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才格の林檎  作者: 古田十日
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才在る林檎は罪深い-1巻-上編

罪の多い生涯を送ってきました、私には才能の必要性が皆目検討もつかないんだ、

だって人と違うことは罪なのだから


・才ある林檎は罪深い・

 7月、蝉の五月蝿い季節、嫌な汗をかきながら

私はベットの上で目を覚ます、馬鹿みたいな音量で時計が音を発している

時計を止める為に右腕を伸ばす、視線を時計に移す時

右腕に黒い物体を目にして、ベットから飛び起きる。

左手で右腕を振り払う、しかし黒い物体は取れず

急いで時計を止めると右腕に視線を集める

その物体は文字だった、人間・・、瞬きの間に文字は消え

何と書かれていたのかは、解らなくなった

私はそれらを幻覚と一言で表すと考えるのを辞めた。

途端に自分の体がべた付く感覚に襲われ、風呂場に急ぐ

私は服を用意すると朝からシャワーを浴びる。

普段はそんなことしない、今日は特別だ

今日は人生で一番楽しい、めでたい日なのだから

浅草に10時彼の女のために彼女の為にも遅れる訳にはいかない

今の時間は何時だ?時計は9時を指す・・・・。

急いで家を出ないと、そう私は想うと

鞄、財布、スマホ最低限の装備を持つと駅に急いで向かう。

改札を抜けホームで待っていると、時間通りの電車に乗り込む

9時過ぎなのでチラホラと席に空きが見える

空いている席に座るとポケットからスマホを取り出し

イヤホンを挿すと音楽を流す、哀しく、切なく、悔しい

そんな音楽を聞き、只々電車に揺られ目的地に向かう。

途中で乗り過ごしそうになりながらも無事、浅草に到着する。

駅を出てすぐの案内板に背中を預けるとスマホで時間を確認する

集合時間まで残り5分もある、ゲームアプリを開くとデイリーを進めて行く

全部完了させてまた時間を確認する気づけば集合時間からもう7分も過ぎている

SNSを確認すると彼女から、「寝坊した」と一言送られて来てるのを見つけ、

安堵する、私は「解った、気おつけてね」と送ると先程とは違うゲームを開き

デイリーを進める、時間を忘れスマホゲームに夢中になっていると

不意に左側から手が飛び出てきて、私とスマホの間に入り画面を見えなくする

視線を左に移動させると少し茶色がかった長髪の女性が、頬を崩し立っている

私の、可愛良い彼女だ、彼女は「おはよ」と言い笑顔を見せる

私は、彼女の可愛さに心打たれながら「おはよ、どこ行く?」と返した

今日の彼女の服装は学校指定のジャージにも関わらず私には彼女が輝いて見えた。

私が間の抜けた顔をしていると、彼女はまた頬を緩めて

「今日の唯笑可愛い?」と私に問いかけた、その問いに私は間髪入れずに

「勿論、凄く可愛い、天使と見紛うほど」と答えた。

私の答に彼女は首を傾げてこう呟く「見紛う?」

私はその呟きを聞き途端に小っ恥ずかしくなり、顔に熱を感じる

私は言葉に詰まりながらも口を開き声を絞り出す

「見紛うって、見間違ったってこと、俺には唯笑が天使に見えたの、ただそう言いたかったの」。

彼女は顔を真赤にして私の肩に拳をぶつける、そして私の手を引っ張り

「行こ」そう言った。

私と彼女は、大学芋や団子、芋キン、甘味処を順繰りに食べ進めていく

7店舗周り終わり少し休憩のために裏道に入る

食欲を掻き立てられる匂いにつられ足を止める

香りの元を探すと視界の端にケバブ店が映っていた

私の胃袋はケバブを欲していた、彼女を探し振り返る

そこに彼女の姿は無かった、私は焦りを覚え辺りを見渡した

すぐに彼女を見つけた、俺が焦っている間にケバブを買って此方に歩いて来ていた

私の前で停まるとケバブを差し出し「ほら、買ってきたよ甘口」と言った。

私は右手を伸ばしケバブを受け取ると「ありがとう」そう返した。

足に痛みを感じて、座る場所を探そうとスマホを開く、時刻は12時24分

通知が一通、送り主は妹の日向からだった、何かあったか?

