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八月十七日

 ラザロを殺したい程に憎んでいた。そして、間接的にラザロを殺した。けれど、それに満足出来ず、いつの間にか、心の奥底に、動物や人間を殺したいという欲求があり、それが燻ぶっていた。

 だから、ラザロの模倣犯になろうとしていた。けれど、無垢な存在の命を奪おうと思った瞬間、自らの存在を醜悪なものと認識した。

 再び、ラザロを殺そうと思った。もう一人のラザロとなった自分を。

 竹林。風に揺らぐ竹。

 人目につかない、この場所で死のうと思った。ラザロとして。ラザロと同じ方法で。

 二本の竹を繋ぐ様に渡した針金に、刃を下向きにしたナタを固定する。針金にロープを結ぶ。片方の竹の上部に打ち付けた釘にロープを通す。ロープを引く。ナタを引き上げる。手を離す。引き上げる。手を離す。動作確認する。

 引き上げる。

 明けたばかりの赤く染まった東の空。頬に感じる、ひんやりと冷たい地面。土の匂い。

 手を離す。

 竹と、竹をスライドし落ちてくるナタが見えた。ああ、そうか、これは竹とナタだ。ロープを握り締める。ナタの落下を止める。

 ラザロの頸部を切断したのも、ただの昇り棒とナタだったんだ。ラザロの頸部を切断した事によって、それらは『断頭台』になったのだ。

 つまり、池袋の公園で見つけた紙に書かれていた『断頭台の下に』という言葉が示していた『箱舟の動物』は、ラザロの頭部ではなく、その下に埋められたものを意味していたのだ。

 ラザロの死を知った時、感じていた『もやもや』の一端は、これだったのだ。多分、ラザロだったら、自殺するだけの事を『断頭台の下に』という暗号に込めたりしない。よく考えたら、それだけでは暗号ですらない。ただの、自殺予告だ。

 ラザロならば、自らの死を以て、『箱舟の動物』の在り処を指し示し、自らの死体を用いて、動物探しゲームを演出していた筈だ。そして、ラザロが自らの死を用いた暗号が指し示す、最後の動物探しゲームの賞品は、彼女の頭部である可能性が高い、そう思った。

 そう確信した瞬間、視界の端に、何か、動くものが見えた。

 固定していた針金の片側が外れて、数センチ、ナタが動いた。そして、その衝撃によって、もう一方の針金も外れた様だ。

 ナタが落下してくるのが見えた。

 首筋に鋭い痛みが走った。

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