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七月二十八日
その日、僕は、遺体発見現場である、自分が通う中学校を見ていた。
黄色い規制線のテープが貼られた校門の横、テレビでよく見るレポーターが、スタッフらしき人達と、何か、話をしていた。
日常の風景に、突然、現れた非日常。
人々は祭りの御神輿を眺めるかの様に、それらを遠巻きに見ていた。
人が死んだというのに…
いや、人が死んでいたからこそ、人々は事件の推移に目が離せなくなっているのかもしれない。好奇心と共に湧き上がる、漠然とした不安や気持ち悪さの正体を突き止める為に。
身近な場所で起こった、現実感のない、出来事。
現実感のない、向こう側の世界。
今朝、見た、ブラウン管の向こう、ワイドショーで映された校門。今、見ている、道路を挟んだ向こう側の校門。規制線の貼られた校門の向こう、僅かに見える、遺体発見現場である校庭。数時間前まで、頭部のない若い女性の死体が横たわっていた校庭。
道路を挟んで、こちら側に居る人々は、皆、対岸の傍観者でしかなかった。
自分もその傍観者の一人だった、その死体の身元が判明するまでは。