その時唐突に右手から重さが無くなる、スマホから目を離し、ケバブの行方を追う

彼女の両手にケバブの姿があった「早く追いで」そう言い終わると駆け出した

私もスマホをポケットにしまうと、彼女を追いかけて走り出す。

大通りの信号で追いつき、ケバブを取り返す、しかしケバブは既にカブリつかれていて量が減っていた、まあ別に彼女が買ったんだし良いかと思いながら一口食べる

私の左側で「ひゃっ」と彼女の声が漏れる、次の瞬間、耳元で「間接キス」と聞こえ、思わず吹き出した、文句を言おうと彼女の方を見ると、彼女は顔を赤くして自分の頬をいじっていた、私も急に恥ずかしさを覚え、手に持っていたケバブを口に詰め込むと飲み込んだ、スマホを開くと、インターネットで近くの公園と検索を掛ける、幸いすぐに見つけ、彼女の手を引き歩き出す、だが大通りの信号で足止めを食らう、彼女も落ち着いたようでケバブを口に頬張る。

その様子を見届け、私は先程のメールを確認する、やはり妹から連絡が来てる?

今日は母親が付き添ってるはずだけど、内容は?・・・・。

妹「お兄ちゃん私に落書きしたでしょ(╯°□°)╯︵ ┻━┻」

妹「左腕にタナトスって、拭いても落ちないんだけど(ノ`Д´)ノ彡┻━┻」

私は困惑を覚えながらも今朝のことを思い出し、右腕を確認した

そこには【人間失格】と書かれていた・・・・。

人間失格って失礼だなと思ったが、遠回しすぎると思い少し考える

普通に太宰治の方だよな、と我に返る、いきなり彼女の叫び声が聞こえた気がした

だから、私は彼女の方向に振り向こうとした、しかし道路の方で爆音が鳴り響き

仕方なく道路に視線を向けた、しかし手遅れだった、眼前には既にトラックがいた。

俺は咄嗟に両手を前で構え、目を閉じる、何かが腕を弾き飛ばし、俺を中へと誘う。

俺は死ぬのか・・・・。嫌だ何で俺なんだ、なんで死ぬ、俺はルールを守ってきた、なのに何で?嫌だ死にたくない、嫌だ何で俺が、(止めろ)、俺は生きたい

生きていたいんだ、(まだ引き返せる)、【嫌だ死にたい】、(駄目だ此処で死ね)

嫌だ俺は生きるんだ・・・・。【今のままだとお前は死ぬ】、(止めろ辞めてくれ)

何を犠牲にしても、生きたいんだ、(もう終わりだ)、【ならば唱えよ】

何を?、【お前の才能を】、俺の才能って?

