのまま彼女を眺める。……そして、彼女の左薬指に嵌められた指輪を見る。



………自分よりもずっと前に、俺の祖先が、彼女に同じ場所に指輪をつけていた。



彼女はそれを受け入れていた。……かつての彼女が悲惨な最後を遂げなければ、俺は彼女に出会う事はなかった。俺と同じ「亜麻色の髪と灰色の目」の男を、彼女は愛していた。


彼女を心の底から愛している。だが、彼女はどうなのだろうか?……嫌われていないとは思うが、俺をダニエルのように、愛してくれているのだろうか?……それとも、俺は身代わりなのだろうか?




「………ケイレブ様、寝ないのですか?」



考えこんでいた俺は、彼女が起きている事に気づかなかった。

……眠たそうに目を擦り、トロンとした目で俺をみる彼女が、あまりにも庇護欲を掻き立てられて胸が締め付けられる。俺は咳払いをしてから、彼女へ微笑んだ。


「起こしてすまない、俺ももう寝るよ」

「そうですか……」


それだけ告げると彼女は急に抱きつく。驚き過ぎて固まっていると、そのまま彼女は寝具を引っ張り、そのまま俺ごと寝具の中に入れた。そのまま引っ付いている柔らかい彼女の感触に、一気に顔が赤くなっていくのがわかる。


「待て!シトラ!?このままで寝る気か!?」

「あ〜〜すっごくあったか〜い」


彼女の喋る唇が首筋に当たる。……これはいけない、本当に我慢ができなくなる。彼女の肩を掴みなんとか離そうと踠いていると、それを阻止するようにきつく締められる。彼女の方を見ると、不貞腐れているのか眉間に皺を寄せている。


「いやです、くっついて寝ます」

「お、お前なぁ……」

「ケイレブ様、あいしてます」


しれっと言われた言葉に目を大きく開いた。だが彼女は俺の耳元に唇を近づけ、言葉を続ける。



「かっこいい所も、やさしい所も、家族たいせつにする所も、仕事がんばる所も、騎士団よりつよい所も………あと、私をあいしてくれる所も、全部」

「……」

「ぜんぶ、……あいしてます」

「……っ」



体が勝手に動いで、彼女の唇に乱暴に口付けする。眠たそうな彼女も、流石に目が覚めたのか、大きく目を開いて何かを叫ぼうとしながら俺の胸を叩くが、それでもやめなかった。


長い長い口付けをやめて彼女の表情を見ると、恥ずかしすぎたのか耳まで真っ赤にして、目からは涙が溢れている。俺は体をずらして彼女の上に覆いかぶさる。


「ちょっ、ななっ、ななな何故!!?」


どうしてこうなったのか、全く分かっていない彼女に、俺は欲情する気持ちを隠せずに、表情に出てしまう。それを見た彼女の表情が、堪らなく愛おしい。



俺はそのまま彼女の顔に再び近づいて笑う。



「お前が全部悪い、観念しろ」

「ええええええええええええ!?」





その時の彼女の絶叫は部屋の外まで響いた。
















本当は今日は港へ行き、生魚の刺身を食べる予定だった。だがそれは彼女の体調不良により、翌日に持ち越しになる。寝具に包まる彼女はそこから「変態!」だの「体力お化け!」だの言っているが、……事実なので何もいえない。


とりあえず、機嫌直しに使用人に、街で美味しい菓子を買ってきてもらおう。そう思い使用人室へ向かった。

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