八月十八日
「あ、久しぶり
怪我したって聞いたから、なんか、気になって、来てみたんだけど」
何故か、今日になって、以前、聞き込みに来た刑事の若い方が家に訪ねてきた。
昨日、公衆電話から119番し、救急搬送された際、病院の医療関係者によって事件性を疑われ、通報されたらしく、治療後、警官から聴取を受けた。多分、その担当警官か、その人物に近い者から話を聞いて、今日、ここに来たのだろう。
昨日と同じ様に、ラザロの断頭台を再現しようとして、失敗し、落下してきたナタによって、負傷したと説明した。
「なんで、ギロチンを作ろうと思ったの?
もしかして、自殺しようとしてたんじゃない?」
言葉に詰まる。けれど、言葉を選んで、語り出す。
ラザロの動物探しゲームの事。三ツ星の事。池袋の公園で見つけた紙の事。模倣犯になろうとして猫や少女を殺そうと思った事。死のうと思った事。死を思いとどまった事。そして、彼女の頭部が隠されている可能性が高い場所の事。(動物の死体の一部を持ち去った事と、放置した事は、法に触れてそうなので、あえて、供述せず)
「でも、真夜中に、幼い女の子が、一人、歩き回ってるのって、不自然だと思うし
ここ最近、刃物を持った不審者の情報も、上がってきてないから
もしかすると、彼女が女の子に姿を変えて、君が悪い方に行かない様に引き止めてくれてたんじゃない
ナタが君の首に落ちてきた時も、きっと、彼女が守ってくれたから、致命傷にならなかったのかも
まぁ、警察の人間である自分が、こんな事、言うのもなんだけど」
泣いた。涙が溢れた。彼女が死んでから、初めて。
狼狽する刑事。
「でも、これで、全て、終わらせる事が出来るわ
この紙は、俺が預かっておくから」
そう言って、刑事は家から立ち去って行った。
僕は、家の中から、その様子を、ずっと見つめ続けていた。