【お前の頭の中に在るその言葉だ】、だからどれだよ

【・・・・・愚者から借りてる、その才能のことだよ、太宰の才能、人間失格】

          愚者「人間失格」

静かに目を開く、地面を近くに感じる、俺は上半身を起こそうとした・・・・・。

しかし何も起きなかった、もう一度試した・・・・。しかし何も起こらなかった。

落ちそうな意識を必死に抑えて、目線だけで彼女を探した

想ったより簡単に見つかり安堵する・・・・・どうするか、そう考えた

「・・・・・ンガーの猫」彼女の声が聞こえた気がした、視界が黒一色で染まる

、体から痛みが抜ける、俺は手を付き立ち上がった、手を前に伸ばし障害物を確認する、目が乾き瞬きをする、黒一色の世界から普段の景色に戻った・・・・。

彼女はもうそこには居なかった、俺は膝から崩れ落ちた、

彼女が消えた、彼女の居た場所には地の池が出来ていた、俺が最後に願ったことは

どんな犠牲を払っても自身が生き抜くこと、俺はゴミクズだ。

彼女のいない世界で、俺はどう生きていけば良いんだろう、そもそも俺は何者なんだろう、彼女の笑う顔が好きだった、彼女の恥ずかしがる顔も好きだった

彼女のイタヅラも、彼女の怒った顔も、彼女の・・・・・。

こんな命なければいいのに、こんな世界なければいいのに

俺の頬を温かい水滴が伝う、俺は叫んだ、俺は泣いた、俺は怒った、だが何も変わらなかった、ただ俺の声が枯れ体力を奪い、そして服の袖を汚しただけだった。

俺は軽く咳き込むと、前に倒れ意識をなくした。


・夢か現か幻覚か・

 重いまぶたを開ける、いつの間に寝てしまったんだ?と思いながら

目をこする、高い天井にホコリの被った電球がぶら下がり

その付近を大きい蝿が死んだように止まっている

背中に硬い地面を感じる、床に直で寝ているようなので、後々体に響きそうで恐怖を覚える、状況を知るために俺は上半身を起こすと周りを見渡した。

まず正面の壁、特に何も無い綺麗な壁、表面はなめらかで僅かに電球の光を反射している、

材質は多分、鉄じゃないかな?そう予想した。

次に向かって右側、壁は先程と同じで壁には、備え付けの簡易ベットがあるが

マットレスの摩耗が酷く変色もあるため、嫌悪感を覚える

今後使われることはないだろう・・・・・・・きっと。

次に左側の壁、壁の材質多分同じ、俺の腰の高さ程の本棚があり本がニ冊入っている、白と黒一冊ずつ、中身は白紙。

最後に背面、勿論壁の材質は同じ、そして扉の様なものがついている

扉のようだを形容したのには理由がある、長方形の切込みが在るモノの

ドアノブ、鍵穴、のぞき窓などが一切ついていない、開く気配はないし

押しても開かなかった。

扉っぽい物の右側に、頭一つ分位のサイズの鏡がかかっていた。

目線を下に向ける、自分はゴワゴワした着物を二枚重ねで着ていた、

そこから突き出した四本の手足は黒ずんで多少のベタつきを覚える

早急に風呂に入りたい気分だ、とてもキタナラシイ。

何かが可怪しい、俺の手こんな大きかったか?

俺は手を付き立ち上がると、鏡の前まで歩み寄ると、恐る恐る、鏡の中を覗いた、

俺は状況を飲み込めず、鏡の中の人物と見つめ合っていた、鼻は尖って・・・

眼にはクマがあり・・・・顎髭がモジャモジャと伸びて・・・・・・・

頭髪がアンテナのように伸びきっている。

・・・・「俺はこんな男を知らない、こいつは誰なんだ?」・・・。

胸が荒々しい音を鳴らす・・・呼吸がそれに伴って荒くなる、息を飲み、

俺はもう一度鏡を覗き込む、やはり映る姿に覚えはない、記憶をほじくり考える、

・・・答えが出ないどころか自分自身のことを何一つ覚えていない・・・・・。

どこで産まれ、どこで育ち、何をしていたかも、自分の名前さえも・・・・。

俺は髪を掴み下を向く、大きく息を吸い込み叫んだ・・・・。

しかし叫び声は虚空へと消える、何度も、何十回も、何百回も声を枯らし

喉を壊し、それでも叫び続けた・・・・・・・・・・・。

・・・・何時間立ったのだろう?・・・。俺の喉はもう音を発さない

意識もはっきりしない、吐き気も感じる、汗をかき肌寒さすら感じる。

一時の不安を覚えながらも、休むために扉を背にして、俺はまぶたを閉じた。

 目を覚ます、腰が痛い、どうやらベットの上で起きたようだ・・・・

ベットの上?・・・・まずいかも・・・。

俺は飛び起きるとすぐに身構える、だが見た限りでは部屋には誰もいない

恐る恐るベットの下を覗き込んだ・・・・本がニ冊落ちている・・・・?

本棚を確認する・・・本は一冊も置かれていない、しかし本棚の上に皿と林檎とナイフが増えていた

・・・・あんな物置いてあったか?・・・・。

俺はベットから降りて、本棚に近づくと、ゆっくりと林檎に触れる・・・!!?

触れた途端に林檎は粉々に崩壊する、驚きを覚えながらもすぐにナイフにも触れる

ナイフは崩壊することなく触れることが出来た・・・・。

このナイフは特に変な点は見つからなかった、ナイフから手を話した瞬間

背後から、「ガタンッ」と音がなる、俺は急いで振り返る・・・・・・・。

視界の風景が一変した「・・・ガタンッ・・ゴトンッガタン・・・」列車の中?

どこかを走行する列車の座席に座っているようだ、他に乗客は一人

目の前の席に座っている、服装は着物に円筒刑の帽子、長袖の上着

教科書で見たような・・・・・・・思い出した明治時代の装い?だったような

それ以外の情報が無い、仕方なく声をかける

「こんにちは、ここはどこですか?、あなたは誰で・・」

言い終わる前に、人影は口を挟む「まだ、その時ではない」

そんな声が聞こえた気がした、急に後ろから引っ張られる

俺は体制を崩し、後ろに倒れこむ、意識が段々と薄れる・・・・・。

 目を覚ます、いつもと同じ天井、またこの部屋か

そう思いながら上半身を持ち上げる、あたりを見回す

本棚の上には皿とナイフ、ベットの下にニ冊の本・・・・・ん?

扉右側の鏡が割れていた、何で・・・・誰が割ったんだ?

何かがこの部屋に居るのか?一日目の時点で既に可怪しいかった

俺は扉に寄りかかって寝たはずだ、俺をベットに運んだのは誰だ?

