八月八日
パソコンのモニターに表示させた、ラザロが最後に書いた謎の文章を見ていた。ふと、学習机の本棚にある英和辞典が目に入る。手に取る。開く。Nのページ。
【nightingale】サヨナキドリ。西洋ウグイス。
意味不明な文章の中、『ナイチンゲールバレー』という言葉が、最も意味不明だったけど、今、謎が解けた。路線図をインターネット検索する。
『ナイチンゲールバレー』が鶯谷を意味しているとすれば、『上の』は上野で、『輪になった線』は山手線。上野駅から鶯谷駅方向、八つ目の駅は池袋駅。『高い塔』は、多分、サンシャイン60の事だろう。そう思った。
早朝に家を出て、池袋に辿り着いた。開いている店も少なく、人通りも多くない時間帯。目指すのはサンシャイン60。そして、その隣の東池袋中央公園。かつて、巣鴨プリズンと呼ばれた場所。終戦後、戦犯とされた人々が収容され、後に、戦犯という判決等は取り消されるけれど、7名の人達の死刑が執行された場所。
『永久平和を願って』と刻まれた石碑があった。大きな丸い石。かつて、死刑台があった場所。
周りを探る。裏の草むらにコンクリートブロックがあった。穴の一つに丸められた新聞紙が詰められている。
取り出してみる。広げる。新聞紙の中にはウサギの足。それと、一枚の紙。
990808
断頭台の下に
今日の日付らしき数列と謎の言葉。そして、ラザロの英語表記である『Lazarus』の文字が、この紙の端の方にも書かれていた。
石碑の周りを、もう一周してみたけれど、他に何かが隠されている形跡はなかった。巣鴨プリズンにあったのは、断頭台ではなく、絞首台だった筈なので、ここにはもう何もないだろう。
そして、帰り道、ビックカメラ池袋本店に寄った際、目に入ってきた、テレビから流れるニュースで、全てが終わった事を知った。




