Overture
僕の吹くピッコロトランペットの旋律が、楽曲を綺麗に彩る。
高校2年生、最後のアンサンブルコンテスト。僕らは、金管八重奏曲『晴れた日は恋人と市場へ!』と言う楽曲を演奏していた。
曲はもう終盤へと差し掛かっている。
チューバから順にベルトーンが重ねられる。
ああ。
どうして。
こんなに楽しかったのに。
最後の旋律が僕のピッコロトランペットから奏でられる。
こんなにも楽しげな旋律。
それでも僕には切なく聴こえていた。
何度も練習を積み重ねてきた。
その度に何度も楽しいと思った。
そしてまだ完璧とも言えてない。
この演奏では、次の県大会に進む事は、レベルの高いこの地区で勝ち抜く事は難しいこともわかっていた。
でも、こんなにも楽しい演奏だ。
そんな演奏が、音楽が、何故、終わりを迎えようとしているのだろうか。
そして、最後の音が鳴った。
今まで疑問に思った事がなかった。
何故、楽しい音楽に終わりは来るのか。
何故、楽しい事に必ず終わりが来てしまうのかを。
観客席から拍手が聞こえてくる。
捌けなくては。舞台袖へ。
*
結果は銀賞。
もちろん、県大会には進めない。
僕らの冬が終わった。
泣いているメンバーもいた。
あれだけ練習したから、無理もないだろう。
コンクールは残酷だ。
でも、演奏は楽しかった。
楽しかったんだよ。
何で終わってしまうんだろう。
もう時期3年生になる。
高校生活も終わる。
楽しい事には全部終わりがあるようになっている。
それは何故なのだろうか。
どうしてなのだろうか。
1話へ続く。