落ち着け、深呼吸だ、そもそもの大前提が間違っている

人間である可能性は全然高い、一日目に確認していない場所がある

・・・・・・・・・・・・ベットの下だ、気分が悪くなり

吐き気を感じる、その考えを否定するように、ここは夢の中である

そうでないといけない、そうなんだ・・・・・・・。

ここで一番の問題が見つかる・・・・夢ってどうやって目覚めるんだ?

・・・・・確か、夢の中で死ぬ、夢の中で寝る、夢の中で時間が経てば目覚める

これが割とメジャーな気がする・・・・どれも起きれる保証はない

一番目は、そのまま死にそうだし・ニ番目は、夢の中の夢に入り込みそうだし

三番目は、不可能な気がする、時間が経つことで状況が変化している気がする

・・・・少しの間、俺は思考をまとめていたが、また意識を刈り取られ

後ろに倒れる、背中に痛みを覚えながらも、俺は気絶した・・・・。

・・・ブウウーン・・・ウーンン・・・・・ブウウーン・・・・・・。

俺が目を覚ました時、虫の羽の音が耳に入って来る

付近を見渡すと一匹の虫が中を舞っている、その虫に目を凝らす

それは蜂であった、俺は恐怖を覚え、すぐに何とかしないと刺される。

 俺はベットの下に本があったのを思い出し、ベットの下を覗く

黒と白ニ冊の本、手に取ると黒色の本を右腕で振りかぶり

蜂に向け投げつけた・・・パリンッ・・・蜂は本を避けた

本は回転して扉横の鏡を破壊した、頭が割れるように痛み出し、俺は頭を抑えた

何かが変だ、俺は何時からここに居るんだ?、昨日が明日、今日が昨日・・・・。

それよりも蜂をどうにかしないと、蜂はどこだ?

あれ?・・・・視界がゆがむ・・・・これやらかしたかも・・・・意識が・・・。

朦朧とする意識の中・・・ブウウーン・・・・という耳障りな音は聞こえ続けた。


 目を覚まし行動する・・・・俺はナイフを腹に刺した・・・ナイフは砕け散った

目を覚まし行動する・・・・着ている服で自分の首を絞めた・・・・・・・・・・

目を覚ました行動した・・・・・・・目を覚ました・・・目を・・・・・・。

行動を起こし、時に死に、時に普通に寝て、意識が刈り取られ

それでも夢は覚めなかった・・・・疲れた・・・苦しい・・・死ねない・・・。

死んだらベットから再開、こんなモノ生地獄でしかない

本はニ冊とも白紙、扉は押しても引いても開かず、豆電球に変化もなし

蜂は、死んでいた、本棚の裏にも何もないし、どうすれば良い?

