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自閉スペクトラムな私 事件簿その2

作者: 辻音彦

私は人の名前を覚えるのが苦手だ。

しかし、人の名前を間違えて覚えるととんだ恥をかくことがある。

今回はそんな体験を記しておこう。


あれは大学時代のこと。

ゼミだったか語学の授業だったかで、たまたま好きな芸能人は誰かという話題になった。

みなアイドルやら女子アナなど次々と名前が出てくる。

私は、というとあまり普段からテレビを見ないので、名前が全然出てこない。

そうこうしているうちに私の番になり、とにかく何でもいいから名前を出してしまえ、とばかりに思いついた名前を口に出した。

「僕は安倍なつきが好きです。」

そう言ってしばらく沈黙が漂った後、ある男子学生から

「おまえ、AVの見過ぎ!」

と突っ込みをいれられた。

(しまった! 安倍なつみか)と思ったが、すでに時遅し。

「いや、それが分かるお前もAVの見過ぎだろう」

と突っ込み返して話を逸らせば良かったのだが、気が動転したのか

「昔、そんな名前の女子がいて、その子が好きだったんだ」

と小学生でもわかる嘘をついてしまった。

周囲を見回すと男子学生は笑っていたが、女子学生は軽蔑したような眼差しを向けていた。

本当に人の名前を間違えるとロクなことがない。


他にもまだある。

次はある会社に就職した時のこと。

新しく会社に入った時にやることの一つに同僚の名前を覚えるというごく当たり前の儀式がある。

私は入社したばかりで(よし! 頑張るぞ!)とやる気に満ち溢れていた。

そうして一人ずつ挨拶をして回っていったのだが、その中の一人に右京(仮名)という名前の人がいた。

(珍しい名前だな)と思いつつ、よし相棒の杉下右京の名前と同じだと覚えておこうとひそかにチェックしておいた。

さて実際に仕事が始まり、雑用やら何やらこなしていると、たまたまその人への用事が出来て、話かける機会が出来た。

私はさっそく先ほど覚えた名前を思い出そうとして、ふと立ち止まった。

(あれ、杉下右京だっけ、小松左京だっけ?)

名前がよく似ているので紛らわしいのだが、要するに右か左かで悩んでしまった。

名前を間違える訳にはいかない。

さりとてこのままでいる訳にもいかない。

どうしようと思い、どうせ2分の1の確率で当たるのだから勘でいこうといい加減なやり方で、「左京さん」と思い切って呼びかけたら、

「俺の名前は右京だけど」と冷たい声で返された。

(しまった!)と思ったがもう遅い。

それ以降、右京さんには苦手意識が出来てしまって、仕事がやりづらくなったという出来事があった。


名前を間違えるというのは本当、ロクなことがない。


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