表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スコーバレーの雪に照らせ  作者: 山手順一郎
5/9

このままでいたい

「春、そろそろ勉強しないと……」

「香乃、もう少し頭を撫でていて」

「せっかく春の家で一緒に宿題しようって、約束したんだから。私たち、高校生最後の夏休みなんだよ。はやく課題を片付けて、満喫したいと思わない?」

「私の学校は、香乃よりも宿題が少ないの」

「でも、私の宿題が進まないよ」

「もうちょっとだけ、このままでいたい」

「それは私も嬉しいけれど。甘えん坊な春はいつも、私のお膝の上に寝て、くっついてくれるけど、今日は長いから、足が痺れそう」

「慰めてほしいの」

「春、なにかあったの?」

「彼氏に振られた」

「え? うそ……」

「他に好きな人ができたんだって」

「佐久間君を許せない。春はこんなに可愛いのに」

「その浮気相手が私と同じくらい可愛い人だったの」

「知っている人なの?」

「私の、お姉ちゃん」

「……そんな」

「最悪な気分」

「美咲さんは、春の彼氏だと知っていて、佐久間君と恋愛関係になったってこと?」

「知らなかったの」

「いや、そんなわけないでしょう?」

「お姉ちゃんには、彼氏ができたって報告していなかったから」

「なんで? 仲がいいでしょ?」

「私のお姉ちゃん、旦那に浮気されて実家に戻ってきたでしょ。離婚について考えている人に、いうのは気が咎めたの」

「そもそも二人は、どうやって知り合ったの?」

「お姉ちゃん、近所のコンビニで働き始めたでしょ。そこが、佑くんのアルバイト先だったの」

「それじゃあ、佐久間君は美咲さんが春のお姉さんだってことは知っていたの?」

「それも知らなかった。籍はまだ抜けていないから、佐々木姓で気づかないよ」

「それで、春はお姉さんから知ったの?」

「うん。お姉ちゃんはすごく喜んでた。新しい彼氏ができたって。それで写真を見せてもらったら、私の彼氏だったの。そして次の日に私は振られた」

「……そっか。つらかったね」

「ありがとう。香乃はやさしいね」

「春だってやさしいよ。私が春のお兄さんと付き合ってこの家に初めて来たとき、春は気さくに接してくれた。恋愛の相談にものってくれたし、お兄さんが東京の大学に行って、別れることになったときには慰めてくれた。今度は、私が春を慰める番だよ。今日はずっと、甘えていていいからね」

「……甘えるだけでいいの?」

「うん。宿題はまた今度、一緒にしよう」

「そうじゃなくて」

「え?」

「私、気づいてるよ」

「…………なにを?」

「香乃、ドキドキしてるね。本当はね、彼氏がいたときに私も浮気してたの。友達と。私が躰をくっつけると、いつも胸が高鳴るのを感じていたよ。今みたいに」

「春……私っ」

「本当のことをいって」

「春のことが、好き」

「香乃。目を閉じて……」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