出れない・・・・起きれない・・・・助からない・・・・・・待てよ。

試してない方法が一つ、時間も駄目、寝ても駄目、吊っても駄目・・・・。

・・・・・・・・・後は、刺殺だけ・・・・本は破っても元通り・・・。

「でも鏡お前は割れたまんま、まるで使ってくださいかと言わんばかりの」

鏡の破片を右手で持ち、左手を添える、中々に硬く、先が鋭く尖っている

俺は前に引き、ためらわず腹に突き立てる・・・・・痛い・・・。

ポタッ・・血が破片と腕を伝い地面に落ちていく・・・地面に赤さが広がる

喜びを噛み締めながら、俺は前方倒れ込み・・・眠りについた。

・・・・・・・ガタン・ゴトン・・・ッガタン・・・ゴトン・・・・。

体が揺れている感覚、瞼を開く、電車の一席で目を覚める混雑した列車内を見て

ため息をつく、顔をあげると、先程の人だかりが消えて、目の前の座席

一人の男が座っている、その男に見覚えがあったがどこで見たのかは思い出せない

恰好は、やはり明治時代の着物&帽子、やはり見覚えがある、俺は男に尋ねる

「あなたは、いつからそこに?」ただそれだけを聞いた・・・・・・・。

彼は笑みを浮かべて口を開く、その声は見た目によらず無邪気で若い気がした

「君が来る前か、後か・・・その答にさして違いはない」

俺は嫌悪感を覚える、しかし彼は口を閉じない

「いまの自分には幸福も、不幸もありません」そう言った。

俺は困惑する、彼はまだまだ続ける

「君、良い自殺のやり方は無いかい?」

一瞬戸惑うが率直に答える「知らない」と。

彼は不機嫌そうに顎に手をやり、少しの間沈黙が流れる・・・・・。

彼は不気味な笑みを見せるとまた問を出し始める

「君は、人間らしさとは・・・・何だと思う?」・・・・・・・・。

俺は困る、簡単な質問だが答えたくない、俺の回答は・・・・

他人と同じであろうとすること、だけどそれだと俺は人間とは言えなくなる

だが俺は人間でありたい、だから答えたくない、答えられない・・・腹部が痛む。

悩む俺を見て、彼は満足そうに笑い口を開く・・・・・。

「私は、愚かさだと思う・・・・・・・・・」彼はそう言い終わると笑みを止めた

「そんなことより、終点だ、出口は右側だ・・・」

彼は席を立ち、いつの間にか開いた扉の前に立つ、俺の方を向き手招きをした

俺は覚悟を決めて、席を立つと彼の付近に近づき、扉の外を覗く・・・・・。

視界の先には只々白い部屋が広がり、真ん中に洗面台が一つ

不意に彼の声が後ろから聞こえる「早く降りなよ」俺は後ろを振り向いた

しかし、それより先に彼が俺の背中を押す、後ろを向こうとしていた為

足を絡ませ俺は転けたる、彼が手を伸ばし起き上がらせようとしてくれる

好意に甘え彼の手を掴む、少し手にぬめりを感じるが起き上がることには成功する

俺は右手を見る・・・・・・・・真っ赤になっている、エグい悪臭が右手からする

彼は「すまなんな、血がついていたようだね、あそこの洗面台で洗いなよ」と言う

俺は進められるがままに洗面台の前に立つ、手を洗うために蛇口をひねる

水が勢いよく赤さと一緒に排水口に消えていく、俺の手は綺麗に洗い流された

一文を除いて(人間失格)右腕にそう書かれていた、突如目の前の鏡が割れる

俺は腰を抜かす、彼は俺の目の前にある破片を掴むと俺に差し出した

俺はまた困惑する、彼は破片をさらに俺に近づける、そして口を開く

「ここから出る鍵だ、さあ受け取って使え・・・・早く」

俺は受け取らなかった、彼はため息を付いて、俺の後ろに回り込む・・・・。

首筋に鋭い痛みが走る、彼が破片を俺の首元に押し当て引き切ろうとしていた

「何してんだよ」俺は声を荒らげ暴れた、しかし彼は気にもとめず腕を動かす

「止めろって言ってんだろ、これに何の意味があるんだよ!!?」

俺は激痛で叫ぶ、こんな時に彼は笑みを浮かべそして冷静に答える

「脱出の鍵だ・・・・・・さあ、人間失格と言え」俺はさらに暴れる

しかし彼が離すことはなく、ただ冷たく「早く言えよ、死んじまうぞ」と言った

俺は震えた声で「人間失格」とつぶやく、右腕の文字が淡く発光する

それを見た彼は、破片を手前に引き切る、視界が赤く染まる、頭が回らない

息ができない、意識が遠のく、彼が最後に

「ただ一歳は取っていきます、お前は今年で十九歳になった」

そう聞こえた気がした。


・国鳥と平和を・

 男の話し声が聞こえる、騒がしい何を怒っているのか?

・・・・・目元になにかの感触を感じる、手を伸ばしそのなにかをどかす

目を開く、手の中にある物を確認する・・・・「アイマスク?」

俺はアイマスクをつけて眠っていたと言うことは取り敢えず解った

辺りを見回す・・・・・病室?のベットで目を覚ましたようだ

隣の部屋から男の話し声が聞こえる、やっと戻れたそう実感する

不意に窓の外に視線が行く・・・・・・雪?・・もうそんな季節なのか

ベットを降りて窓から外を覗く・・・ここはどこ?

窓の外に情報はなかった、ビルも家屋もコンビニも、何一つとして存在しなかった

あるのは広大に広がるただ白い景色だった・・・・本当に戻ってこれたのか?

・・・・気がつけばおtこの話し声が消えていた・・・・・。

「カラカラ」と音を立て部屋の扉が開く、入口を振り向くと

サングラスを付けて、筋肉質タンクトップな、柄の悪い男が入ってくる

俺は慌てふためく、俺を見た男も明らかに焦りだし、上着のポケットを漁り始める

殺される、総直感し、急いで辺を見回す、毛布の下に何かの破片を見つける。

その破片を握り、破片の先を男に向ける

それを見た男は両手を見えるように上げ、「ストップ」と言った。

そしてサングラスを外し「ゴメンな」と呟き、左手で銃の形を作り俺に向けた

男の左腕が淡く光る、俺は息を呑んだ、その光景に見覚えがあったから

俺は恐怖で頭が真っ白になる・・・・目をつぶり、身体を小さくして身構える

痛い・・・・・首筋に鋭い痛みを感じる・・・・怖い・・・・痛い・・・辛い

・・・苦しい・・・何で・・・「人間失格」・・・俺は目を開く。

眼の前の男は、首元から赤い液体を飛ばし倒れる・・・・。

「ヤった?・・・今、何が起きた?」俺が殺したのか?

