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27話

 特に何もない素晴らしい日曜日を過ごし、迎えた月曜日。

 

 いつものように着替えを済ませ、いつものようにリビングに出る。

 

 すると、俺を見た明菜がびくりと肩を震わせた。

 

「お、おはようございますお兄様! 今日もご機嫌麗しゅう……」

「お前昨日からどうしちゃったんだよ」


 昨日から明菜の様子がどこかおかしいのだ、いや、明菜は基本どこかズレてるんだが、そういう意味ではなく。

 

 何故か俺との接触を避けているという感じがするのだ、もしかして思春期なのか。

 

 もう少ししたら「お兄ちゃんと洗濯もの一緒にしないで!」とか言い出すのだろうか、泣きてぇ。

 

 というか、例の罰ゲームが始まって以降、俺の周囲の人達がどんどん壊れていってる気がする。

 

 そろそろ俺の番なのかな、それとも、気づいてないだけでもう壊れちゃってるのかもしれない。

 

「とりあえず朝ご飯作るから、少し待っててな」

「ははー! ありがたき幸せ!」

「そろそろ許していただけませんか?」


 体に染み込まれた動きで朝ご飯を用意する俺。食べる明菜。やっといつもの日常が戻ってきたような気がする。

 

「そ、そういえばお兄ちゃん、あれから奈留さんとは、その、どうなの?」

「なんでここで奈留が出てくるんだ? 別に特に何もないけど……なにかあるのか?」

「いや、何もなければそれでいいの! ははは!」


(お兄ちゃん、アレを見たはずなのに全く動じてないのはどうしてなの、まさかお兄ちゃんにお色気耐性があるなんてことが……)


 めっちゃ笑ってるのに目が笑ってない明菜が怖い。全然俺たちの日常戻ってきてなかった。

 

「というか明菜、毎度のことだが朝練――」

「は!? そうだった! お兄ちゃんに構ってる場合じゃない! 行ってきます!!」


 パンを口にくわえたまま元気に出て行ってしまった。まるで少女漫画みたい。

 

 自分の分の朝ご飯も作って食べ終わり、母さんの布団を引っぺがしたところでインターホンが鳴り響く。

 

「それじゃあ母さん、朝ご飯ちゃんと食べてってね!」

「オッケーマンボ……」


 サンバはどうしたんだよ、あれ、マンボでいいんだっけ、もうわかんなくなっちゃった。

 

 というか温泉でリフレッシュしたって言ってたのに結局いつも通りなのか。やっぱり疲労の蓄積は1日や2日じゃ回復できないんだな……

 

 母さんの心配は後にして、俺は自室に戻りスクールバッグを手に取ると階段を駆け下り、勢いよく玄関の扉を開いた。

 

「お、おはようございます幸也くん! 今日も天気が良いでござるね!」

「ははっ! 奈留まで壊れちゃった!!」


 この狂った世界から誰か開放してくれ。

 

 そういえば奈留を見て思い出したけど、いつもはギャルに命令されてると思しきRINEが昨日丸一日来なかったことを思い出した。

 

 なんだかんだ彼氏彼女っぽいやり取りを楽しんでしまっている自分に嫌悪感を覚えつつも、来ないなら来ないでなんとなく寂しかった。

 

「あの、幸也くん、一昨日のことなんだけど……出来れば忘れて欲しいというか、なんと言いますか――」

「一昨日? なんかあったっけ……」


 一体何のことを言いたいのかわからん。間接キスのことな気がするが、アレを忘れるのは流石に無理があるし、うーん。

 

「あ、ううん! なんでもないの! さ、早く学校行こ?」

「お、おう?」


(幸也くん、分かってるけどあえてなかったことにしてくれてるんだ! 嬉しいけどそれはそれで複雑……)


 もう細かいことは気にしないことにした俺は奈留の手を取ると、俺たちは学校へ歩みを進めた――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば遠山殿、今年の春祭りのバイトはどうする予定でござるか?」


 昼休み、久々に俺は服部君と学食にやって来ていた。

 

 ここ最近ずっと奈留と一緒していたのだが、今日は何か用事があると言っていたので服部君を誘う流れになった。

 

 詳しく用事とやらを聞きたかったが、負のオーラのようなものを感じたのでやめておいた、触らぬ神に祟りなしである。

 

「そういえばもうそんな時期か、なんか毎日が閃光のように過ぎ去っていくよ」

「遠山殿、ご老人みたいなこと言うでござるね」

「毎日色んな意味で刺激的なんだけどね……まぁそれはいいとして、今年は多分バイトはダメかなぁ」


 春祭りは俺たちの住む町で例年梅雨入り前、5月最後の日曜日に行われる行事だ。

 

 縁日が出て、締めに花火大会が行われる。一般的には夏真っ盛りに行われそうなものだが、武士の精霊を供養するためだとかなんだとかいう理由で、かなり早い時期に実行されるのだ。

 

 まぁ、夏は夏であるんだけどね、祭。

 

 それで俺たちが言っているバイトだが、祭の間、駐車場の整備や警備と言った臨時のバイトが行われるのだ。

 

 ボランティア扱いではなくちゃんと給金が出る、しかもかなり高額なので、仕事内容は大変だが学生たちからの人気を博している。

 

 俺たちも去年は一緒に出たのだが、今年は恐らく参加できないだろう。

 

 原因はもちろん、奈留だ。

 

 いや、正確にはギャル達の作戦の所為だ、もう今までの流れからして絶対縁日デートが来る。

 

 俺からすれば奈留と一緒に縁日を練り歩けるのは最高だが、奈留にとっては屈辱の極みだろう。

 

 しかし逃げることは許されない、理由はもう言わずともわかってもらえるだろう。

 

「やっぱりそうでござるか~、遠山殿には佐伯嬢がおりますからなぁ」

「そうなんだ、奈留を無理やり付き合わせることになってしまって心苦しいんだけどね……」

「遠山殿、もしかしてまだ――まぁ良きでござる、遠山殿がダメなら拙者も今年は止めておくでござるよ」

「悪いな、最近あんまり服部君と遊んでない気もするし、この埋め合わせは必ず何処かで」

「なんのなんの、拙者達は親友、そんなこと気にしないで欲しいでござるよ……それに拙者、最近の遠山殿を見ていて、勇気を出す時が来たと感謝しているのでござるよ」

「勇気? 服部君なんかするの?」

「ふふふ、拙者の人生を賭けた一大『いべんと』でござる! まぁダメだったら慰めて欲しいでござるよ!」

「お、おう、わかんないけど任せておきたまえ」


 正直めちゃくちゃ気になる、でもまぁ後で教えてくれるみたいだし、今は聞かないでおこう。

 

 一段落着いたところで時計を見ると、昼休み終了まで5分を切っていることに気づいた。

 

 俺たちは碌に手を付けていない日替わり定食を掻っ込むと、教室に向かって走り出すこととなった――

毎日読みに来ていただきとても嬉しいです。ありがとうございます。


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