本当に死んだのか?死んだ振りしているだけでは無いのか?

破片を握りしめ、一歩・・一歩男に近寄る・・・。

破片を握りしめていた右手から血が滴り落ちる、わずかに痛みを覚える

そのことを気にしないようにして、男に接近する、だが男は微動だにしない

自分の足で男の腹を押す・・・・・・・男は動くことはなく静まり返っている

かつてないほどの安心感を覚え、大きく息を吐くと、大きく吸い込む、

途端に鉄錆に似た悪臭を鼻で嗅ぎ取り、人が死んだという事実を感じる

俺が殺したのか?・・・胃から何かがせり上がり口の中が酸味がかる

とても今吐きそうだ、喉まで来ているそれを根性で喉奥へと追いやる

そんな努力も虚しく、半透明の液体を吐き出す・・口元を毛布で拭い取る

「大丈夫か?」背後から女性の声でそう問いかけられる

俺は急いで振り返る、そこには、ワンピースにYシャツ、ネクタイを付け

黒髪ロングを後ろで一つ結びにした高身長な女性が立っていた

俺は握りしめていた破片を彼女に向ける・・・・・・。

彼女は何事も無いかのように俺に接近する、そしてを前に出すと、

握り締め「私の一年間を賭ける」そう言うと右腕が淡く発光する

彼女が手を開く、コインが2枚置かれている、

コインの模様は半分のハートと、半分の林檎が合わさったデザインをしている

それを見せ彼女は笑い「これが私の才、時は金成り」といった

俺は困惑する、この女性がいきなり何を言っているのかわからなかった

彼女はコインを俺をめがけて投げた、咄嗟に俺は避ける、女性の舌打ちが聞こえる

彼女の方に急いで視線を戻す・・・・親指で俺の居たほうを指差す

俺はゆっくり指さされた方を向く、俺は信じられないことを目にして、息を呑む

時が巻き戻る、先程の男に血しぶきが吸い込まれていき、傷口が綺麗に塞がる

急いで彼女の方に向きかえると一つの疑問をぶつけた「何故俺に詳細を話した?」

彼女は苦笑しながらその問いに答える・・・「私は死ねないの贖罪を終わらすまで

それに私は非戦闘能力者、君の才能は位が違うから、私では勝てない、だから」

俺は一つの部分に疑問をまた抱える・・・・位ってなんのことを指している?

「才能の位ってな・・・・」言い終わる前に男が目を覚まし、俺と目が合う

俺止めがあった男はまた慌てだす、俺も急いで破片を向ける

男は急に冷静になり左手を銃の形を作ると俺に向ける「ゴツンッ」鈍い音が響く

男の頭に彼女の拳が突き刺さる、男は床を転げる

「命を無駄にするなドアホ」そう彼女は怒鳴りつけた

男はバツが悪そうだった、そのまま正座で座ると彼女に土下座をしていた

あまりの態度の変化に思わず笑ってしまう、それを見た二人も笑った

 彼の名前は夢地、元警察官で所持してる才能は<ドグラ・マグラ>

対象者を特殊空間に閉じ込める能力

 もう一人は佐々木さん、この病院の管理者で所持してる才能は<時は金なり>

自身の寿命を換金して、コイン一枚に付き対象者の時を5分巻き戻す

ここは東京都杉並区に当たる場所・・・2025年7月25日(金曜日)・・・・

世界中で才能の暴走が始まる・・・・・東京は砂の街と化した・・・・・。

ヴァークリエルと言う人物の才能によって召喚されたものである

ということを詳しく説明をくれた

俺は右腕に応急処置を受けると、三人で部屋をあとにする

廊下に出ると、少し肌寒さを感じ肩を震わせて居ると

夢地が自分の腰に巻いていた服を俺の背後から着させて頭を軽く叩き

「辛かったら言えよ」そう言った。

少し歩き階段を降りる、一階まで降りると受付のカウンターを抜ける

奥に進んでいくと会議室と書かれた扉の前に立つ

夢地がドアノブに手をかける、しかし開こうとしない・・・・。

少し沈黙が続いた後、俺を指差し「風呂!・・・行くぞ」そう言った

俺は視線を自分の体に向ける・・・・服には赤い塊がこびりついている

俺は、直に意図を理解する、俺もこんな格好のやつとは仲良く出来ないわ

夢地は俺の手を引きさらに奥に歩いていく、背後の佐々木さんを見た

佐々木さんは手を振り会議室の扉に消えていった。

夢地は宿直室の文字の在る部屋の前で止まる、扉を開くと中に入る

入ってすぐ右側の部屋の扉を開く・・・・洗面台・洗濯機・衣装棚

その奥に開いた扉があり、扉の先には浴槽とトイレが一つになってあった

夢地は、「その服もう着れないから新しい服探してくる」と言い俺を残し

部屋を出ていった・・・これ俺何してればいいの?・・・・・・・・

俺は洗面台の前に立ち鏡を覗き込む・・・俺の顔だよな・・・。

あの一件以来、自分が自分ではないと思うことが多発している

とても不気味だ・・・・この身体は俺のモノなんだろうか?

・・・夢と現実の違い・・・・・何があるんだろう。

 少しの間考えていると夢地が帰ってくる

服を衣装棚の上に置き、衣装棚を開きタオルを取り出すと服の上に置いた

夢地はその行動を終えると出口の扉を開く

「会議室で待っているから終わったら来てね」と言い残し部屋を出ていった

俺はそれを見届け服を脱ぐと浴室に入っていく

血と汗と身体のゴミをシャワーで洗い流し、髪・顔・体・足、泡を流す

扉を開けタオルを取り、身体の水滴を拭き取り・・・・浴室を出る

夢地が持ってきた、Tシャツと短パン、ジャージを着ると入口に向かう

入口にあるスリッパを履き宿直室を後にして、会議室に向かった

 会議室の前で扉をノックする、聞き覚えのある声で「どうぞ」と言われた

・・・・・・・・・俺は恐る恐るドアノブをひねり部屋に侵入する

中の様子は、会議室だけあって長机と椅子が、かなりの数置かれていた

長机の上には、菓子パンやケーキ、炭酸飲料にジュース等の嗜好品が並び

部屋の中に男女計七人の人間がそれぞれの席に座っている

そのうちの二人は、夢地と佐々木さんである、佐々木さんは俺を手招きする

やはり先程の声は佐々木さんで間違いないだろう、俺は部屋の中央に歩き出す

ここで異変に気がつく、人数が七人から六人に減っている

代わりに机の下に黒猫が一匹・・・・・まさかね。

俺の視線に気づいたようで黒猫がこちらに向かい歩いてくる

俺の前で停まると四秒間俺の顔を見つめ、ため息を付いた

「私の名前は、坂井怜名、才能は(吾輩は猫である)能力は・・・・

見て分かる通り黒猫に変身する能力やで、よろしく」

いきなりの自己紹介で少し驚くが俺も軽く自己紹介を返した

「はじめまして、俺の名前は・・・・・まあ適当に読んでくれ

才能は(人間失格)能力は・・・・・ちょっと俺も把握していない」

黒猫も返しに困ったのか、緊張を解すためなのか、茶化してくる

「・・・・名前無いなら、ナナシでいいかな、それとも名前はまだないにする?」

俺も名前を思い出そうとするがやはり一ミリも頭に浮かばない

「・・・・・他の名前で頼む」俺はそう言った

黒猫も困ったようで「また後で決めようか」そう言い、長机の方に戻っていく

黒猫に手招きされ、後ろをついていく、黒猫は、とある少女の膝に乗った

その少女はとても幼く見え、目元と右腕に包帯を巻き、とても痛ましい姿

俺は、とてつもない虚無感を覚える、何が原因で彼女は・・・・。

少女は黒猫の尻に手を回し抱きかかえると、もう片手で頭を撫でた

黒猫は気持ちよさそうに頬を緩め、話を再開した

「彼女の名前は、神大寺’命、才能は(三重苦)彼女は付近の生物の声と視覚と聴力を奪う、彼女を含めた生物のね」

俺は黒猫の言葉の審議を疑った、今までの才能は本人に特になる

そんな能力だったのに、それではただの害なんじゃないのか

俺は、自分がどんな犠牲を払っても死なないことを望んだ・・・。

考え込む俺の頭に小さな手が乗り横に動く

俺の頬をなにか温かいものが滴る・・・とても温かく懐かしい感じ。

俺は泣いていた、後ろから抱き寄せられる、涙が溢れ出した。

しばらく、慰められ少し時間が立つ、佐々木さんに連れられ歩き出す

部屋の隅で暴飲暴食を続けている女の子の前に立つ

寒気がする・・・・・彼女を見ると逃げないとそんな気持ちが溢れ出る

彼女は、人間なのか?左腕と右足があるはずの場所に糸の集合体のような物体があり、右眼に瞳は無く、鋭い歯と細い舌がチョロチョロと獲物を探している。

彼女は俺に気づくと席を立つ、死を身近に感じる・危険・・怖い・・・・

彼女は口を開く「奇っ怪な少女を目撃したあなたはSANチェックです」と

そう言い終わった彼女は満面の笑みで笑う、俺の膝も笑っていた、逃げないと

体が動かない・・・俺は逃げようとした・・・・・俺の身体は動かなかった。

彼女の左腕の紐が俺の頬に触れる、心臓の鼓動が早くなるそして息苦しくなり

口呼吸になる、彼女の声が途切れ途切れ聞こえる

「私・・前は、ヴァ・・リエル・・・、クト・・・能・・・・ろしく」

彼女は言い終わると黒猫の方に向かい歩いていく、後ろ姿を見送る

・・・・・・彼女から離れたことによって、吐き気が引いてきていた

佐々木さんは俺の背中を擦りながら、俺に声をかけた

「彼女の名前は、ヴェル、名前と記憶、右足と左腕と右眼を捧げ

神と契約した子供、契約した神の名前は・・クトゥルフ」

佐々木さんの顔に笑顔は無く、苦しそうに見えた

佐々木さんは二人に人物に手招きする

姉弟?小さい男の子が褐色肌の女性の後ろに隠れている

男の子が口を開く「・・・・鈴木錬時、9才」

そう言い終わると女性の後ろに隠れてしまった

女性が・・・・・口を開いて語りだす・・・・

「私は、島津真希、マキちゃんって呼んでね

才能はサポート系だ、よろしく」

・・・・サポート系?・・・

取り敢えず疑問を一つずつ解消していこう・・。

「姉弟ですか?」マキは首を横に振る

姉弟ではないのにくっついている・・・・・・・。

・・・・・いやこれ以上考えるのはやめよう

「サポート系って?」マキは食い気味に俺の問いに答える

「バッファーですよ、才能名は(風林火山)

速さ、火力アップ、範囲強化などを付与する能力強いでしょ」

マキはまだ話がしたいみたいで俺の左腕を掴む

「スパンッ」連時がマキの頭を叩き「お姉ちゃんハウス」

と言うとマキの襟を掴み、元いた席に戻っていった・・・。

俺は直感した、弟がしっかり者で、姉がバグってる人なんだな

全員の事を知れたかな、佐々木さんと命ちゃん、錬時君はいい人

夢地と怜名さんはよく解らない人・・・・・・・・

ヴェルとマキさんは、出来るだけ距離を取っておきたい人。

今のところ、こんな感じの評価かな、今は取り敢えず楽しもう。

 乾杯し、ケーキを食べ、なんでもない話をして、楽しんだ

外がだいぶ暗くなった頃、解散をしようと夢地が提案した

そのまま、解散かと思いきや、夢地が発表することがあると言う

「明日の当番を発表する」洗濯や買い出しとかかな・・・・・。

夢地が、発言をする「洗濯・掃除、マキと錬時」

マキが「はーい」と大声を上げる、錬時は頭を抱えていた

夢地はそんな反応を楽しみ口を開く「防衛・警備、怜名」

黒猫は耳を後ろに倒し、尻尾を立てに伸ばしていた

夢地は続けた「経理・点検、未来」

俺の名前がまだ出てこない、いつ出るんだ・・・・身構える

「最後、買い出し、ヴェルと新入り」と聞こえてきた・・・?

怜名が机の上に乗り、夢地の方を向き、問いかけた

「あんたは、明日何担当するのよ?」

夢地は高らかに答えた「睡眠係だ」

その瞬間、夢地の頭に佐々木さんの拳が入り、腹に錬時の蹴りが入り

足に黒猫が噛み付く、中年男性の悲鳴が響き、夢地は地面に崩れ落ちた

夢地を放置して、続々と部屋を後にした・・・・俺も後に続いた。

流石に何かを言える雰囲気では無かった、なるようになれ

避けたい人物とペアになってしまった、正直かなり不安だが・・・・。

その後は佐々木さんに自室に案内してもらい、スリッパを脱ぐと

ベットで横になる、明日のことは明日考えよう、今は眠ろう・・・。


       

*才在る林檎は罪深い 1巻上 完*


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